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» 「ジャンピング・ジェニイ」読了 date : 2010/03/12
アントニー・バークリー著「ジャンピング・ジェニイ」読了。

久々のミステリ書評。以下あらすじ。

犯罪研究家として著名なロジャー・シェリンガムは、友人の小説家ストラットンに
招かれ、歴史上の有名な殺人者ばかりに扮した奇妙な仮装パーティに出席した。

会場には趣向として、首を吊られた女性の人形がぶらさがっていて、出席者の
興味を引いていた。パーティ自体は喧騒のうちに進んでいったのだが、ストラットンの
義妹、イーナは皆の顰蹙を買うような人物で、パーティの出席者に露骨な性的
モーションをかけては、断られるとその人の悪口を会場中に言いふらすという愚行で
男性陣の辟易を引き出していた。
その夜、会場となったストラットンの屋敷の2階で、人形ではなく本当の女性が
首を吊るされる事件が発生、そしてその被害者は件の問題児、イーナ・ストラットン
だった!

という、文章にするとなかなか興味深い内容。古典だが意外と読まれていない
バークリーの、相変わらず捻りの効いた怪作。

バークリーファンには御馴染みの、迷探偵ロジャー・シェリンガムが、自信満々に
誤った推理をふりかざしたり、警察の捜査に対して誘導を企てたりして、犯罪を
こんがらかったものにしてしまうというシリーズの一作。

はっきり言って本格推理とは遠いところにある作品。というか、これはバークリーの、
「本格推理小説中の偉そうな名探偵だって、実際はこんなシェリンガムみたいな
ドタバタ野郎と変わらないんじゃないの?」という毒が効いている訳で。
シェリンガムは、典型的な名探偵のカリカチュアになっているという事。

まあ逆立した後期クイーン問題というか、無謬性の問題を逆手に取って遊んで
しまっている作風。

アメリカ人らしい清教徒的潔癖症で名探偵の無謬性について悩んでしまえば
後期クイーン問題になるし、
イギリス人らしいユーモアとウィットに富んだ気風で、名探偵の無謬性について
皮肉と嫌味に徹すれば、バークリーのシェリンガム物になるという感じがする。

どちらが精神衛生上良好で、前向きな姿勢かといえば当然バークリーの方だし、
ヨーロッパ人特有の余裕というか、懐の深さには共感を覚えんでもないんだが。

しかし自分のような本格推理好きには、探偵の無謬性なんてどうでもいいから、
彼らの目くるめく名推理や論理魔人ぶりを堪能したいというだけなのに、そんな
野暮なこと言うなよと不平の一つでも言いたくなるところ。

相手がライツヴィルもののクイーンにせよ、シェリンガムもののバークリーにせよ。
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  posted at 2010/03/12 0:31:50
lastupdate at 2010/03/12 4:15:52
»category : 書評修正

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