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» 「凶鳥の如き忌むもの」読了 date : 2007/01/06
三津田信三著「凶鳥の如き忌むもの」読了。

以下あらすじ。
昭和40年代まで活躍した探偵小説家、刀城言耶は、日本各地の怪奇譚や
伝承を調査蒐集する好事家でもあった。
彼が経験した怪異のうち、彼自身の活躍によって全貌が明らかになった事件も
ある。
兜離の浦に浮かぶ鳥坏島で起こった、鵺敷神社の巫女消失事件も、
そんな怪異の一つであった。
十八年前、鵺敷神社の巫女と大学の民俗調査員が孤島の鳥坏島に渡り、
「鳥人の儀」と呼ばれる儀式を執り行った。その結果、何と巫女を含めた7人が
その孤島で消息を絶ち、生き残ったのは、巫女の娘である少女朱音ただ一人
という不気味な事件が発生した。
鵺敷神社の信者である兜離の浦の村人達は、儀式が失敗に終わったために、
巫女の朱名が鳥女という妖怪と化して、大学の調査員を襲ったのだという
まことしやかな噂が流れていた。
時は下って戦後の時代、先代朱名の名跡を継いで巫女となった朱音が、
再び「鳥人の儀式」を成功させるべく無人の鳥坏島に渡るという。
刀城言耶はその立会い人に選ばれたが、不吉にも、立会人の数は、
前回の儀式と同じ7人、巫女を含めて8人という十八年前と同じ数字だった。
そして再び孤島で起こる惨劇とは?
島の8人は無事儀式を乗り越えることができるのか。


正直、京極夏彦の亜流とも言える。あちらが妖怪譚中心であるのに対し、
こちらは民俗学、土地の伝承などが中心。
しかし京極堂シリーズが謎の解法については合理的論理的解釈を徹底している
のに対し、こちらはホラーとミステリの線上を際どく行ったり来たりしている。
最終的に導かれるのは、推理小説らしい合理的な解ではあるのだが、
ホラー的な解釈も出来るよう、一つまみの不気味な含みも残している。

こういう日本らしい土着の怪異譚という設定自体、自分の好みにものすごく
合致してるので、かなり面白く読めた。
自分の好みというだけでなく、実際のストーリーテリングも巧みで、
作者の読ませる技術はかなり高いものがあると感じた。

話の展開が面白くて、物語にぐいぐいと引き込まれていく反面、
明らかにされる真相はやや強引で動機の説明も十分に納得できるとは言いがたい。
拍子抜けの感もあり、そこはちょっと不満である。

ただ、全体的なストーリーは非常に興味深く、次回作も是非読みたいと
思わせる内容だった。

横溝、京極のような純和風の探偵小説が増える事は素直に喜ばしい。
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  posted at 2007/01/06 3:43:58
lastupdate at 2007/01/06 3:43:58
»category : 書評修正

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