» 「別冊宝島1625 中島敦」読了 | date : 2009/10/09 | |
「別冊宝島1625 中島敦」読了 中学の時、教科書に載っていた「山月記」の作者、中島敦の小説を19編集めた ムック本。 国語の授業自体を面白いとは思わなかったが、「山月記」の話自体は凄く 面白かったことを覚えている。 なんとまあこんな面白い小説を、日本流の国語授業で解体してみても無味乾燥 で全く味気がない。 これを題材にしたテストの設問を解くことにどれだけの意味があるのか、当時から 義憤のようなものを感じていた。 まあ、国語自体は得意教科だったので、テストの点数は比較的良かったのだが。 (ああいうものは設問者の望む解答を与えてやればよいのだ。) 「山月記」は当時からjoker氏と「あれは面白い」と話し合った記憶がある。 お互い「己の珠なるを半ば信ずるがゆえに」「己の珠に非ざることを恐れるが ゆえに」というフレーズがとてつもなく耳に痛く、主人公たる李徴の心境が 手に取るように解るから、二人ともあの話を面白がれたのだと思う。 ただ、この齢になると実感するのは、自分は李徴ほどの才能など全く持ち合わせて いないし、さらにそれを専一に磨く努力すらしてねぇー(笑)という絶望的な自嘲しか できないわけですけど(笑)。 さてこのムック本であるが、以前に買ったちくまの文学全集文庫とかなり収録作品 が似ている。 もともと作品が少ない上に傑作で定番の小説といえばだいたいお決まりになって しまうので重複する小説が多く、購入自体いささか失敗したと思わないでもない。 しかし何度読んでもこの人の小説は、「面白い。」 この人の小説を純文学か私小説か、なんと分類するかは分からないが、とにかく 「面白い」の一言に集約されるのではないか、と思うのだ。 泉鏡花が、小説のことを「人様から金を取って本を売る以上、文章や内容で読者の 耳目を驚かすことが出来ねば、職業作家として情けない」的な言い方をしていたが、 そういうサービス精神みたいなものがこの人にあったかどうかはいざ知らず、 とにかく読んでいて「面白い」という素晴らしい美点を備えている小説群だと思うのだ。 中島敦を芥川の亜流に扱う人がいるらしい。ムック本の前書きにも書かれていた。 しかし個人的な意見としては、中島敦を芥川龍之介の矮小化と分類するなんて とんでもない。 芥川龍之介が教科書に載っていても別段腹は立たないが、中島敦が教科書に 載っていると腹が立つのだ。 「こんな面白い小説を、無味乾燥な授業のネタにしやがって!」という点と、 「こんな面白い小説家を、授業で知ってしまうなんて! 自分で見つけて、 特権階級意識に浸りたかった!」という醜い自尊心に於いて(笑)。 芥川龍之介は、教科書に載っててもいい小説だと思う。別に貶してるわけじゃないし、 こっちも面白い小説家だとは思う。んでも、「俺達の龍之介!」という気は 全くしないんだよな。 でも中島敦には、「ブラボー!」と賞賛を送りたくなる何かがある。 |
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posted at 2009/10/09 2:45:58
lastupdate at 2009/10/09 3:01:22 »category : 書評 【修正】 |
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