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» 綾辻行人「十角館の殺人」 date : 2007/11/12
綾辻行人の存在を知ったのは、いくつくらいの時だったか。
多分、16か17歳の時だと思われる。ズベズダ氏から貰った年賀状に、
「綾辻行人は面白いから、絶対読め」と書かれていた事を覚えている。

それに薦められて、綾辻のデビュー作である「十角館の殺人」を読んだ訳だが。

某大学の推理小説研究会の面々が、孤島の館に合宿として集まり、そこで
一人、また一人と殺害されていくのだ。

正直、ストーリー展開やトリックは自分の期待していたものと少々外れた上、
あまり文体が好みじゃないこともあって、
「なんだズベズダ、大げさな事書きやがって」とも多少は感じたのだが。

この作品の本質的な意義、真価と言えば別なところにあると思う。

登場人物にポウ、カー、エラリー、オルツィといった往年の有名推理小説作家の
あだ名を付け、それまで古びた概念と見られていた「本格推理小説」の擁護を
作中で大々的にやってのけてみせたのだ。

曰く、
人工的な謎で何が悪い、人間が描けてなくて何が悪い、奇天烈なトリックで何が悪い、
ありえない非現実的な設定で何が悪い、そういった小説を楽しんで、一体何が悪いのだ、
と。

この、綾辻行人の咆哮、啖呵切りには惚れ惚れした。
鮎川哲也、島田荘司、笠井潔あたりが細々と繋いでいた本格推理小説の系譜を、
若い綾辻が一気に復権せしめたのだ。

他の推理作家達も、(自分のような)読者側も、「そうだ、よくぞ言ってくれた」という
想いが非常に強かったと思う。

また、本格推理以外のミステリー小説も、この啖呵に大いに刺激されたに違いない。
ここから、現代日本のミステリー小説の興隆は起こっていったのではないか。

その歴史的功績の大きさは、近現の娯楽文学シーンを見渡しても比肩しうる存在が
いるかどうか、それくらいのレベルだと感じている。


申し添えておくけれど、「十角館の殺人」の結末に自分があまり驚かなかったのは、
自分が既に当時からかなりの「本格推理小説好き」で結構擦れっからしの
ファンだったからでもある。
本作は、トリックは良くできているし、推理小説としての完成度は高い。
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  posted at 2007/11/12 2:01:42
lastupdate at 2007/12/07 23:13:51
»category : 書評修正

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