このアルバムは、シンプルで味のあるジャケットの雰囲気に魅かれて、何の予備知識もなく衝動買いした一枚。正直ハズレでも仕方ないと思っていたのですが、演奏内容そんな予想を見事に裏切って素晴らしいものでした。やはりジャケットというのはレコードの顔そのものなのですねえ・・・。 ライナーによるとこのLorraine Gellerという女性ピアニスト、1958年に30歳という若さで亡くなっているとのことで、リーダー作もこの一枚のみ(このアルバムも公式録音ではないそうです)。残された録音が少なく、彼女の演奏に触れる機会がごくわずかだというのは非常に残念なことだとは思いますが、その分この一枚の内容は非常に濃く、30分程度の演奏の中で彼女のピアノの魅力が存分に語り尽くされています。 「チャッ・チャッ」と小刻みに跳ねる様でありながら、じっくり聴くとなかなか重厚感のある左手のリズムワークと、コロコロと転がるような右手のメロディーラインのバランスが絶妙。この音源を聴く限り、Bud Powellの影響を色濃く受けているピアニストであることは間違い無さそうですが、ストイックでどこかしら陰のある音色やフレージングの数々は、もはやPowellの模倣という範疇を超え、彼女独自の境地を切り開いているといっても良いと思います。特にマイナー調のスピード感のある楽曲が得意なようで、@EGあたりが聴きどころです。 彼女のリーダー作ではありませんが、夫であったアルトサックス奏者のHerb Gellerとのコラボレーション作“The Gellers”などもなかなか素晴らしい出来で、聴く価値十分。作品数が少ないだけに、「現存する作品をもっと聴いてみたい!」という欲求に駆られるピアニストです。
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