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» 「カナリヤ殺人事件」再読 date : 2010/05/19
S.S.ヴァン・ダイン著「カナリヤ殺人事件」再読。

前回も書いたとおり、実家から持ってきた本の中に、昔読んだヴァン・ダインものが
何作かあったので、それを再読している。「ベンスン」に続いて「カナリヤ」読了。
「カナリヤ」については、犯人もトリックも覚えているので、初見のような楽しみ方は
できないけど。


以下あらすじ

ブロードウェイのスターとして知られる”カナリヤ”ことマーガレット・オデール嬢は、
その美貌で以って社交界の名花としても有名であり、また次から次へと浮名を流す
スキャンダラスな艶聞でも知られた女性だった。

その”カナリヤ”が、自宅の高級アパートで何者かに絞殺された。
部屋は荒らされ、宝石貴金属類が盗難されていたことにより、最初は単純な強盗
殺人かと思われたが、彼女を巡って恋の鞘当を行っていた男達の存在が明らかに
なるにつれ、事態は複雑化の様相を呈する。

「ベンスン殺人事件」を解決した絡みから、この捜査にも立ち会っていた素人探偵
ファイロ・ヴァンスは、友人の地方検事マーカムとともに捜査に当たるのだったが、
彼の審美眼をもってしても、犯人を特定するまでには至らなかった。
そこで、容疑者達の心理的性質を見抜くべく、ヴァンスはある提案を行うのだが・・・。


かなり面白い。”カナリヤ”だけにね!! ・・・・・もう言いませんすみません・・・

特に捜査が進展するにつれ、事件の複雑性が徐々に明らかになっていく点や、
中盤の容疑者に対する徹底した調査で、新たな真実が次から次へと判明していく
ところなどは、かなり緊迫して読ませる内容になっている。

また、重要な参考人が事件当日体験したであろう恐怖の状況描写もなかなか
巧みだし、最後の最後で決定的な証拠が手に入るところも劇的で面白い。

あの証拠のトリックは評判悪いけど、自分は結構好きである。いや、意外と実行
可能だと真剣に思ってるんだけど。

自分が思うに「カナリヤ」の欠点と言えば、あの第二の殺人が防げないところ。
あれこそ見え見え、ヴァンスの失態ここに極まれり。モネなんか見に行ってる
場合か。

あと、何度読んでもポーカーのシーンは退屈だわ。同じ人間が毎回同じ賭け方
するとは限らんし。

ただ、ちゃんと物証を掴もうとする切っ掛けになっているところはいいと思うけど。

これ以後、第三作目よりヴァンスものはいよいよ物証放棄。二作目の「カナリヤ」で
感じた作風の窮屈さで諦めがついたのか、吹っ切れたのか。
んで、放棄した結果、次作以降で最高傑作が生まれてくるというのもまた面白いが、
同時に作者の限界になってしまうというのも皮肉。

しかし、「ベンスン」「カナリヤ」って展開の緊迫度合とストーリーテリングの巧みさ
では「僧正」「グリーン家」を上回る面白さがあると思うのだが、あまり賛同を
得られた試しはない(笑)。
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  posted at 2010/05/19 4:03:41
lastupdate at 2010/05/20 1:16:38
»category : 書評修正

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