MSXの限界と希望 「三国志」光栄(現KOEI)の今に続く金看板。255人の武将、知将、軍師が登場、全58ヶ国の広大な中国大陸制覇を目指す、当時としては超重量級の歴史シミュレーションゲーム。
値段もファミコン一体分の14800円と、超破格。但し、MSX版は若干使用頻度の低いコマンドを削ったため、12800円とやや控え気味であった。史上初、軍師の助言システムという画期的機能を取り入れたゲームでもある。
PC8801、PC9801版を皮切りにX1、FM7等に移植されていったが、これほどのデータ量を持つゲームが、まさかチープなMSXで発売されるとは思いもよらなかった。
上記機種は本体に5インチフロッピーディスク(主に320KB)を保持している事が多く、大容量のドライブに関してもMSXに対して大きなアドバンテージを持っていた。
また、グラフィックに関しても、解像度といい処理速度といい、上記高級機種は極めて強力である。性能に限界の見えるMSXに、果たして「三国志」という超大作は移植可能なのか? 当時多くのMSXユーザーがそう思ったはず。
ちなみに光栄の前作「蒼き狼と白き牝鹿」はカセットテープ版でMSXに移植、発売されたが、これがもう・・・・酷い出来上がり。
高度な内容を32KBのRAMエリアに押し込む事がついに出来ず、典型的な移植の失敗例となっていた。
そしてデータ量に関しては、「三国志」は「蒼き狼」を遥かに上回る。通常の手法ではどう考えても移植不可能と結論づけせざるを得なかった。これを救ったのがメガROMである。ROMカートリッジに、1メガビット(128KB)以上の大容量ROMを使用することによって、巨大なデータを使用可能にする。半導体技術の進歩と価格の下落が生んだ僥倖であった。
これによって容量の件は解決の方策が見つかったのだが、それでも勢力地図の塗り分けや細かいヘックスの戦闘シーンなど、MSXの貧弱なグラフィック機能では再現困難と思われる事ばかり。光栄のMSX開発チームが如何にそれらを解決していったのか。
パッケージ外観。三人の怖い顔。左曹操、中央劉備、右孫権か? 左上にはメガROMのマークが。ちなみに2メガ(256KB)。
付属品。マニュアル、人物列伝、本体ROMカートリッジ、データセーブ用のおまけテープ、年表。
これは他機種版ともそう変わらないオープニングシーン。乱数の初期化で待ち時間を要求する今では考えられない仕様。
シナリオ選択。おお!漢字だ!と驚いた瞬間。MSXではこういう事が驚きになるのです。
武将選択。光栄のMSX開発陣、顔グラの省略は絶対したくなかったらしく、他機種と同じドット数で表現。そのため、他機種なら能力値が一緒に表示されるところ、でっかい顔グラフィックだけで画面が埋めつくされることに。でも、他機種と変わらない武将の表情に、MSXユーザーは喜んだものだった。
他機種版なら勢力地図とコマンド入力画面が同一に出るところ、画面表示能力がチープなMSXは地図とコマンド入力画面を分離式に。これはコマンド入力画面。
そしてこれが勢力地図!他機種版が綺麗に地図を塗り分けしてるのに対し、MSX版の勢力色は数字の周りだけ!
超世の傑、魏武帝様の御尊顔。善玉劉備に対する悪役面バリバリであるが、自分は風格があって嫌いな顔ではなかった。
遼来来、能力値もその勇名に恥じない。正史では「曹仁に次ぐ名声を誇る」と褒められているのだが、演義ベースだと、「曹仁に次ぐ」では悪口になってしまうこの不思議。
中学生当時、大っ嫌いだった蜀漢の昭烈帝。二枚目の主人公顔の上、曹操にタメを張る知力。んなアホな。今では結構好きな武将である。
中学生当時、大っ嫌いだった蜀漢の武郷侯。知力100はともかく、武力72て。今では結構好きな人物ではある。
万能型君主孫権。呉の大帝。君主の能力はスタート時に基本能力から±5でスロットマシン方式で決められるので、運がよければこのように、曹操や劉備を上回るカリスマ性を身に付ける事ができる。
嘘か真か、陸遜の美形説を決定づけたこのルックス。正史にも演義にも、陸遜のルックスに関する表現は乏しい。ちなみにこれ以前の「NHK人形劇三国志」では、陸遜はヒゲ面で底意地の悪そうなおっさん顔である。
これが三国志の売り、軍師の助言!馬鹿な武将に開発をやらせようとすると、ちゃんと「効果がありません」と言ってくれる。ちなみに知力100諸葛亮のアドバイスはまず間違いない。武将の引き抜きには重宝するんだ、この助言が。
戦闘シーンである。MSXの解像度では地形マップの全域を表示出来なかったので、なんと前後左右に画面を切り替えてマップを表現するという荒業を実行。通常ならヘックス数を減らす事も考えたと思うが、これを死守した開発者のMSXに対する心意気は大いに賞賛できる。
自分は友人から借りてプレイしたのだが、借りる事が出来た時は、小躍りして家に帰ってきたものだ。当時から自分は曹操贔屓。史実どおり曹操配下の名臣を集めて、呉や蜀を粉砕して悦に入っていたものである。
現有ソフトは、秋葉で中古品を買ったもの。