新星出版社「スーパーシミュレーション ミッドウェー大空海戦鈴木巌作、相川修一画

 日本製のゲームブックの中には、第二次大戦の戦局シミュレーションをゲームブック化したものも多かった。先に取り上げた西東社でも、その手のゲームブックは数多く存在しており、自分はそのうち、「ミッドウェイ海戦」もののゲームブックを購入した。

 が、まあ、西東社らしいといえばらしい、マスクカードを用いたランダム戦闘ゆえ、指揮に結果が左右されるわけでもなく、内容も物語よりもゲーム性重視と、歴史好きの自分を納得させうるものではなかった。

というわけで、同じテーマを持った別の会社のゲームブックを敢えて購入してみたわけで、それが今回紹介する、新星出版社の「スーパーシミュレーション ミッドウェー大空海戦」。

出版時期は1985年7月という事だから、ゲームブックとしても割と早い時期にあたる。
 


表紙。日本軍で戦うわりには、表紙はアメリカ機をフィーチャーする不思議。
 

ゲームブックの中身


ルールの紹介。ゲームスタート時には70点の持ち点があり、自分の選択肢の成功如何で、加点と減点がある。大敗したとは言え、史実どおりの選択を0点に置くあたり、帝国海軍には手厳しい評価(笑)。


初期の状況説明が入る。帝国海軍の主要提督と、米海軍の提督の紹介が。さらには、作戦第一期の日本軍の版図を示し、持ち点70点でスタート。いやあ、最大版図すげえわ日本。


岐路にはマスクカードやサイコロといったランダム要素は一切なく、登場人物の行動をシンプルに2択ないしは3択くらいで選んで、該当ページにジャンプする。単純だが、選択如何によっては減点どころか即死もありうる場面ばかりなので、慎重にならざるを得ない。


選択肢は、戦術級の重要判断は意外と少なく、操船技術や戦闘行動についての前線兵士に問われるような問題が多い。それで戦局が決定されてしまう展開が結構多発するので、「なんだかなあ」的な感想を抱いてしまうことも。
 


読み物的には、詳細なデータや史実を堅実に駆使してくるので、かなり面白い。イラストもなかなかリアルで迫力がある。山口多聞少将の意見具申。爆装のまま攻撃機を飛ばすか、それとも雷装に切り替えるか。ミッドウェーで有名かつ最重要な局面の選択肢。


バッドエンディングの場合。奮闘むなしく史実どおりのエンディング・・・。山本長官蒼白。宇垣参謀長お冠。凡将もしくは弱将の称号を得てEND。ただ、ここまでゲームオーバーにならずに来れるのも結構難しい。もちろん、最善手を取り続ければ、米海軍に圧勝、名将の称号を得ることも出来る。

このゲームブックの特徴

戦術級の舞台を用意している割には、操艦や操縦、攻撃方法を選ぶなどのちんまい選択肢が多く、「将官になって指揮している!」という感覚が薄いのが残念。しかも、そういう選択肢でミスったときほど、一発即死でゲームオーバーが待っていると言うのがなかなか辛い。

とはいえ、一発即死のときでも、「何故その選択肢がダメなのか」を丁寧に説明してあったり、史実で有名なエピソードも取り上げられていたりするので、理不尽感はそれほどないのではあるが。

読み物としては、当時の戦闘機数や艦艇数の詳細な両軍比較があったり、敵味方ともども詳細な逸話をちゃんと網羅していて完成度がかなり高く、歴史好きにはなかなか面白い仕上がりになっている。各将官のイラストも実際の写真を基にしたリアルなものであり、「南雲中将だ、山口少将だ、山本長官だ」とすぐ分かる。戦闘シーンも迫力アリ。

日本軍完勝に持っていくには、最重要な選択肢が一つ分岐点として存在しているのだが、地味すぎて、「こんなところが分岐点?」と思ってしまうお茶目さがあるのだが(笑)、でもよくよく読むと、ちゃんと意味の分かる選択肢になっている。要は、敵機動部隊を発見できるか否かに最重要課題があるというわけで。

西東社のミッドウェー海戦と比べると、リアルさ、物語としての面白さではこちらの方が上か、と軍配を上げたくなる。
 

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