» 「日本の面影」読了 | date : 2008/12/04 | |
山田太一著「日本の面影」読了。 作家と違って、基本的に脚本家は嫌いである。 TVという流れの速い世界に身を置くがゆえに、その作品に普遍性がないという 明らかな自分の偏見があるからだ。 ましてや、本著の山田太一は、かつて向田邦子、倉本聡と肩を並べた人気脚本家 であり、通常ならその著作は自分の好みのラインには全く入ってこないはず。 まあ田舎だから放送が定刻にやっていなかったというのもあるが、かの有名作 「ふぞろいの林檎たち」も見ていないし、映画「キネマの天地」もしかり。 しかし、この本の元となったドラマは珍しくしっかり観ており、その記憶が 強く残っていたので敢えて購入した。 ストーリーはラフカディオ・ハーン、小泉八雲の後半生物語である。 本を読んで思ったのだが、自分の記憶違いか、ドラマで放映されたはずの場面が 削られているような気が。 明治の世で、日本の良さが失われていくことに苛立つハーンを、妻のセツ(檀ふみ) とセツの養父、金十郎(佐野浅夫)が宥めるべく、夕食時に民謡を舞い踊り、 場を盛り上げようとする。 元々武士の血統たる面々が、ハーンの機嫌を取るべく道化を演じる事に、祖父の 万右衛門(加藤嘉)は耐え切れずに金十郎を殴りつける。 金十郎は万右衛門の怒りを理解しつつも、零落した家族の家計を支えているのは、 ハーンの収入ではないか、と激高して叫ぶ。その上で、 「婿はんのためなら、踊り踊っちょうだわや!」と泣きながら舞う。 それを見て、ハーンがゲラゲラと笑い出す。不思議に思った皆が、 「婿はんは、なんで笑うちょるんですか」とハーンに聞くと、 「自分は早く両親に死なれて一人で生きてきた。だから家族喧嘩もできなかった。 今は家族で喧嘩ができる。嬉しい。楽しい。」 ハーンの答えを聞いて、家族がみんなシュンとする、という場面がすごく記憶に 残っているのだが。 本の方では、金十郎が舞うところで場面が変わり、そういうシーンが無くなっている。 別の場面で家族喧嘩を見て、上記の心境を手紙に綴るハーンの場面が入れられ ているのだが、さて、自分の記憶違いだろうか。 しかし、あらためて当時を思い出すと、セツを演じていた檀ふみのなんとまあ、 魅力的なことか。 「いつも輝いていたあの海」でもそうだったが、色気こそさっぱりないものの、 聖性とか慈愛とか、感じさせる役どころは本当に巧いと思う。 |
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posted at 2008/12/04 2:52:30
lastupdate at 2008/12/04 22:10:47 »category : 書評 【修正】 |
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