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» 「狐火の家」読了 date : 2008/10/03
貴志祐介著「狐火の家」読了。

前作、「硝子のハンマー」で活躍した、防犯コンサルタント榎本と、女弁護士青砥が
再登場、4つの事件の謎に挑むという中短篇集。

前作、「硝子のハンマー」は事件現場を見取った榎本が、一見精緻かつ完璧と
思える推理を、何度も何度も作っては放棄し、作っては放棄し、
最後におおよそ考え付かないような真相に至る、という見事な作りだった。

今回は中篇短編を4つ纏めて一冊にしたというだけあって、流石にそういう
ボリュームはなく、全体的に事件の解決も、当然ながらあっけない。

表題作の「狐火の家」も、雰囲気は重厚で、これを膨らませばどこまでも長編が
書けそうなのに、「あれっ?」というタイミングでエンディングを迎えてしまう。

ラストの「犬のみぞ知る」に至っては、ユーモアミステリを狙っているのか
スラップスティックを狙っているのか、青砥&榎本コンビと容疑者達のドタバタ劇に
なんだか白けてしまう。
タイトルだけ見た時は、チェスタトンの名作「犬のお告げ」のオマージュなのかな、
と思ったが、まるっきり違っていた・・・・・。

自分が最も好ましいと思ったのが、2番目の「黒い牙」。
このトリック、「バカミスだ」とか、「推理マンガ並み」とか言ってこき下ろす人も
いるが、自分は、作者が精一杯チャレンジした結果だと思っている。
荒唐無稽であろうと、新しいものを生み出そうとする意気込みが感じられたら、
自分は積極的に支持する。


ただ、青砥&榎本コンビは、やっぱり重厚な長編の方がいいのではないか。
榎本の精緻な推理手法は、アイデア一発勝負の短編には向いていない気がする。

トリックやロジックを考え抜いて一つの作品にするのは、それっぽい雰囲気だけで
ごまかしの効く他の文学分野よりも数段難しい。(優劣の差ではない。)
根っからの本格畑でない貴志祐介には、まだ不慣れさを感じる。
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  posted at 2008/10/03 3:01:25
lastupdate at 2008/10/03 3:25:20
»category : 書評修正

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