» 「乱鴉の島」読了 | date : 2006/12/22 | |
有栖川有栖著「乱鴉(らんあ)の島」読了。 おなじみ臨床犯罪学者火村助教授ものの本格推理小説。 以下あらすじ。 日々の雑事で心身が疲労していた火村は、下宿先の大家に進められて 三重県の離れ島に出向き、休養を取ることとなった。 友人の推理作家有栖川を伴って、港から小船で島に向かった火村だったが、 島の名前を間違えて、別の島についてしまう。 そこには、伝説の詩作家であり小説家の海老原瞬が隠棲しており、 彼を慕う人たちがたまたま集い、ささやかな親睦会を開いていた。 そこへ火村と有栖川は闖入してしまうわけだが、船の運航上の関係から、 やむなく海老原の別宅へ寄宿することとなってしまう。 不意の客に島の面々は困惑するが、やがて空から爆音を響かせて、 さらに奇妙な乱入者があらわれる。 鴉が無数に舞う島で、一体何が起こっているのか・・・・・。 といったストーリー。 有栖川有栖の小説は、長編短編ともにスケールが小さく小品感が漂うのが 通例だが、この作品も多分に漏れない。 しかし、自分にとって不満はそれだけだった。 いやあ見事なもんである。クイーンを信奉し、鮎川哲也の流れを汲む有栖川有栖 の論理構築手腕は、相変わらず日本の作家の中では図抜けたものがある。 彼の最大傑作である長編「双頭の悪魔」でも、論理の切れ味は遺憾なく発揮 されていたが、本作も論理の切れが十分発揮された堅実なつくりだと思う。 その人間が何故そのような行動をしなければならなかったのか、論理的に 導き証明していく過程は痛快そのもの。 バックボーンとなる思想背景は賛否両論あるが、自分はそのような発想が なされることはありうる、と思っている。 但し、それは個人的見解から言えば、無意味だ、とも思っている。 あーこないだの「邪魅の雫」に似るよな、感想。 しかしその思想背景が肝なので、論評できないのがもどかしい。 突飛でついていけない、とは思わなかった。こういう思想はありうる、としか 言い様がないな。 推理小説としても、端整でよくできている。ややこしいトリックを使っている訳では ないが、美しい論理の捌きは手練れの仕事だ。 |
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posted at 2006/12/22 0:42:23
lastupdate at 2006/12/22 1:46:21 »category : 書評 【修正】 |
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