夕陽の向こう側
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2012/07/12
もう一つの約束

一つの節目だったのだろうか。
小学校5年生 夏休み。

父と母は立山に登った。
経緯は知らない。
どこのどの人達と行ったのかも知らない。

楽しそうに準備する父母を毎夜 目にしていた。
父はズボンの裾を絞って山用に変えた。
初めて裁縫をしている父の姿を見て 意外と器用なんだと思ったのを覚えている。

中学生になったら立山に連れて行ってあげる。
父母から言い出したもう一つの約束。
留守番をさせる為のその場逃れだったのかも知れない。

中学生になったら・・・
たった2年後だから・・現実になると思っていた。

父が撮った山 人物。それがどういうものだったか子供ながらに一目瞭然だった。
印画紙に浮かび上がって来る高山植物の数々には目を奪われた。
立山は高山植物のお花畑だと知った。
花の名前を教えてくれたのは父だった。

今はほとんど忘れてしまっている・・コバイケソウ位しか覚えてないけど・・

登山は父の趣味の一つだった。
休日はカメラを持って出かけて行く。
また山・・・・よく母がこぼしていた。

夏休み 親戚が揃えば 布引から再度山に行って飯ごう炊さん。

午前中は鉄拐山から旗振山 鉢伏山まで縦走 夕方 海が凪いだ頃に海水浴。

春 つくし わらび ぜんまい 夏 ぐみ やまもも すっぽん(イタドリ)

山歩きの装備も教えてくれた。
長袖 長ズボン 帽子 下着はウール 分厚い靴下 雨具 登山靴 ピッケル
魔法瓶に温かいお茶 チョコレート ビスケット 等々
そう言えば轍の歩き方も教えてもらった気がする。

ピッケルがあったのを覚えてるから雪山?春山?にも登っていたのだろうか?

口数の多い父ではなかったけど 会話の中に状況がちりばめられていて
自然と覚えたことも結構ある。

そんな時間があったことを今は懐かしく思う。

反抗期 父とは話しをするということがなくなり 笑顔を見せることもしなく
なっていた。
父にとっては紛れもなく可愛げのない子供だった筈。

ある時 唐突に父が摩耶山に登ろうと言い出した。
行くことにした理由は覚えてないけど しぶしぶだったのは覚えている。

歩き出すと いつもとは違うルートでハードだった。
ほぼ六甲の縦走コースだったのではないだろうか。
一般道に何度か降りた記憶がある。

脳裏に焼き付いている岩の上で顔をほころばせている一枚のスナップ写真。

しぶしぶ登った山だったのに満面ではないもののそれは笑顔だった。
父に見せた最後の笑顔だったかも知れない。

そのスナップがなければ摩耶山に登ったことさえ記憶に残っていなかったに
違いない。


別れる日が近づいていて父は思い出作りに連れて行ってくれたのだと何年も
後に気付いた。
いや 果たせなかった立山登山へのせめてもの詫びだったのかも知れない。


***********
16年前 突然できた休日に体力がなくなったオトーサンをどこかに連れて
行ってあげようと思った時 立山を選んだのは心のどこかにいつかは立山に
行きたいとの思いが続いていたからかも知れない。

それまで「立山は登山」とずーっと思っていて ツーリングは楽しいけど
登山は無縁と思い込んでいた。
旅行社の店頭で見たパンフレットの「立山とアルペンルート」の文字が
登山でなくて観光で行けることに気付かせてくれた。

室堂からみる雄山は もうそこ。

もう一つの約束

もう一つの約束

もう一つの約束

オトーサンの体力が回復したら登れるかな。

もう連れて行ってもらわなくても自分で行ける・・・・・

遠い昔の父の姿がそこにあったことは誰にも言っていない。

いつか父にそんな話ができる日が来るのかな?

***** 上の画像はその時のもの。
ホームページの旧アルバムにも・・
url : http://www9.big.or.jp/~oharu/album/tateyama/index.html
posted at 2012/07/12 20:00:40
lastupdate at 2012/07/12 20:00:40
修正
 
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by t3ey2va046
at 2018/08/31 7:18:56
 

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