reload
«« 「火村英生に捧げる犯罪」読了 | main | WCCFまた久々 »»

«« カテゴリ内前記事(「火村英生に捧げる犯罪」読了) | 書評 | カテゴリ内次記事(「日本の面影」読了) »»

 
» 「ひよこはなぜ道を渡る」読了 date : 2008/10/18
エリザベス・フェラーズ著「ひよこはなぜ道を渡る」読了。

以下あらすじ。
心臓を患っている友人ジョン・トーイに、手紙で相談事を持ちかけられた
探偵トビーは、車で彼の屋敷に向かうが、そこでトビーはとんでもないものを目にする。
屋敷の中は家具や照明が激しく乱れ、乱闘があった事を示し、そして三発発射された
拳銃と、大きな血痕が残っていた。
しかし、現場の邸宅には銃殺された死体はどこにも残っておらず、それどころか
邸宅の使用人達、果てはジョンの妻まで姿を消していた。
そして、たった一人残っていたのは、殺害現場と思しき部屋で、
静かに腕を組みながら椅子に座り、穏やかに微笑んだ表情のまま心臓発作で
昇天したジョン・トーイの死体だけだった。

作中の言葉を借りると、「殺人なしの死体と、死体なしの殺人」。

いやはや、相変わらずフェラーズはすごい。
こんなシチュエーションをよくひねり出せるもんである。
話が進むに連れて各々の謎は次々に解決していってしまうので、終盤一気に
謎がとけるというカタルシスはないし、解決篇で示される真相は、
巧妙でよく出来たものではあるが、驚天動地というほどアクロバットなものではない。

それにしても、こんな魅力的なプロットを作り出せるという事自体がすごいし、
また、こんな訳の分からん謎に、ちゃんとした解決法があるというのもすごい。

現代日本の推理作家がメタミステリ逃げるのは、フェラーズとアイディアが
かち合ってからにしろと言いたい(笑。

おなじみトビー&ジョージの探偵コンビの最終作という事であるが、これで
終わってしまうのが残念な名コンビである。

ところで、さんざんトビーは皆から”迷探偵”と言われているが、
自分はそうではないと思う。初動捜査から全く無駄なことはやってないし、
最初に掴んだ手がかりだけで相当の事実を次から次へと見破っている。
しかも、容疑者各人の隠し事も鋭く嗅ぎつけているし、それに関する調査の方も
抜かりはない。
ただ、集まった材料を虚心坦懐に並べて推理することができず、思い込みで
ストーリーを構築してしまうので、その結果行き詰ってジョージに助けてもらうという
パターンの連続になってしまう。まあそれが探偵としては致命的な欠点ではあるが、
半端に優秀だから、逆に真相になかなかたどり着けないのではないか。

もし自分だったら下手気に推理なんかしないで、とにかくジョージの助力を
仰いで早い事解決に至ろうとするもん。
Trackback URL -->
クリップボードへコピーする場合は こちらをクリック(Win+IEのみ)
  posted at 2008/10/18 6:20:22
lastupdate at 2008/10/18 6:22:04
»category : 書評修正

:: trackback ::


:: pplog ::