その男は、静かな隣人
He Was a Quiet Man

DATE

2007年 アメリカ映画 95分 日本劇場未公開作品
監督 - フランク・A・カペロ

CAST
  • ボブ・マコーネル - クリスチャン・スレーター
  • バネッサ・パークス - エリシャ・カスバート
  • ジーン・シェルビー - ウィリアム・H・メイシー
  • モーリス・グレゴリー - ジョン・ギャラガー
  • コールマン - デヴィッド・ウェルズ
STORY

 しがない中年サラリーマン、ボブ・マコーネル(クリスチャン・スレーター)は会社で孤立し、年下の上司や同僚にイビられる毎日。いつか彼らに報復してやろうと、会社のデスクに拳銃を隠して機会を狙っていたが、いつも臆病さが仇となって実行するには至らず、やり場のない怒りはランチ中に会社を爆破する妄想をすることでごまかしていた。そんなある日上司に理不尽な言いがかりを付けられ、ついにボブの怒りは我慢の限界に達してしまう。拳銃を手にしたボブだったが、なんと彼よりも先に同じく会社に不満を持っていた同僚のコールマン(デヴィッド・ウェルズ)が発砲を始め、同僚たちを次々と殺し始めた。自分と同じ考えの持ち主がいたことに驚くボブだったが、コールマンに撃たれた同僚の中には、憧れの女性バネッサ(エリシャ・カスバート)がいた。まだ息のあった彼女に止めを刺そうとするコールマンを、ボブは持っていた拳銃で射殺する。
 この一件でボブの生活は一変し、会社では一気に副社長へ昇進、マスコミに大々的に取り上げられたことで街中で英雄扱いされ始めた。しかし一方で命を救ったバネッサは撃たれたことにより全身麻痺になってしまっていた。すべてに絶望した彼女は、動けない自分の自殺の手助けをするようボブに求めてくるのだが…。

解説

 日々溜め込んだストレスを爆発させ大量殺人を犯す寸前に、偶然逆の立場になってしまった男を描いたヒューマン・ドラマ。主演は我らがクリスチャンに、人気海外ドラマ「24 -TWENTY FOUR-」のエリシャ・カスバート、クリスチャンとは「ボビー」に続いての共演となったウィリアム・H・メイシー。ボブの妄想シーンはコミカルだが、内容的には重く、終盤でボブに突きつけられる現実は残酷。決して悪人ではないのだが、世の中への不満からすべてを投げ捨てて破壊的衝動に走り出してしまう主人公の喜怒哀楽が丁寧に描かれていて、観る者の同情を誘う。日本でも大量殺人事件が世間を騒がせている昨今だからこそ、非常に考えさせられてしまう作品。また全身麻痺になったヒロインが自殺を望む展開は、尊厳死についても考えさせられてしまう。とにかく深い作品である。それだけに日本で劇場公開されなかったのは残念の一言。
 クリスチャンは主役の中年サラリーマン、ボブ役。長年クリスチャンを観てきた人はこの作品での彼の姿に驚き、「ついにここまで来てしまったか…」と思ってしまうだろうが、ご安心あれハゲ頭や少し崩れた歯並びなど変貌した顔面は特殊メイク。(実際には頭は剃っていたかもしれないが)この作品を撮影中クリスチャンはプレミアなどに出席した際、この頭を隠すためにタキシードに野球帽という謎な姿で登場していた。その苦労もあってか、今作の熱演はとにかく見事。根暗な中年サラリーマンに成りきっているだけでなく、オドオドした伏目がちな表情は、ある意味「今夜はトーク・ハード」などの過去の出演作品に共通するところがあり懐かしくも思える。

MY RATE (個人的5段階評価) ★★★★:4

 「スリップストリーム」、「チェイス・ヴァニッシャー」と微妙な作品が続いてたが、ようやくここで真打登場!正直、クリスチャン主演作としては十数年ぶりの良作と言っても過言ではない。ただ、個人的に結末が考えうる下から2番目のものが来てしまったのが不満点。せめてもう少し救いのある結末ならば…。

ビデオ・DVD・関連書籍など

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