Ove Ingemarsson(オーベ・イングマールソン)はCDを聴いて久々に衝撃を受けたテナー奏者。とにかくその音色とスケールの大きい歌い上げ方が抜群に良いプレイヤーです。一音目を聴いてこれほどぐっときたのは、あのMichael Breckerをして「彼こそ真のテナーマスターだ」と言わしめた鬼才、Gorege Garzoneのサウンドをはじめて聴いたとき以来かもしれません。 Oveをはじめとして、メンバーは全員、スウェーデンで活躍する一線級のミュージシャンたち(ベースの森泰人も北欧を拠点に活動しています)。クラシックでシベリウスなんかを聴いても思うことだけれど、北欧の人の作り出すサウンドは、音の透明度というのが、ほかの地域の音楽とは比べ物にならないほどに高いと感じます。例に漏れずOveの音色にも、冷たく澄み切った空気や、底の見えないほどに深く透明な湖を思わせるような、クールで深遠なイメージがあり、そしてそれに加えて、根底の方には、なんともいえなくダークで重厚な世界観が広がっています。こういう匂いって言うのはNYのミュージシャンとかには無い、独特のものでしょう。テクニックや作曲能力で自己をPRするタイプのミュージシャンも多いですが、そういったもの以前に、音そのものにものすごい説得力のあるというのは演奏者としてはこれ以上ない大きなアドバンテージ。 今回はサイドマンとして参加しているLars Jannsonの活躍も素晴らしいもの。ピアノソロは勿論のことながら、バッキングの一つ一つにも単調なところが全く無く、非常にクリエイティブです。ソロの後ろでのバッキングひとつを聴くだけでも、音の使い方やタイミングなど、その攻めの姿勢が十二分に感じ取れて楽しめる演奏。流石、一部の人の間ではキース・ジャレットと同格とまで評価されるピアニストです。地味ながら森泰人(b)とAnders Kjellberg(ds)の堅実なサポートも見逃せないところ。 過去のスタイルの踏襲とかではなく、「今、現在進行形の、彼らのJAZZ」を見事に表現しきった快作であると思います。クールに熱い北欧JAZZの世界に、皆様もハマッてみませんか?
|
|