『佐久間を好きすぎてXしたい源田の話』

・全文はこちらから
・源田視点です
・オメガバパロで、源田の佐久間スキスキが加速して最終的にNTRセッしてしまう話(NTR=ネトリのほう
・すみません、源→佐→鬼です
・R18+です(事前事後だけで直接描写はないです)
『帝国クレイシュ』(オメガバパロ)のスピンアウトですが、同人誌とは無関係です
・甘くもハピエンでもありません


 好きすぎるとXしたい衝動に駆られるのは、俺はおかしいんだろうか。
 どうして、お前のことを、好きすぎるとXしてしまいたくなるんだろうか。
 こんな衝動のコントロールができない、まるで動物みたいな俺を。
 お前からは、どう見えるのか、聞かせてくれないか。
 俺が。
 俺が、お前のことを好きすぎる感情を、俺自身が恐れているのならば。
 ただ、俺は、お前のところから去ればいいだけなのに。
 そんなことさえできない俺を、いっそ、嗤ってはくれないか。


 世界大会からの佐久間の凱旋帰国に帝国学園は沸いていた。
 なんといっても、優勝メンバーに3人も帝国学園関係の生徒がいたのだから。帝国学園の佐久間、真・帝国学園の不動、元・帝国学園の鬼道がいたのだ。名誉だ、誇りだ、自慢だと、人々は口々に歓喜の言葉を送った。帰国のお祝いの雰囲気の中、佐久間はずっと学園で笑顔だった。
「凹むなよ、佐久間」
 寮に戻ってきて、2階の廊下で佐久間が咲山に頭を撫でられていた。そんなに背は変わらないが、咲山のほうが少しだけ背が高い。
「・・・」
 何事かと2人に近づくと、口をへの字にして肩を落とした佐久間がいた。
「しょうがねぇよ」
 咲山が俺に気付いて、首を傾げて同感を促すように肩を竦めた。
「だって、鬼道、・・・戻ってくると・・・思ってた」
「みんなそう思ってたよ、なぁ、源田もだろ?」
 咲山に急に名前を出されて、面食らう。佐久間がバッと顔をあげてこちらを見た。佐久間は何か言おうとして、無言のまま鳶色の薄い唇が震えている。
「ああ」
 そうだな、と諦観した声で伝えた。佐久間は真っ赤の目のまま「うう」と嗚咽して、そのままだった。
 泣いてはなかったが、到底納得できなそうな不満顔をしている。
「だから、佐久間。俺たちは、来年にむけて」
 諭そうとする俺の横を、佐久間が走りすぎる。それを見ていた咲山が大きく息を吐いた。
「・・・って、世界大会の期間中、何やってたんだ、鬼道と佐久間。あいつらスチューピッドがすぎるだろ」
「まぁな、忙しかったのかもしれないし。それどころじゃなかったのかもしれないし」
 咲山が、あ〜あと落胆して自室に戻ろうとした。
「あ、そういえば源田の部屋って、今、1人でつかってんじゃん。そのうち佐久間と同室にでもなるんでね?あいつ2人部屋で1人きりだし」
「いや、俺の部屋には、後期から誰かが転入してくるらしい」
 咲山は、そうか、しばらくは佐久間があの部屋に1人きりかと、考えるように首を捻ったあと、「辺見にでも相談するか」と自室に消えた。
 俺はこのまま佐久間の部屋に行こうとも考えた。走り去る前の、目の周囲を真っ赤にした佐久間の顔が浮かぶ。学園の報告会では、ずいぶん嬉しそうにしていたのに。通り過ぎるままに、佐久間の部屋の扉の前に学生名を記す表札を見た。そこには、もう鬼道の名前のプレートはない。中から物音はしない。呼び鈴を鳴らすか迷った。
「おー、源田ぁ。佐久間なら部屋にいないぜ?」
 廊下の奥から、辺見が顔を出していた。
「放ってはおけない」
「あいつだったら、多分、寮の外にある螺旋階段だ。1人になりてーんだよ」
 非常用につかわれる外階段。階段というには簡素なあの赤い螺旋階段だ。
「なんで知ってる?」
「つか、逆に、源田は知らないのかよ」
 パタンと辺見の部屋の扉が閉まった。
 螺旋階段に行こうか迷った。「1人にしてほしい」と思っている佐久間を追い立ててどうするという気持ちと、真・帝国学園で「1人にしてしまったため」に大変なことになったという経験で、心が揺れた。
 螺旋階段の下から、本当にいるか見上げてみようと考えた。そこに佐久間がいたらいたで、いい。声をかけられそうな雰囲気なら、声をかけて、いい。そうでもない雰囲気なら、静かに帰る。それで、いい。
 5月の夕方。3階建の寮の建物は、夕陽に蒼くくすみ。非常用の螺旋階段は、赤いのか、黒いのか、よくわからない色になっていた。景色が、全体的に淡い青色に包まれている。
「!」
 螺旋階段の3階部分から、2階部分の階段を見る。そこに佐久間がいた。三角座りで、顔を膝に埋めていた。夕日に照らされてなくても、あの銀色のような髪が、小さく風に揺れていた。
 俺は、たった一人で佐久間が慟哭でもしていたら、声をかけようと思ったのだ。
 だが佐久間は一人、三角座りのままだった。2人、1階分の距離のまま動かず、夕刻の青さの中にいた。
 電子音が鳴る。
 俺じゃない、佐久間の携帯だった。佐久間は顔をあげて、すぐさま携帯の着信をとり、明るい声で対応していたかと思うと、ガチャリと2階の非常扉を開けて、建物の中に入って行った。一瞬だった。明るい声だけが小さく耳に残っていた。
 鬼道だ。
 電話の相手は鬼道に違いない。


・全文はこちらから
・R18+です(事前事後だけで直接描写はないです)

error: Content is protected !!