パソコン界七英雄の一人として 「ディーヴァ」T&Eソフトは、コナミに次ぐMSXソフトの重要なサプライヤーの一つであった。早くは先にも取り上げたハイドライドから、末期に至るまでMSXを見捨てず、自社の最新人気ソフトを、PC88ら高級機種とあまり変わりのないタイミングで、常にフレッシュな状態で移植してくれたありがたいメーカーだった。
カートリッジ内にデータをセーブするバッテリーバックアップを、最初に採用したのも「ハイドライド2」のMSX版。そのT&Eが1987年に送り出した空前にして絶後のスケールを誇るゲームソフト、それが「ディーヴァ」である。
当時の主要パソコン及びゲーム機7機種に対して同時発売を行ったわけだが、何と、全ての機種の主人公が全員違う。しかも各々ストーリーはクロスオーバーしており、主人公達は複雑な人間関係を持っていた。
以前、ゲーム批評のコーナーにも書いたが、対応機種と主人公、ストーリー名は以下のとおりである。PC8801mk2SR 主人公:ルシャナ・パティ ストーリー1「ヴリトラの炎」
FM−77AV 主人公:ア・ミターヴァ ストーリー2「ドゥルガーの記憶」
X1 主人公:アモーガ・シッディ ストーリー3「ニルヴァーナの試練」
MSX 主人公:ラトナ・サンバ ストーリー4「アスラの血流」
MSX2 主人公:アクショー・ビア ストーリー5「ソーマの杯」
ファミコン 主人公:マータリ・シュバン ストーリー6「ナーサティアの玉座」
PC9801 主人公:クリシュナ・シャーク ストーリー7「カリ・ユガの光輝」舞台は宇宙、物語はSFだが、登場人物の名前から察せられるとおり、インド神話をモチーフにしている。例えばFM77AV版の主人公「ア・ミータヴァ」は、日本語に訳せば「阿弥陀如来」、MSX2版の主人公「アクショー・ビア」は日本語に訳せば「阿閃(あしゅく)如来」である。
この7人の英雄が「ディーヴァ」と呼ばれる正義の血でもって、悪しき一族である「アスラ(阿修羅)」を滅ぼす、というのがメインテーマ。われらがMSX版の主人公は、ラトナ・サンバ、X1版の主人公であったアモーガ・シッディ艦隊のエースパイロットである。
主人公達が艦隊を率いて惑星を次々と制圧し、アスラ軍を追い詰める戦略級シミュレーション+惑星攻略戦(シューティングゲーム)。このゲーム、はっきりいって凡作です。惑星経営のシミュレーション、戦艦配置が決め手の詰め将棋のような艦隊戦、そして難易度激辛のシューティングゲーム惑星制圧戦、いずれもバランスが悪く、名作とは到底言いがたい。
しかし、当時としてはとんでもなく面白かったストーリー、そして七機種に渡る物語の巨大なスケール、パスワードで互換性を持たせて他のパソコンに応援に行けるシステム等等、後世に語り継がれる資格は十分有している。移植の問題はやはり、他の機種に比べてMSXの性能が低い、というところだろうか。MSX2を含む他の4機種の性能はかなり高かったから。
しかし、T&E開発陣、「MSXも他機種版と全く同等のゲーム内容を確保しています!」と大見得を切っていた。
ここでは、2003年にボーステックより発売されたWindows用の「ディーヴァクロニクル」を使って、MSXと他機種版の違いを追って行きたい。
MSX版のパッケージ外観。これもメガROM。主人公ラトナ・サンバが銃を持っている絵が。
マニュアル、本体ROMカートリッジ。マニュアルはかなり分厚く、7人の英雄のストーリー詳細が載っていた。
これは2003年発売のディーヴァクロニクル。7機種版全てがWindows上でプレイできる。
全ての機種のベンチマーク、PC8801mk2SR版。ちなみにX1版のグラフィックもこれとほぼ変わらず。
当時最高のグラフィック性能を誇ったFM77AV版。
意外や、FM77AVに次ぐグラフィック性能、MSX2版。MSX2は完全上位互換機なので、MSX2ユーザーはMSX版も遊べた訳だが。
そしてこれがMSX版!意外と健闘してるなグラフィック。戦艦はちっこいけど
各機種から抜粋の英雄達。PC98版のクリシュナ・シャークも追加。
左から、ルシャナ・パティ、ア・ミターバ、アモーガ・シッディ、ラトナ・サンバ、アクショー・ビア、マータリ・シュバン、クリシュナ・シャーク。
ドットのタイリングが美しいPC88版とX1版。総表示色数が8色とは思えない。ややパレットに頼り気味のFM77AV版。ドット絵技術とパレットの融和が美しいMSX2版、白黒が渋いPC98版、もう少し何とかならなかったのかのMSX版、どうしようもないファミコン版。
PC88版の戦略画面。
PC88にファミコンよりマータリ・シュバン艦隊来援。Welcome to PC8801SR!
MSX版戦略画面。まあ星系の描写とかは、そんなにグラフィック能力要求されんからね。
MSXにファミコンよりマータリ・シュバン艦隊来援。Welcome to MSX! しかし、マータリのルックスが違いすぎるわ・・・。
中間色多彩なFM77AV版の惑星制圧シーン。
原色ばっかのMSXの惑星制圧シーンだが、スプライト機能によって動きは滑らか。これがMSXの強み。
MSX2版艦隊戦。多彩な発色を誇るMSX2らしく、戦艦に陰影が付く。
MSX版艦隊戦。一方こちらは全て単色構成の戦艦達。まあ、これでもゲームには何の問題もない訳だが。
ざっと他機種との写真を並列に配置してみたが、T&E開発陣の豪語のとおり、グラフィックにやや質落ちはあるものの、同等の内容を確保している事が分かると思う。ちなみに、ゲーム中の文字は専用に作った字体を仕様している。
先にも言ったが、クロスオーバーしたストーリーはかなり秀逸なものであるので、現代のマシンでリメイクして欲しいなあ・・・・。