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» 「ローマ帽子の謎」再読 date : 2008/10/09
エラリー・クイーン著「ローマ帽子の謎」を再読。

久しく読んでいなかった上にストーリーをすっかり忘れていたので、新鮮に読めた。
前回「スペイン岬」を再読した時は、読んでいくうちに展開や犯人を
思い出してしまったので、犯人当てという面ではぜんぜん意味がなかったが、
こちらは何から何まですっかり忘れていたので、さらの状態で読むことが出来た。

以下あらすじ。
ブロードウェイのローマ劇場において、人気演劇の上演最中に、観客として
着席していた悪徳弁護士のモンティー・フィールドが何者かに毒殺された。
当時の風習として、社交性の高い劇場では正装するのが当然であったが、
モンティー・フィールドの正装には、何故かシルクハットが欠けていた。
劇場の売り子等の証言から、会場に入ってきた時のフィールドはシルクハットを
着帽していた事が分かったが、警官が劇場を包囲する中、犯人はどうやって
この帽子を持ち去ったか、そして何故帽子を持ち去らねばならなかったのか、
が大きな謎となる。


エラリー・クイーンの処女作。
ヴァン・ダインの影響下にあって作られた本小説は、フォーマットも登場人物も、
ファイロ・ヴァンスものに酷似している。
しかし、先行者であるヴァン・ダインに対して、エラリー・クイーンが推理小説家
として名声を博すことが出来た理由は、トリックやロジックの創造能力が桁外れに
優れていたからだろう。
処女作の「ローマ帽子」にして既に、ヴァン・ダインの最良作に匹敵ないし上回る
完成度を誇っている。再読してその出来を新たに確認した。

だけど、自分が本作の内容を忘れてしまったのは、インパクトという点において
続刊である「フランス白粉」「オランダ靴」「エジプト十字架」「ギリシア棺」
等の傑作類ほど強くなく、わりと既知の推理小説レベルに収まってしまっている
からだと思う。
まあ、「ローマ帽子」は処女作だから、後作が優れているのは当たり前といえば
当たり前なのだが。

このころのエラリー・クイーンは、トリックというよりも、犯人あてというロジックの
創造に全力を注いでおり、その出来は全推理小説史の中においても頭抜けた
完成度を誇っている。
自分のような本格派を重視する者にとっては、妙に人間ドラマに拘ってしまった
後期クイーンよりも、ロジック構築を重視したそれら初期の国名シリーズの方に
魅力を感じる口である。

まだ、クイーンの国名シリーズを読んでいない人間を羨ましく思えるくらいだ。
だって、人生の楽しみが全く手付かずで残っているのだから。
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  posted at 2008/10/09 22:57:09
lastupdate at 2008/10/10 0:10:02
»category : 書評修正

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