» 「犬神家の一族」観劇 | date : 2006/12/18 | |
映画「犬神家の一族」を観劇。 ネット評をざっとさらってみたが、まあ、酷評だこと、酷評だこと。 小生の感想は、そこまで悪くはない。 ネット上の意見で多かったのが、過去の作品をトレースしてるだけで、 何の新鮮味もない、前作の完成度を越えられていない、というもの。 また、脚本は全く同じで、リメイクする意味がない、というもの。 しかし、それは仕方がない。あのとき、あの作品は、時代が生んだもの。 あのころ、邦画の大作は存在せず、ほとんど死に体だったと聞く。 もう一つ重要なのは、あの時代、横溝正史モノのような本格推理も死に体だったという事。 泉鏡花が自然主義のリアリティに押されて一時期文壇で不遇をかこったように、 横溝正史もまた、「点と線」に始まる松本清張のような社会派推理小説に押されて 不遇をかこっていた。 本格といえば他には鮎川哲也が孤塁を守っていたくらいで、横溝のような作品は 時代遅れ、草紙趣味、非現実的と排斥され、犯罪小説を書くにも社会的バックボーンと 小難しい理屈が必要な時代だったのだ。 それを、角川がひっくり返した。邦画と、本格推理の危機を救った。 派手な宣伝、圧倒的資金力、メディアミックスを用いて、邦画でも金が稼げることを 完全に証明した。 横溝作品はブームとなり、横溝正史は再び金田一モノを執筆する事ができた。 社会派に押されまくっていた日本の本格推理小説が、一定の存在意義を認められた 訳だ。 島田荘司、笠井潔らが横溝とは違うアプローチながら本格を継承し、 綾辻行人の「十角館の殺人」で新本格として完全復活する・・・・その下地を、かの映画は 作ったといってもいいくらいだと思っている。 それだけに、最初の映画には緊張感があったのだろう。原作者にも、邦画製作者にも、 「なにくそ!!」という思いがあったに違いないと思う。 そういう熱気に溢れた過去の作品と比べて、本作を「気の抜けたビールかサイダー」の ように、扱うことはたやすい。 でも、自分はそういう見方はしたくないんだこれが。 本作も、堅牢に組み上げられたシナリオ、豪華な出演者の重厚な演技で、 一定水準以上の面白さは十分に確保していると感じられた。 「2時間TVドラマと変わらない」という意見もあったが、そういう金田一ものの2時間 ドラマが楽しめるようになったのは、この元祖映画があったからだ。 フォロワーが元祖に似るのはしょうがないじゃないか。 いや、今のTVドラマの金田一モノより普通に面白いだろこれ。 年取ってトウは立ったけど、石坂浩二は石坂浩二だぜ。 鶴太郎、稲垣と同列に扱うか? 新宿の大型シアターで6割程度の座席が埋まった客席で、20代と思しき若い人たちも 結構大勢見に来ていた。帰りの階段で、若いカップルが並びながら、やや興奮気味に 「面白かったねー」と語ってる様子を見て、 「いつか横溝の原作群にも触れてくださいね」と、横溝正史好きの本格推理小説ファンは 嬉しく思ってしまうのだ。いや、読む確率は低いかも知れんけどさ。 あれから、30年たっているのだから、新しい客が来て新しい底辺が広がっていく。 一世を風靡した優秀な脚本があり、史上最高の金田一が復活するのなら、 トレースした再演も小生はおおいにありだと思うのだ。 でも、深田恭子のはるちゃんは全然田舎娘に見えません。 あと、松嶋菜々子もやっぱりきつかったです。 |
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posted at 2006/12/18 3:17:35
lastupdate at 2006/12/19 0:19:20 »category : 映画関連 【修正】 |
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