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» セガ恐るべし date : 2006/07/26
もう数年前になるが、セガの家庭用ゲーム機撤退について、なぜそういう結末に
なったのか、考察を行った記事を特集のコーナーで長々と書いた事があった。
あの時自分が行ったセガの敗因分析は、今でもそれほど的外れだとは
思っていない。

その後もセガは迷走を続け、パチンコメーカのサミー傘下に吸収される所まで
いってしまった。
そうした苦境に陥りながらも、セガは逆襲の爪を研いでいた。
それは、戦場を他社のハードウエアに移した家庭用ゲーム機が舞台ではなく、
ドリームキャストに全力を傾注するあまり蔑ろにしていたセガ本来の
フィールドである、アーケードゲームでの復権だった。

PS2が発表された当時、その余りの高性能ぶりに、もはやゲーセンでゲームを
する意味があるのかと感じたものだったが、自分の昔の記事にも、
「パソコンの汎用、家庭用の手軽さ、アーケードの高性能、技術の進化によって
その3系統は家庭用の一本にまとまりつつある」と書いている。
実際のところ、パソコンの売りだった膨大なデータの処理や、ネットワークを
介してのゲームの稼動はPS2ら家庭用でも何ら問題なくドライブできるように
なり、現にネットゲーとして「FFオンライン」の大ヒットを見る事になった。
また、当時のゲーセンはUFOキャッチャーとプリクラに大部分を占拠されて
おり、この惨状からアーケードゲームが復活するとは到底思えなかった。

しかし、セガはアーケードの不毛の大地に帰ってきた。ここが本来のセガの
フィールドだからである。
セガは鈴木裕に代表されるように、技術的ブレイクスルーを頼っての
新規ゲーム作成に高い技術を発揮するメーカーであるが、
今回もメカトロニクスの分野で生まれた斬新な技術を武器として、
アーケード界に新風を吹き込んだ。

紙に書かれた情報を赤外線照射にて読み取る。
企業の工場や研究開発室ではもはや珍しくもない技術であるが、
これをゲーセンに持ちこんだ。
しかも、赤外線認識装置をずらりと並べて一定範囲のフィールドを作りこみ、
その情報がフィールドのどこにおかれているのか判定する機能を持たせたのだ。
「フラットリーダー」。
そしてその技術に組み合わされたのが、トレーディングカードだった。
では、そのトレカに採用されたものは?
当時中田英や中村俊輔が在籍し、日本でも一定の人気があったイタリアサッカーの
セリエA。これをドッキングさせ、従来どこにもないゲームを作り上げた。
選手のトレカをフィールド上に置くことによってチーム登録し、その配置によって
フォーメーションが変わる。カードは1ゲーム終了するたびに1枚排出され、
それによって入手できた選手をさらにゲームにつぎ込む事ができる。
中には、光り輝くレアカードがあり、そのレアカードは他の選手と一線を画す
能力をもっている。それを試合に投入する事で、自分のチーム戦力を大幅に
強化する事ができる。
今に続く「WCCF」の誕生。

なんというアイデア。
当時自分はサッカーへの関心がほとほと薄く、友人から誘われた際も躊躇して
プレイしなかったのであるが、それにしても当時より、セガのアイデアの凄まじさ
には関心せざるを得なかった事を覚えている。

これはその規格の斬新さ、レアカードを求めての射幸心を惹起するシステムの
絶妙さから、ゲーセンで空前のヒットとなり、セガのアーケードでの復活を高らかに
宣言する先鋒となった。
セガはこれで勢いに乗る。フラットリーダーの次に開発したのは、今度は
カードに書かれた情報を数十枚まとめて読み取るパケットリーダーである。
マシンに用意された開口部に数十枚単位のカードを投入すると、
自動的にカード情報を読み取ってゲーム内にユーザの使用カードとして
登録する事ができる。
これを使えばマジック・ザ・ギャザリングのようにプレイヤーは複雑なデッキを
組む事ができ、複雑な駆け引きを持ったゲームをコンピュータ上で
展開させる事が可能になるのだ。

ボードゲームとこれを組み合わせた「アヴァロンの鍵」、
多人数プレイを前提としたロールプレイングゲーム「クエスト・オブ・D」。
いずれも稼動当初はなかなかのヒットとなり、これもセガの勢いを牽引した。
しかし、「アヴァロン」はゲームバランスの悪さから客離れが加速し、
途中一度全面改訂が必要になった。これによりゲーム性は向上したものの、
客足は復帰せず、衰微の一途をたどっている。
「クエスト・オブ・D」も一時期稼働率No.1になるほどの人気を博しながら、
不正操作でアイテムの無限増殖法等が編み出された上、それらへの対策が
技術的に難しい事もあって放置され、まっとうなプレイヤーほどバカを見る、
という構造が出来上がってしまった。
そのためこれまた稼働率の低下を招いている。

せっかく編み出したパケットリーダーであるが、まだ、存分に力を振るっているとは
言えない。これはセガ開発陣の今後の課題となってくのだろう。

ここまでは比較的高年齢を対象にしたトレカゲームが主流だったが、セガは、
低年齢層を対象に、斬新なトレカゲームを編み出していく。
フラットリーダーやパケットリーダーでは場所やコストを取る。廉価なトレカ
システムを編み出し、低年齢層向けの新たなゲームを開発しなければならない。
セガが出した答えは、既に過去のものとなっていたバーコードリーダーを使用し、
それとトレカを組み合わせる事によってコンビニのような狭い空間でも稼動を
可能にしたゲームを開発する。題材は、少年時代一度は夢中になる虫取り。
そして、自分のゲットした虫同士を戦わせ、その優劣を競う。
「甲虫王者ムシキング」の誕生だ。
またたくまに小学生の間で人気が爆発し、トレカゲームはセガのもくろみどおり
低年齢層でも大成功を収める。

WCCF、ムシキングが大きな成功を収める中、セガの開発部で比較的弱小だった
チームより、一つのアイデアが熟成されていた。
WCCFは斬新なゲームではあったが、カード配置によって認識されるのは
フォーメーションだけで、選手達は勝手に動作する。せっかく、座標を認識させる
フラットリーダーという優秀なインターフェイスがあるのだから、
カードの移動自体を、即ちゲームの操作にできないか?
リアルタイムでカードを移動させ、カード同士がぶつかる事によって戦闘が始まる。
ならば題材は合戦がいいだろう、カードは即ち武将、舞台は三国志。
そして対戦は通信で、全国のライバル達とマッチングを組めば、トレカゲーに新たな
展開をもたらす事ができる。
「三国志大戦」はこうして登場する。
カードの武将は有名漫画家や若手イラストレーターによって美麗な錦絵に
仕上げられ、コレクターの収集欲も向上させる。
ゲームバランス、戦略性、アクションゲームとしての面白さ、全国大戦のずば抜けた
完成度において、これまた大ヒット作になる。

続いて「ガンダム0079カードビルダー」を開発。これは三国志大戦タイプの
アクションゲームであるが、操作するボタン数が格段に増え、プレイアビリティ
がやや下がった上に、通信対戦機能を実装していない事もあって現在苦戦中。

ここまでは、どのゲームも男向けである。では女性向けにこのような題材を
開発できないか。
高年齢の女性をゲーセンに取り込むには無理がある。では女児だ。
女児には何がアピールするか?ヘアスタイルとファッションだ。これをムシキングの
システムでトレカ化しよう。
ゲームの登場人物に着せる服と、髪型をカード化すればいい。
アクション要素として音楽ゲームのように、タイミングを合わせてボタンを押すことで
ダンスのできる機能を加えよう。
「おしゃれ魔女ラブ&ベリー」登場。これまた爆発的ヒット中。

気がつけば、プリクラ&UFOキャッチャーにほとんど占拠され、
一部の格闘ゲームファンによって細々と守られてきたゲームセンターに、
再び客足が戻ってきた。セガ恐るべし。

大手ゲームメーカーでも、まずコナミがこの動きに追従する。
プロレスを題材に取ったトレカゲーム「バトルクライマックス!」は、
ゲーセンのユーザー層とプロレスのファン層を見誤って完全に失敗するが、
続く「ベースボールヒーローズ」はまずまずの成功を収めている。
(一部バッターの理不尽なまでの高打率(CGS)からゲームバランスの悪さで
現在停滞気味ではあるが、パート2も開発中であり、まだまだ期待が持てる。)

今やゲーセンの賑わいは完全に復権しており、その勢いは停滞気味の
家庭用(特に据え置きタイプ)を凌駕する。

あとは、これらのトレカを、PS2等の家庭用に転化する技術が完成したら・・・・。
何もフラットリーダーは必要ない。一枚一枚、バーコードリーダーのように
読み込ませてしまえばいいのだ。
さらに、カードの入手自体はゲーセンに限れば、ゲーセンの勢いを落とす事もない。
これを実施すれば、セガ復活の決定打となる事請け合いだと思うのだが。

やはり、セガの本領はアーケードにあるといっていいだろう。
逆に、アーケードの手を抜いていなければ、家庭用でも生き延びる事が
できていたのかも知れない。

「陸の王者慶応」という応援歌があるが、ここ数年間のセガの暴れっぷりは、
まさに、「アーケードの王者セガ」の呼称に相応しい。
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  posted at 2006/07/26 2:36:40
lastupdate at 2006/07/26 2:43:23
»category : TVゲーム関連修正

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