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» 「日銀はだれのものか」通読中 date : 2010/05/27
中原伸之著「日銀はだれのものか」現在読んでる最中。

日銀独立法施行以来、審議委員となってゼロ金利の導入や、量的緩和政策の
実施に尽力した実業家中原伸之氏の、任期中1998年4月から2002年3月まで
丸四年の回想録。

正直、ここまで鋭いマクロ経済の感覚を備えた実業家がいる事自体に衝撃を受ける。

また、基本的には不況下に於いてゼロ金利、量的緩和の二大政策を持論としている
事は変わらないのだが、それを実施するにあたってどういう方策を採るかまで
細かく書かれているので、正直自分のような素人には難しい部分もあった。

たとえば、量的緩和政策を実施する上に於いて、日銀の取るべき方法で以下の3つ

@CPオペの拡充
A臨時貸出制度の創設
B社債担保オペの導入

を挙げ、著者は@を薦めているが、流石にAは論外だろう事は自分でも理解できる
ものの、@とBがそこまで劇的に違うモンなのか、というのは理解しづらい。

まあそういう細かい議論はおいといても、当時の政府と日銀のせめぎ合いが
よく分かる本である。著者は政界とのパイプも太く、また当時の政府や省庁の
景気判断とも一致していることから、日銀委員の立場にあったけれども概ね
政府寄りの意見(ゼロ金利維持、量的緩和実施)を提出し続けたみたいである。

海外の経済学者(ミルトン・フリードマン、クルーグマン、バーナンキ等)とも密接に
連絡を取り、それぞれ賛同や助力を得ながら常に上記の方策を提言しながらも、
圧倒的少数派でいつも意見が通らないという悲しさ。

それでいて著者が想定していた危機が実際に訪れると、慌てて対応策を求めて
くるという、ホント、日銀のクソっぷりがよく分かる本となっている。
ついでに新聞や週刊誌の酷さも分かる。

しかし、当時の政権(小渕〜森)に関しては、与党も政府も景気判断について
かなり的確で、日銀と激しく論争していたこともこれまたよく分かる。

かかる経済通が多かった与党で、何ゆえここまで90年代後半の停滞を招いて
しまったのか不思議なものだが、日本新党を中心とする連立政権、続く自社さ
連立政権、さらにその後の橋本内閣に何らかの問題があったのだろうと思わせ
られる。

小渕〜森政権になったことで経済政策はかなり良化していたのだろうが、結局
その前までのツケを返済することが出来なかったという事だろうか。

日銀の独立性の成立によって、著者のような経済人が審議委員として日銀の
内部に入り込むことが出来るようになったものの、独立性による日銀自体の増長は
著者も危惧するところで、信賞必罰が成り立つように責任を持たせるべきだと
度々提言しているがこれまた日銀内部では無視である。

著者退任より8年たった今でも体質は(悪化こそすれ)改善されているとは思えず
本当にむかついてくる・・・。

また、この本は2006年5月に出版されたものだが、中原氏がその時点でアメリカの
住宅バブル崩壊による景気後退を完全に読みきっている点にも凄みを感じる。
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  posted at 2010/05/27 2:25:30
lastupdate at 2010/05/27 3:24:20
»category : 書評修正

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