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» 「本格推理」の定義 date : 2008/12/10
ネット上を徘徊して、面白い推理小説の概説があったので、自分もそれに習って
いくつか考え付いたことを記して行こうと思う。

今回は、甲賀三郎が名付けた「本格推理」という定義について。

甲賀三郎の定義した「本格」という定義にこだわる必要性があるのか?

甲賀三郎が分類した「本格推理小説」というのは、ホラーやサスペンスを
取り除いた、”探偵が事件を捜査し、解決する小説”という意味合いでの
用法で、探偵が警察に置き換わってもいいが、とにかく当時の日本で
誤用の多かった”推理小説”という言葉の枠組みを明確にするための分類
だったらしい。

このラインでいけば当然ハードボイルド等も本格に分類されるし、ノワールや
コンゲームなどの一部分も取り込まれてしまうことになる。
細分化した現代のミステリ事情においては、概念的にズレが発生しているようにも
思える。

現代と当時では当然状況が変わっているはずで、甲賀三郎が作り出した「本格」
という言葉の意味合いに縛られること自体には意味がない。
現代における「本格推理」という言葉の意味合いは、”謎解きに重きを置いた、
推理小説の一分野”という程度の捕らえられ方だと思うが、ならばその用法を
肯定して、特に甲賀三郎の精神まで立ち返る必要性はないと思う。

当然”謎解きに重きを置いた推理小説”というくくりでは、ハードボイルドや
ノワール、コンゲーム、サイコサスペンスの一部も回収されてしまう。
甲賀三郎の提示した当時の「本格」という概念が大きな意味合いの括りで
あるように、現代の「本格」もまた、大きな意味での括りを担っている事になる。
逆に、”謎解きに重きを置かない”ハードボイルドやノワール、コンゲーム
サイコサスペンスというのも存在するわけで、いわゆる現代における「本格」
という指標は、”合理的解の与えられる謎解き”の含有パーセンテージを
示した、いい概念になっていると思われる。

この概念の前では、必ずしもハードボイルド以下の詳細な分野を分類すること
はあまり意味がなく、それぞれの分野に「本格」的要素の入り込む余地がある。
ちなみに、一般的にサイコサスペンスに分類されている「ヘッドハンター」
「百番目の男」等は、自分としては立派な「本格」、ないしは「本格推理」的要素を
多分に含んだ小説だと思っている。

「ヘッドハンター」の著者マイケル・スレイドを指して、”このミス”内で「隠れ本格」と
いった呼称を付けていた事があったが、けだし名言であると思った。

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  posted at 2008/12/10 1:36:36
lastupdate at 2008/12/10 1:38:16
»category : 日記修正

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