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» 「怪盗グリフィン絶体絶命」読了 date : 2008/12/17
法月綸太郎著「怪盗グリフィン絶体絶命」読了。

あらすじ。
ニューヨークに住む「怪盗グリフィン」宛てに一通の手紙が届く。
”世界怪盗グランプリ”への招待状だという。一笑に付したグリフィンは、
あて先不明の仕掛けをした上で、その手紙を送り返したのだが、その後
別口より、メトロポリタン美術館に忍び入って、盗みを働いて欲しいという
依頼がやってくる。その裏には、美術史の謎があり・・・・。


これは凄い。近年ののりりんの作品の中でもピカイチ、抜群の面白さ。
この手の作品を褒める時の常套句になるが、正しく二重三重のどんでん返し、
意外性のある結末まで一気に読ませる素晴らしい出来栄え。
子供向けという事もあって、紙枚が限られているにも関わらず、いや、逆に
限られているから良かったのか、歯切れの良いリズムで複雑なストーリーを
無理なく説明しきっている。
颯爽とした主人公像は、作者が私淑を公言するハードボイルドからの影響か、
はたまた作中でも少し触れられているホックの「怪盗ニック」の影響か、
とにかくダンディで躍動感に溢れ、魅力ある格好よさを持っている。

「怪盗ニック」にも言えることだが、本格推理作家はこの手の物語を書かせたら
案外非常に巧いのかも知れない。
本格を書くときの妙に力の入ったぎこちなさが抜け、トリックや謎解きの斬れ味も
普段より迫力が増すように感じられる。

ただねえ。このシリーズの作品としては珍しく、子供には勧めたくないんだよねえ。
だいぶ抑えられてはいるものの、のりりん特有のペダンティシズムとスノビズムが
そこらここらで顔をだす。
子供にとってはそれらは毒にしかならんような気がする。

麻耶雄嵩の「神様ゲーム」ですらちゃんと子供に読ませろ、と主張した自分が、
子供に読ませるな、と主張するのも珍しいんだけれども(笑

のりりん本人はロス・マクドナルドを愛好しているらしいが、
精神構造は案外、S・S・ヴァン=ダインの直系なのではないだろうか。
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  posted at 2008/12/17 2:34:02
lastupdate at 2008/12/17 2:37:09
»category : 書評修正

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