» 「悪魔の手毬歌」再読 | date : 2009/01/25 | |
こないだSMAP稲垣金田一の「悪魔の手毬歌」が放送されたからという訳ではないが 横溝正史「悪魔の手毬歌」再読。 稲垣金田一についての評価は、自分は一度も見たことが無いのでここでは控える。 しかし、金田一の映像化と言うのはホント難しい。なにせ、金田一耕助というのは、 事件の中心人物でも何でもなく、ただその周辺でウロウロしているだけ、そして 情報固めが終わったら、お話の終盤でドカンと謎解きをして、そのあとスタコラ 舞台からフェードアウトしていくという特異なキャラクターだから。 映像化の際は、金田一と言えば目玉の役者を持ってこなければならず、その人物に 小説のような脇役然とした演技をさせるわけにも行かず、勢いやたらと金田一が 前に出てきて大活躍しまくり、結局横溝原作の持つ雰囲気をぶち壊し、というのが お決まりのパターンだからして。 未だに石坂浩二の金田一が最高とされるのは、石坂さんがちゃんと原作を読んで、 「金田一は目立っちゃいけない。演技は控えめにして、存在感で勝負」ということを 心がけたからに他ならない。 この点で言えば最悪は片岡鶴太郎の金田一で、やたらと派手に動き回っては 自分の心境を口に出して独白しまくり、その上毎回ヒロイン役をやってた牧瀬里穂に 必ず想いを寄せられるという、考えつく限りよくもまあこんな酷い改変ができるもんだ と思わせられる、どうしようもない作りになっていた。 稲垣金田一は最初の「犬神家」で、やたらと自分をアピールする性格になっていた らしいので、正直嫌な予感がしてここまで一つも観ていない訳なのだが・・・・。 さて映像化の話題についてはここまで。 以下、「悪魔の手毬歌」あらすじ。 昭和30年7月、金田一耕助は旧知の磯川警部の斡旋で、岡山県の鬼首村へ 静養に来ていた。 そこは23年前の昭和7年、旅館”亀の湯”の若主人、青木源治郎が詐欺師の 恩田幾三に殺された上、磯川警部がその犯人を取り逃がしてしまうという迷宮入り 事件の故地でもあった。 その鬼首村に、詐欺師&殺人容疑者恩田の娘で、幼くして村から追われた 別所千恵子が、このたび舞い戻ってくるというのだ。千恵子は、今をときめく トップアイドル”大空ゆかり” として芸能界で大成功を収め、故郷へ報恩したいと 鬼首村へ凱旋するという。 村は俄かに騒がしくなる。”大空ゆかり”を歓迎する若い世代、昔を思い出し 複雑な心境になる大人たち。 そんな中、村の長老たる多々良放庵さんの元にも一人の女性が舞い戻ってきた。 放庵さんの別れた元妻で、御年58歳になるおりんという初老の女性だった。 金田一は、そのおりんさんと村の入り口ですれ違うのだが、それが、連続殺人の 幕開けになろうとは、流石の金田一でも予想はできなかった・・・・ 犯人もトリックも動機も解った上で改めて読み返したのだが、流石に横溝の 代表作の一つとあって、非常に良くできた面白い小説である。 金田一の推理で犯人を限定するための重要な推理にやや瑕瑾が見られるものの ロジカルでいい謎解きであるし、犯人が見立て殺人を行った理由も、 事件の経過の中で登場人物の心理描写としてきちんと明示されている。 まあ文の中味が時代がかっているのはしょうがないが、それにしても横溝正史の 文章自体は非常に巧みで、とても読みやすく、かつ内容に引き込まれていく。 これは映像を先に見るより、小説を読んだ方がいい作品である。横溝作品全般に 言えることだけれども。 |
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posted at 2009/01/25 15:02:00
lastupdate at 2009/01/25 15:03:59 »category : 書評 【修正】 |
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