「シックス・フィート・アンダー」とは…?

 「シックス・フィート・アンダー」(原題:『SIX FEET UNDER』)は、葬儀社を営む一家を舞台に、父親が突然の事故死を遂げたことで、家族のそれぞれが抱えていた問題が露呈していく様を独特の感性とブラックユーモア満載で描くヒューマンドラマ。企画・製作総指揮・脚本・監督は、アカデミー賞を受賞した映画「アメリカン・ビューティー」のアラン・ボール。毎回葬儀社に運ばれる人の最期の瞬間からドラマがスタートするのが衝撃的で、人の「死」に直面することで見えてくる「生」の現実や真実、人の「死」と共に忘れ去りたい事実など、人の「生」と「死」について鋭く切り込み描写しています。全米でも話題になったこのドラマは、アメリカTV界の賞を数多く受賞しました。現在日本ではCS放送局「Super! drama TV」(旧SUPER CHANNEL)で放送中ですが、アメリカでの放映は既に完結しています。(2001年〜2005年、全5シーズン)
 ちなみにタイトルである「シックス・フィート・アンダー」とは、棺桶が埋められる地点である地上から6フィート(182cm)下のこと。

このドラマのみどころ

 ロサンゼルス郊外で葬儀社「フィッシャー・アンド・サンズ」(F&S)を営むフィッシャー家を中心に話が展開していくこのドラマ。葬儀社が舞台という時点でかなり風変わりなのですが、毎回F&Sに運ばれるお客様の最期の瞬間から始まる所もまた風変わりかつ衝撃的。しかもその死に様も、パン生地キミサーでバラバラにされるレアケースから、病院のベッドで病死する一般的な(?)ケースまで様々な人の死が描かれます。また銃社会や根強い差別主義が招いた事件で亡くなったお客様の死も描かれ、アメリカの抱える社会問題に問題提起するエピソードも多々あります。ちなみにその冒頭でお亡くなりになるお客様にもきちんと設定があり(ドラマの展開で分かることもありますが)、HBO公式サイトではその部分も紹介されています。
 冒頭の数分でその強烈な世界観を発揮してくれるこのドラマですが、もちろん本編はさらに充実した(?)展開をみせてくれます。最初に話した通り、葬儀社が舞台というだけでかなりのインパクトですし、日米の葬儀文化の違いへの驚きもさることながら、葬儀社の裏側的な彼らの仕事っぷりはブラックユーモア満載。お客様の遺体を前にジョークを飛ばしてみたり、遺体の扱いでモメてみたり等、お客様に失礼なんじゃないだろうかと思うシーンも続出しますが、日常的に遺体と接してる彼らにとっては普通なんだろうなと思ったり。それに人の「死」とお仕事をする彼らならではの価値観や解釈は、思わず頷いてしまうことが多いのもまた事実です。
 登場する様々なキャラクターたちもこのドラマの魅力。その魅力も視覚的・外見的な魅力よりは、ドラマのキャラクターにこんなことを言うのも変ですが、すごく内面的な部分、人間的な面での魅力が際立っているように思います。このドラマでは何気ない日常生活での1シーンを描写していることも多いのですが、その中でのキャラクターたちの描写がとても細かいからでしょうか。アメリカのドラマで、しかも葬儀社勤務かその周辺の人々のドラマのはずなのに、なぜか「あーあるある」と共感できてしまうことが多いのです。このドラマを観た人は、おそらく1人は共感できるキャラクターがいるはず!

フェデリコかわいいよフェデリコ

 さて旧SUPER CHANNELで特番が組まれ大々的に放送が始まった本作なのですが、放送当初私はドラマの独特な雰囲気に興味を持ちつつも、ほぼながら観状態でした。そんな私がハマるきっかけになったのは、F&Sで働くエンバーミング(遺体衛生保全)を行うエンバーマー、フェデリコだったわけであります。

 ちなみにフェデリコを語る上でかかせないエンバーミングですが、日本ではまだあまり普及していない技術のようです。かくいう私もこのドラマで観て初めて知ったクチでして…。簡単に言ってしまえば、遺体の血液と防腐液を入れ替え、遺体を美しく長期保存を可能にする技術…のようです。(ドラマ内でフェデリコがやっているような、怪我による損傷、欠落部分の修復もエンバーミングの一環と考えてよいのでしょうか)また単に遺体の見栄えを良くするだけでなく、遺体に残った病原菌を滅菌するという衛生的な面もあるようです。
 ああ、あと5年早くこのことを知っていれば確実にエンバーマーを目指していただろう…って「シックス・フィート・アンダー」日本で始まってないじゃんという突っ込みはさておき、かくなる上は私が死んだ際には是非フェデリコ似のエンバーマーさんにエンバーミングをほどこあqswでfrtgふじこlp;。

-参考URL-
IFSA 日本衛生遺体保全協会

 話を元に戻しまして、エンバーマーというアメリカの葬儀業では重要な中核を担う彼。当初はその異様な仕事っぷりに「珍しい人もいたもんだ」的見方しかしていなかった私ですが、第1シーズン終盤に生後間もない赤ちゃんのエンバーミングをすることになった話で、普段は飄々と仕事をこなすフェデリコが珍しく躊躇し(これには理由があるのですが、それはエピソード解説の方で)、最終的には涙ながらに処置を施す姿に胸を撃たれたのでした。メインキャストとはいえ出番はそう多くないどちらかと言えば脇役で、それまで嬉々と遺体と戯れる描写がほとんどだったフェデリコが、初めて見せた人間的な弱さにいろいろと感じてしまったわけであります。(……正直、泣き顔が可愛かったという不謹慎な理由も大きかったわけですが、この泣き顔を見せる話は、ひとつの短い命の終わりを嘆いたフェデリコがその悲しみを乗り越えて、ひとつの新しい命の始まりに感動するという点でもとても好きな話なので、第1シーズン屈指のお勧めエピソードです)
 さてその一件ですっかりフェデリコに夢中になった私。運良く第1シーズンのリピート放送がすぐ始まったので1話からしっかりと観直す機会に恵まれ、めでたく「シックス・フィート・アンダー」の世界へ引き込まれていったわけです。「フェデリコ小さくて可愛いなぁ…」とか、「難解な遺体修復の種明かしする時嬉しそうだなぁフェデリコ…」とか、「この奥さんのどこがいいんだフェデリコ…」とかetc…。……いえいえ、もちろんフェデリコ以外もしっかり観てますハマってます。通販利用してまで関連グッズの収集に没頭したのなんてかれこれクリスチャン・スレーターにハマった時以来、実に7年ぶり!既にアメリカで放送が完結してしまっているのが残念ですが、日本での放送終了まで走り続けたいなぁと思う今日この頃であります。
(2006.10月 ばれりぃ)

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