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» 「ウォリス家の殺人」読了 date : 2008/12/19
D・M・ディヴァイン著「ウォリス家の殺人」読了。

「このミス」でようやく見つけた海外本格の一作。とはいっても、ディヴァイン自体は
本格の名手として既に自分的に十分認知しているしこないだも「悪魔はすぐそこに」
を読んでいるので、購入のチョイスそのものに迷う事はなかったのだが。

あらすじ
小説家として名声を博し、文化人としてTV出演も多いジョフリー・ウォリスが、
ここのところ精神的に調子を崩してスランプに陥っているという。
幼少時に身寄りをなくしたジョフリーは、父の雇い主だったスレイター家に
引き取られて育ったのだが、そこで幼い頃から共に育った歴史学者の
モーリス・スレイターは、スランプに陥った彼の様子を伺うために、ウォリス邸を
訪問する事になる。
ウォリス家の近くでは、ジョフリーと長らく親交のなかった兄のライオネルが
現在滞在しており、弟と激しく対立しているという。やがて兄弟の対立が、
陰惨な事件を引き起こしてしまうのだが。

「悪魔はすぐそこに」でも書いたのだが、ディヴァインはミスディレクションの
手練れ、卓抜した名手である。しかし、その技巧があまりにも洗練され過ぎていて、
ミスディレクションさえもがミスディレクションされている。
そのため、騙されたこと自体に気が付かずにすんなり読み通し、
「実はあそこで騙されてたんだよ」
と言われても「ふーん」的な感覚にしかならないのが惜しい。

巧みな文章さばきとロジックの敷き詰めで堅牢に構成された優秀な本格推理小説
なのだが、こうして読んでみると、あまりにも完成度の高い小説よりも、
多少なりとも荒削りのある小説の方が、イメージに強く残りやすいのかもしれない。

また、フーダニッドとしては、「悪魔はすぐそこに」の方が面白いと思う。
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  posted at 2008/12/19 2:43:43
lastupdate at 2008/12/19 2:44:15
»category : 書評修正

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