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» 「首無の如き祟るもの」読了 date : 2008/12/21
三津田信三著「首無の如き祟るもの」読了。

以下あらすじ。
奥多摩の姫首村(ひめかみむら)で守られている儀式、”十三夜”で、
村の大庄屋たる秘守家の跡取り息子、長寿郎の双子の妹が変死した。
秘守家の力によりそれは闇へと葬られたが、十年後、長十郎の嫁取り儀式
”二十三夜”で、今度は花嫁候補の一人が殺されてしまう。
第二次大戦を挟んで行われた二つの儀式、両者で起きた陰惨な事件は、
秘守家に祟ると言われる淡首様の呪いなのか。


叙述、ミスディレクション、レッドへリング等をふんだんに盛り込んで
これでもかとトリックを叩きつける実に野心的な推理小説。
横溝正史や京極夏彦と同じく日本の因習や伝説に則った怪奇的雰囲気作りにも
余念がないが、いまいちムードの盛り上げが過剰でかえって興を削ぐ場面もある。
横溝正史の岡山モノなんかは逆に怪奇ムードの盛り上げ方には案外淡白で、
村の情景を訥々と書いているだけなのだが、それだけに殺人が起きたときの
衝撃が強烈で、巧まずして恐怖感を盛り立ててくるという構成が秀逸なのだと思う。
それと比べると、このシリーズは文中の煽りがオーバー過ぎて、お腹一杯に
なってしまう。

推理小説としては、作中に縦横の伏線が張り巡らされ、終盤に来てそれらが
炸裂するという構成。
基本的には「首のない死体」の系譜に連なるトリックなのだが、活用方法が
徹底していて、すれっからしのマニアでも十分唸る出来栄えだと感じた。

しかし、解決篇も残り少ないページ数において、二度三度繰り出される大技が
性急に過ぎ、着地点での姿勢があまり綺麗じゃない。
フィニッシュブローに破壊力のある連打を叩き込みたかったのだろうが、
それがやや雑で、それまでの緩慢かつ丁寧なストーリーとの対比が難しい。

心意気は買うけどねえ。
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  posted at 2008/12/21 19:29:33
lastupdate at 2008/12/21 19:29:33
»category : 書評修正

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