» 「毒杯の囀り」読了 | date : 2006/12/16 | |
ポール・ドハティ著「毒杯の囀り」読了。 あらすじ。 1337年、エドワード三世の薨去とリチャード二世の即位という政治的混乱の さなか、ロンドンに住む豪商トーマス・スプリンガル卿が毒殺された。 容疑者と思われる執事が首をくくって自殺していたが、その状況は不自然、 誰か他の人間が二人を殺したのではないか、との疑惑が持ち上がる。 しかし、スプリンガル卿の部屋の回りは鴬張りのような人が歩くと鳴く仕組みに なっており、執事の他には誰も近づいたものがいないと家中の人々は 証言するのだった。 ジョン・フォーテスキュー首席裁判官の命令に従い、 大酒飲みの肥満体ジョン・クランストン検死官と、 浮世の煩悩に悩むアセルスタン修道士が、事件の謎に挑んでいく。 歴史ミステリーの大家ポール・ドハティの作品。 クランストン卿&アセルスタン修道士のコンビが探偵を務める緒作でもある。 鶯張りの鳴き廊下に、誰も近寄ることはできないはず、という魅力的な謎を 構築しながら、それを提示する部分が弱く、ドラマチックになっていない。 事件は淡々と推移し、クランストン卿とアセルスタン士も紆余曲折する事が 少なく、的確に真相に近づいていくのであまり謎に悩まされる事もない。 クランストン卿とアセルスタン士のぶつかり合いや言葉の遣り取りは面白く、 キャラクターは立っているが、ストーリーの面白さという点で言えば、 エリス・ピーターズの「カドフェル」シリーズに著しく劣ると思われる。 反面、事件の真相についてのトリックや処理は、「カドフェル」ものと比べて 遥かに論理的で整然と構築されており、本格推理のロジックの質という点では 本作の方が上かも知れない。 もう一作くらい読まないと、判断がつかないなあ・・・。 ミステリとしての盛り上がりの弱さは、訳文の責任もあるのかも知れんが。 |
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posted at 2006/12/16 14:49:41
lastupdate at 2006/12/16 14:54:24 »category : 書評 【修正】 |
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