« それにしても肩がこったよ | メイン | それでも今年2回目だ »

2004年10月01日

「夜のピクニック」恩田陸

しばらく前、「図書室の海」に掲載されていた短編のひとつに、この作品の前身となるものがあった。後書きには、後に長編になりますというようなことが書かれており、とても楽しみにしていた一冊。

同級生の異母兄妹(姉弟?)が偶然同じクラスになってしまったが故の緊張感。無視しようと思えば思うほどお互いを意識してしまう二人に、卒業を前にして行われる夜のピクニックで起こった出来事とは。

楽しみにしていたからかな。最近の恩田陸作品の中では一番まとまっていて良かったと思う。アイデアは面白いけど冗長、途中までは抜群に面白いのに結末がちょっとなどなど、そんな作品が続いていたので今回は全体的に納得できる感じがして嬉しかった。

たった一晩で何が、と言うなかれ。変化が起こるきっかけなんてささいなことかもしれないし。ハッピーエンドかどうかはわからないし、夜のピクニックが終わった後に、また何かしらの問題や感情のもつれが生まれるかもしれないのだけれど、その行事が夜明けと共に終わっていくというあたりに、これから先も少なくともこれ以上悪くはならないのではないかという希望がある気がして。

もっとも、私としては思うところはありますよ。血の繋がりってどうなんでしょう。「兄弟なんだから仲良くすれば」って相当奇麗事の様な気がする私は狭量でしょうか(笑) この話のようにお互いの存在を良く知っており、毎日顔を合わせている関係で歳も近いというのならばまだしも、(存在だけはぼんやりと知らされつつも)数十年間顔も知らずにいる関係であった場合、感動はあるのかな、と。まあ、ある種の感慨はあるかもしれないよね。もしも天涯孤独になったりしたら、その時には感じるものがあるような気もするが、でもやっぱり今さら感の方がそういった思いを上回ってしまう。既に他人だもの。

いや、でも。それは私が恐れるからか。自分が何よりも忌み嫌う自分自身の何かを他の誰かが同じように持っているのを見るのが怖い。そしてそれが確かに私の中に「血」として根付いているのだと自覚する瞬間を想像するだけでぞっとしてしまう。そういうのってないのかな。相手に自分と同じ空気を感じることは、決して安心感ばかりではないと思うのです。

だから、この話は物語としてはとても素敵なお話ではあるけれど、随分と私の暗い部分を刺激してくれました。さて、気をとりなおして次の新刊に移ろう(笑)

投稿者 kaori : 2004年10月01日 23:40

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://WWW9.big.or.jp/~k_kaori/mt/mt-tb.cgi/376

コメント

コメントしてください




保存しますか?

(書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます)