カメラを自分で購入する様になった頃はフィルムのコンパクトカメラ。
デジタルになって液晶が付きファインダーを覗かなくてよくなった。

何年か前　気紛れで買ったデジイチ。
またファインダーを覗くようになって　勝手に右目で見て右頬に押し付けようと
してることに気付いたのは最近。

そうだ　子供の頃の習慣なんだ。

父が新しいカメラを買ってきて嬉しそうに触っていた時でも触らせて
もらえなかった。
手を触れてはいけないことになっていた。
触りそうになるので手を後ろで組んで　顔をカメラに近づけてじっと眺める
だけだった。

大きくなったら写させてやるからと約束だった。

休日はとことこ父に付いて行って　写真を撮っている父の後ろを走り回って
遊んでいた。

5年生になる春休み　いつもの様に父の後ろをとことこ。
その日は近くの公園だった。

父が約束を果たす日と決めていたのかは知らない。
カメラを始めて持たせてもらえた。

カメラを右手でしっかり握って左手でレンズを支えながらピントを合わせる。
両足を少し広げて　肘を締めて右の頬にカメラを押し付けて
右目でファインダーを覗く。
後ろに木があればもたれて体がふらつかない様にする。
やさしくしっかりシャッターを押す。

子供の弱い力では重いカメラを構えるだけでもぶれる。
頬に押し付けることでカメラは安定しカメラぶれが防げる。

なのに今でもそうしそうになる。いやそうしてる。



気紛れで買ったデジイチ。何も考えずコンデジの延長とすべてオートで
撮ってて　ふと気付く。
これ　コンデジと一緒の写りだ・・・せっかく一眼買ったんだし・・

デジタルってすべてマニュアルでなくてもいいんだ。
絞り優先・・・絞りかぁ・・・

天気の時は絞りを8か11にしてシャッターは1/250に。
曇りの時は絞りを5.6か8にシャッターは1/125に。

ほんとに急に　父に教えてもらったことを思い出した。

絞り　露出　シャッター　懐かしい言葉の数々。

そういえばそんなことを教えてもらってたんだ。
ぜーーんぶ　忘れてた。

気にもしてなかった。

可笑しくなった。



黒い幕が被った引き伸ばし機が部屋の片隅にあった。

四つ切　八つ切り　六つ切りもあったな。キャビネ版？そんなサイズもあった・・

ホーローのバットに現像液と水が入ってて　先がサラシで巻かれた竹のトンクで
写真をシャラシャラ洗って乾燥機に張り付けて乾燥させる。

最後の水洗いと写真を取り出すのが役目だった。
乾燥機の布製の蓋をめくると写真がくりっとなって飛び上がる。
面に指紋が付かないようにそっと縁を持って揃える。
くりっとなった写真はほんのり温かかった。

そんなことがデジイチ買ったこととは結び付きもせず　写真撮るのは特別好き
でもなかったのに
今はちょっとだけ上手になりたいと思ってるのを父が知ったら笑うだろうか？