物質を加熱していくときの物質の温度変化について考えよう。
「加えた熱エネルギーの量と物質の温度の関係」は右下のグラフで表される。
固体を加熱すると,物質粒子は熱エネルギーを得て熱振動が激しくなり,物質の(固体の)温度が上昇する。
固体の温度が上昇して融点に達すると,物質粒子の結合が部分的に切れ始め,融解が始まる。融解が始まると,温度は上昇しなくなり,融解が完了して固体がすべて液体に変わるまで一定の温度(融点)に保たれる。
これは,加えられた熱エネルギーが,固体粒子の結合を切って液体にする(粒子の熱振動が結合を振り切る限度を越える激しさになる)ために使われてしまうために,その変化(融解)が続いている間は(熱エネルギーが加えられ続けているのに)温度が上昇しないのである。
そして融解が完了すると(固体がすべて液体に変わってしまうと),加えられた熱エネルギーによって液体粒子の熱運動が激しくなり,液体の温度が上昇する。液体の温度が上昇して沸点に達すると沸騰が始まり,再び温度の上昇は止まり,沸騰が続いている間,液体の温度は一定の温度(沸点)に保たれる。ここでも,加えられた熱エネルギーが,気化のために使われてしまうために,温度が上昇しないのである。
液体がすべて気体に変わってしまうと,加えられる熱エネルギーによって,今度は気体の温度が上昇していき,熱エネルギーが加えられる限り,温度は無限に上昇する。(加えた熱エネルギーと物質の温度・状態の変化の関係は「ふたつの財布」になぞらえて考えることができる。)
逆に,高温の気体を冷却する(気体粒子の持つ熱エネルギーが放出される)場合を考えよう。これは,先ほどのグラフを逆に(右から左へ)見ていくことになる。(左図−先ほどと同じグラフ−)
高温の気体を冷却すると気体粒子の持つ熱エネルギーが放出され,気体の温度は下がっていく。温度が沸点に達すると凝縮が始まって気体は液体に変化し,凝縮が終わるまで温度は沸点に保たれる。(ここで,すべての気体が液体に変わるのではなく,気体の一部は気体のままで残る。これについては「蒸気圧」の項で学習する)気体粒子は,「気体」であることにより,「液体」の粒子よりも熱エネルギーを多く持っている。熱エネルギーを多く持っているので熱運動が激しいために,粒子間の引力に捕らえられて結合して液体になってしまわないでいられるのである。液体粒子と固体粒子の関係についても同様である。
凝縮が完了すると,今度は液体の温度が下がっていく。温度が融点(凝固点)になると凝固が始まり,凝固が終わるまで温度は凝固点に保たれる。凝固が完了すると,固体の温度が下がっていく。
気体・液体・固体それぞれの温度が下がっていくときは,もちろん熱エネルギーが放出され,物質粒子の持つ熱エネルギーは小さくなっていくが,沸点・凝固点で温度が一定に保たれているときでも,「熱エネルギーの放出」は続いている。凝結に際しては,物質粒子は「気体としての結合状態」から「液体としての結合状態」に変化し,凝固に際しては,「液体としての結合状態」から「固体としての結合状態」に変化するが,これは共に,「より激しい熱振動から,より穏やかな熱振動への変化」であり,それだけ「物質粒子の持つ熱エネルギーが小さくなる変化」なのである。したがって,小さくなった分の熱エネルギーは,物質中から外界へ放出されるのであり,だから,『沸点・凝固点で温度が一定に保たれているときでも,「熱エネルギーの放出」は続いている。』のである。
(高温の物質を冷却するときの熱エネルギーと物質の温度・状態の変化の関係を「ふたつの財布」になぞらえて考えてみよう。)