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2005年02月28日

「生首に聞いてみろ」法月綸太郎

今さら感が漂いますが2005年度版「このミス」国内第1位だそうで(このミステリーがすごい!2005年版)。昨年の「このミス」には目を通していない(というか、ミステリそのものをほとんど読んでいない)から、どういった作品が選ばれているのかを全く知らない。とりあえずおすすめ本を人に尋ねたらこれを差し出されたので早速読んでみた。
法月綸太郎の作品を読むのはものすごく久しぶりで、最後に何を読んでどんな内容であったのかもすっかり忘れている。もっとも、忘れるほど長きにわたって長編の新作が出ていなかったという話もあるにはあるが(笑)

で、ようやく名探偵法月綸太郎が戻ってきたというわけだ。彼のミステリにおける名探偵は、作者の名前を持っている。もちろん作者自身を投影していないわけではないが、作者そのものではない。それは了解しているのだが、個人的に作者(の名前)が主人公となっている話を実はあまり好きじゃない。これはただの偏見というか傾向というかそういうもので、決してそういった物語の全てが嫌いなわけではない。でも、ちょっと抵抗がある。そんな感じ。だから、法月綸太郎を読む時には若干構えてしまう。今回もそうだった。

「地味な話」と言われていた通り、確かに何かを踏み外すようなこともなく、起承転結きっちりとひとつひとつのエピソードを積み上げた堅実なお話だった。

法月綸太郎は、友人の写真展でひとりの美人女子大生と知り合うが、彼女はやはり倫太郎の友人である男の姪であり、著名芸術家の娘であった。ところが復活作に取り組んでいた芸術家が突然病死、その遺作を巡る謎に彼は巻き込まれていく。

今回のテーマは、「名探偵は万能ではない」といった感じですかね? もちろん最終的には事件の解決に辿り着くけれど、そこまでに至る状況下では常に後手後手になっている。依頼主からすれば忸怩たる思いもあるだろうて。けれど、事件をおこすのも人間なら、解決しようとしているのも人間であり、いつだって探偵が全てを守れるスーパーヒーローであるわけもない。そんなことを考えると、今回のお話は非常に人間らしい感じがしてくる。特に何か奇抜なトリックがあるわけでもない(割とあっさり伏線の先が読めてしまったりもする)、後味もあまり良くはない、でも面白かった。続きが知りたくてドキドキするようなものばかりではなく、たまには落ち着いて読める物語も悪くはないかなと。

さて、次の新作はいつかしら(笑)

投稿者 kaori : 23:58 | コメント (0) | トラックバック