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» 「格差はつくられた」読了 date : 2008/10/02
ポール・クルーグマン著「格差はつくられた」読了。

現代アメリカの極端な格差社会は、グローバル化等の経済要因によって生まれた
ものではなく、共和党右派(おもにネオコン)の政治政策によるもので、
彼らが1980年代以降、アメリカに根付いたニューディール政策を破壊し、金持ちと
大企業を優遇する政策を取り続けた結果生まれたものだとする、経済学者
クルーグマンの新著。

来るべき大統領戦では、必ず民主党が共和党を破り、医療保険制度や
福祉制度を改革し、再びニューディール政策の実施へと舵を取らなくてはいけない、
と筆者は主張する。

どうかんがえても一部の利益しか考えてない極端な右派が、なにゆえ選挙で
政権を握れたか、という話。
役人が税金を無駄遣いする事によって、なすべき政策を実施できていないとか、
福祉のやりすぎによって、貧民層が不当な配当を受け取っているとか、
民主党は国防に弱いとか、外交でアメリカの敵に対して強く圧力をかけられるのは
共和党だけだ、とか、そういった感情をもろもろ煽って、本来共和党など
支持すべきではない中流以下の白人層まで取り込み、
右派は政権を握っているという事である。

また、ネオコンを中心とする共和党右派は、大企業や金持ちとべったりくっついて
いるため、潤沢な資金を誇り、それにて対立候補を貶めるネガティブキャンペーンを
実施したり、貧民層に選挙を放棄させるよう圧力をかけているとの事。

日本はアメリカほどではないものの、ついこないだの国税庁調査で、
年収一千万円を超える階層は八万四千人の増加、年収二百万円以下の給与
所得者は約十万人増加と、はっきり二層化の傾向を示している。

面白いのは、格差社会を推進する勢力というのは、洋の東西を問わず似たような事
をいうものだなあ、と感心する次第。
必要以上に公務員や政府の無駄遣いを言い募り、小さな政府を理想とし、
改革を謳ってあらゆる国営施設を民営化することが理想だと言ってみたり、
中韓朝へ強い態度で迫り、日本はこれから言いたいこと言い、弱腰の外交は
しないとアピールしてみたり。

威勢のいい言説の裏に、格差を広げる政策をきっちり準備して、
累進課税や法人税の設定を甘くし、金持ちをと大企業を優遇してさらに資金的支持を
得る。

まあ、アメリカではそういう場合に民主党という受け皿があるのだろうが、
日本ではどっちの方向を向いていいのやら、甚だ頼りない面子しか思い浮かばない。

困ったもんである。

経済学者が世の動向を経済理論ではなくて政治の政策によるものと断じてみたり、
あまりにも民主党ベッタリの主張だったりするところに多少疑問を感じるところは
あるものの、なかなか面白い指摘もあって、日本の現状とも照らし合わせてみると
色々考えさせられる事が多い本だった。
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  posted at 2008/10/03 0:00:01
lastupdate at 2008/10/03 3:26:43
»category : 書評修正

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