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» 「白と黒」再読 date : 2010/04/21
横溝正史著「白と黒」を久々に再読。十年ぶりくらいで犯人はすっきり忘れていた。

以下あらすじ。

新しく東京郊外の地に出来た団地の中で、怪文書が横行していた。
元は水商売の女で、今は年下の夫と結婚し平凡な主婦業をしている緒方順子の
所にも、順子の浮気を糾弾する差し出し人不明のチラシが投入された。
激怒した夫といさかいを起こしてしまった順子は、水商売時代の馴染みだった
名探偵、金田一耕助に怪文書の差し出し人調査を依頼する。

どうやら怪文書の被害者は順子だけではなく、その団地全体に及んでいるようで、
糾弾された内容の酷さに自殺をしかけた少女さえいるという。
チラシを順子と二人で金田一が吟味している間、団地のダストシュートから、
とんでもないものが見つかって大騒ぎとなる。

発見されたのは真逆さに落とされた女性の死体、しかも団地工事用のタールが
ゴミ捨て場に流れ込み、顔がもはや誰なのか判別できない状態で!


うーん本当に内容をすっきり忘れていたのだが、決してオチが弱いとかそういう事は
なく、読了して非常に面白かったという感想を持った。
金田一耕助といえば岡山県の寒村で活躍するイメージが強いのだが、実際のところ
東京で活躍する事件も数多い。
代表作のみ愛好する人だと、東京篇はあまり好かない、という人もいるみたいだが、
自分は都会の中を闊歩して事件を解決する金田一も好きである。

優れたトリックとプロット、意外性のある結末と三拍子そろっており、犯人をすっかり
忘れていた自分としては、真相を読んだ時、「あれ、この人が犯人だっけ!」と
ちょっと驚いてしまった。
すれっからしのミステリ読みである自分としては、犯人の意外性で驚くことなど
もはやほとんど無いと言っていいのだが、この作品は再読であるにも関わらず、
真犯人の正体には結構驚かされた。

横溝正史というのは、本格派の中でもトリックや意外な真相というよりは、
プロットとストーリーテリングの面白さで魅せる作家だと思っているのだが、
この作品は珍しくフーダニットでも楽しませてくれる佳作だと感じた。

中盤あたりがやや冗長に感じられはするが、重量級の長編推理小説として
個人的にはかなり高い評価をしている。

ちなみに今の角川文庫の表紙は味もしゃしゃりもないブックカバーだが、
ちょっと前までのカバーには、杉本一文さんの描かれた魅力的なイラストが
表紙を飾っていた。

個人的には横溝モノの表紙でトップ3に入る好みのイラストだったのだが、今や
入手も困難に。
ネット上でイラストを掲載しているサイトもあるので、そちらを是非見ていただきたい
と思う。
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  posted at 2010/04/21 3:12:11
lastupdate at 2010/04/21 3:34:41
»category : 書評修正

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