まだまだ「ラテン語文法」
――― 9 ―――
§63 間接話法
ここでは疑問文について述べることにする。
" quid facis ? "
君は何をしようとしているのか? (直)
me' roga'tiv quid facerem . 彼は私に、私が、何をしているのかを尋ねた。
(間)
このように間接疑問節は、
動詞を接続法に変換する
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過去完了 |
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となる.このことを上の例文において具体的に示すと次のようになる。
直説法
主文 | " quid facis ? " | " quid fe'cisti' ? " |
me' rogat | quid faciam | quid fe'cerim |
me' roga'vit | quid facerem | quid fe'cissem |
num については、こうである。疑問視を含まない、疑問文は、間接話法において、num によって引き出される(これには否定的な意味合いを要求することはない)。
" vale'sne ? "
達者かね (直説法)
me' roga'vit num vale'rem . 彼は私に達者かねと訊ねた。
§63 間接話法
要求・願望・希求・命令・決意・説得などの概念を伴う動詞のあとには、
・・・(する)ように、の意味を持つ ut
否定は ne' + 接続法(目的の文句)
をもちいる。
monet ut omne's suspicuo'ne's vi'tet .
彼は一切の概念を除くようにと忠告する。
rogo' te' ne'hunc librum lega's.
君がこの本を読まぬようにと私は求める。
cu'ra' ut quam pri'mumid intellegam .
出来るだけ早くそれを私がわかるようにしてくれ。
permi'sit ut proficiscere'mur.
彼は我々が出発することを許した。
口語的に
fac ( ut ) venia's .
来るようにせよ。
cave ( ne' ) venia's .
来ないように<用心>せよ。
§64 主文の動詞が特殊なものでなくても、目的の概念を伴う
ut ( ne' ) の文句が来ることがある。
mi'lite's fortiter pugna've'runt ne' vincere'mur .
兵士たちは我々が負けないようにと勇敢に戦った。
§65 給付の観念を伴う動詞の後では、<・・・でない(である)ように>の心持が伴うために、
ut , ne' の関係が逆になって、 ne' + 接続法 = ・・であることを恐れる。
ne'
non ( または ut ) + 接続法は
・・でないことを恐れる。
timeo' ne' ve'nerit .
彼がきたことを、(来たのではないかと)私は恐れる。
veneor ut tibi possim conce'dere.
私は君に譲ることができないことを(出来ないのではないかと)恐れる。
§66 ut の文句に意図の観念がなく、結果の文句と考えられる場合、その否定は、
ne' を用いずに、 ut no'n となった。これらを導くのは
(1)<起こる>の意味の動詞
accidit ut esset lu'na ple'na .
偶偶満月であった。
e'venit ut no'n sti domi' .
彼は偶々家に居ない。
(2) tam ... ut ( so ... that ) のような、相関句を導く表現。
tam defessus eram ut diu' dormi'verim .
そんなに私は疲れていたので、長いこと眠った。
※この形のものには
tam のほか
ta'lis
そのような
tantus
それほど多くの
tot
それほど多数の
adeo'
そんなに + 動詞(形容詞)
ita
そんなふうに
・・・・・
など、結果 ut をとる。
§66 形容詞の比較級・最上級
形容詞は、男性単数属格の形から
第一ニ変化のとき、 -i' を
第三変化では、
-is を取り去った後に
比較級 -ior ( m , f), -ius ( n )
最上級 -issimus ( m ) , -issima
( f ) , -issimum ( n )
の語尾をつけることによって、比較級、最上級を作る。
altus <高い> 属格
alt-i' --> alt-
altior , altius
altissimus , -a , -um
fortis <強い> 属格 fort-is
--> fort-
fortior , fortius
fortissimus , -a , -um
pru'dens <先見の明がある>
属格 pru'dent-is -->
pru'dent-
pru'dentior , pru'dentius
pru'dentissimus , -a , -um
※高校英語文法で習う「ラテン語比較級」
の意味が見えてきます。
のようにであるが、若干の形容詞は不規則に変化する。
原級 | 比較級 | 最上級 |
bonus 良い | melior , -ius | optimus , -a , -um |
malus 悪い | pe'ior , -ius | pessimus , -a , -um |
magnus 大きい | ma'ior , -ius | maximus , -a , -um |
parvus 小さい | minor , minus | minimus , -a , -um |
multus ( sg ) 多量の
multi' ( pl ) 多数の |
plu's ( n)
plu're's , plu'ra |
plu'rimus , -a , -um
plu'rimi' , -ae , -a |
・・・・・・・・ |
などがそうである。
§67 比較級・最上級の変化(優等)
単数 | 複数 | |||
男・女 | 中 | 男・女 | 中 | |
主・呼 | alt-ior | alt-ius | alt-io're's | alt-io'ra |
属 | alt-io'ris | alt-io'ris | alt-io'rum | alt-io'rum |
与 | alt-io'ri' | alt-io'ri' | alt-io'ribus | alt-io'ribus |
対 | alt-io'rem | alt-ius | alt-io're'es | alt-io'ra |
奪 | alt-io're ,
-iori' の形もある |
alt-io're | alt-io'ribus | alt-io'ribus |
§68 劣等比較級・劣等最上級の作り方
英語で言う
less + 原級
the less + 原級
にあたる表現を、劣等比較級と言います。厳密には上の比較級・最上級は
優等比較級・優等最上級と言えます。
ラテン語では
比較級 + minus + 原級
最上級 + minime' + 原級
であらわされます。
あまりに・・・すぎる
普通より・・・だ
・・・
の表現を見ると、
senectu's est na'tu'ra' loqua'cior.
老年は本来普通より饒舌である。
poe'mata Vergilii' et Hora'tii' pulcherrima sunt.
ウェルギリウスとホラーディウスの詩は非常に美しい。
英語の than の表現は、
(1)
quam
比較されるものの二つの核が等しいことが要請される。
(2)
奪格を用いる方法:「から」、「より」
(1)で比較されるものが、主格・対格の場合に限る。
Caesar minor est quam Pompe'ius.
(1)
-----
Pompeio'. (2)
カエサルは、ポンペイウスより年少である。
ami'citia melle dulcior
蜜より甘き友情
(2)
opinio'ne ( e'ius ) ma'or
彼の考えているより大きい
(2)
flu'men altius est quam la'tius.
河は広いというより、深い
(1)
quingenta's na've's habeo' .
私は500せき以上の{たらずの}船を持っている。
§69 差異の奪格
tribus anni's maior ( minor ) na'tu' sum quam
Iu'lius .
私はユーリウスより三才年長(年下)である。
※ na'tus , -u's m . :生まれ、の単数奪格(第四変化)。
§70 比較の度合いを強める
比較級には
multo'
最上級には
longe'
を用いるのが普通である.
multo' pulchrior
はるかにより美しい
oppidum longe' maximum
はるかに大きな町
§71 副詞の比較級・最上級
比較級・・・形容詞の比較級・中性・単数・対格
最上級・・・形容詞の最上級・男性・単数・属格から、 -i'
を取り去ったあとに、 -e' をつけた形
ca're' 親しく
形容詞は ca'rus |
比較級 | ca'rius |
最上級 | ca'rissime' | |
breviter 短く
形容詞は brevis |
比較級 | brevius |
最上級 | brevissime' |
不規則なものがあってーーー
原級 形容詞 比較級 最上級
bene よく
bonus melius optime'
male 悪く
malus pe'ius pessime'
multum 多く、多大に
multus plu's plu'rimum
parum 少なく
paulus minus minime'
※ minime' は「すこしも」などの
否定の返事に用いられることがある。
§72 属格の用法
(1)配分的属格:次の語は、<・・・のうちの>をとり、中性単数として、主格・対格にのみ、用いられる。
satis
enough
plu's
more
minus
less
nimis
too much
parum
too little
multum
much
quantum how
much
tantum
so
much
quid
what
nihil
nothing
vix satis cibi' habe'mus .
我々は殆ど十分な食料を持っていない。
quantum pecu'niae reliquum est?
金はどれほど残っているか?
quid novi' affers?
なにかニュースを持ってきたか?
(2)評価の属格、漠然たる評価に対して、次のような構文を取る。
aestimo' + 評価の対象( acc ) + 評価の属格
facio'
同上
hono'rem magni' aestima'bat .
彼は栄誉ということを、高く評価していた。
o'tium plu'ris quam di'vitia's facie'ba's .
君は富より閑暇をより高く評価していた。
こうした評価の属格に立つ形容詞は
magni'
parvi'
tanti'
nihili'
quanti'
plu'rimi'
minimi'
no'n flocci'
など。
これらは本当は地格であったのだけれど、属格と間違えられたために、
plu'ris
mino'ris
も加えられることになった。
ー―ー―ー―ー―ー―ー―ー―ー―ー―ー―ー―ー
§73 関係詞によって導かれる文句がもし目的の観念を伴うならば、その文句中の定動詞は接続法に置かれる。
mittitur mi'les qui' loci' na'tu'ram perspiciat
.
その土地の性質を調べるための(に)、兵士が送られる。
scri'be'bat o'ra'tio'ne's qua's alii' di'cerent
.
他人が述べるための演説を彼は書いていた。
§74 接続法には主観の影が落ちるので、関係詞によって用いられる文句に用いると、事実そのものでなく、一度話者の心の中で一般化された事態を述べることになる。「ような」という訳し方に注意。
multa di'cunt quae vix intellegam .
彼らは私が到底理解できないようなことをたくさん言う。
sunt qui' id nesciant
そのことを知らないような人たちがいる。
§75 接続法には主観の影が落ちるので、一人称複数に用いられて、
let
us になることがある。
ho's latro'ne's interficia'mus .
これらの泥棒を殺そうではないか。
ita vi'vam .
斯くわわが生きることを。
valeant , valeant ci've's mei' ; sint incolume's
!
我が市民たちよ、さらばさらば、無事息災であれ。
のような願望、さらに
sit fu'r , at bonus est ,
もし泥棒であれ、良い男だ.
のように、「もし・・・であれ」をあらわしたりした.この否定には、
ne' がもちいられ、
ne' difficilia opte'mus .
難しいことはのぞまぬようにしましょう。
ne' sit summum malum dolor , malum certe' est
.
苦痛はよし最大の悪でないにせよ、悪は確かに悪だ。
§76 可能性を考えるときの接続法(否定は non )
cre'da's eo's victo's .
あなたは彼らが敗けたと思うかもしれない。
quid agam?
私は何をしたら良いのだ?
quid no'n di'cerem?
私が何をいえなかったというのだ?
§77 婉曲な volo' ( no'lo'
) の意味に用いられる、velim ( 否定は no'lim )
ho'c velim pro'ba're omnibus .
このことをみなに立証してみたいと思うのですが。
※ velim + inf.
tu' velim saepe ad no's scri'ba's .
あなたがしばしば私たちに便りをしてくださればよいのだが。
※ velim + 接続法・現在・二人称
§78 禁止は ne' + 接続法・完了・ニ人称、を用いても作られた
ne' transi'eris illud flu'men .
その河を渡らないように。
―ー―ー―ー―ー―ー―ー―ー―ー―ー―ー―ー―ー―ー
§79 quo'minus と qui'n
妨害・拒絶の観念を伴う動詞の後では、
ne' あるいは quo'minus + 接続法
※ この種の動詞には
de'terreo' 脅かして・・・させない
impedio' 妨げる
pro'hibeo' 禁ずる
obsto' 妨害する
resisto' 抵抗する
retineo' 束縛する
teneo' 引き止める
などがある。また、主文が否定の動詞の時には
ne' はもちいられない。
が用いられる。
nihil impedit quo'minus id facere
possi'mus .
何ものも我々がそれをするのを妨げない。
sententiam ne' di'ceret recu'sa'vit
.
彼は意見を言うことを拒絶した。
次に qui'n + 接続法
(1)
妨害・拒絶や疑念を伴う動詞が否定におかれている場合や、これに類する表現の後に用いられる。
no'n recu'sat quin iu'dice's .
君が裁くことに彼は反対していない。
praeteri're no'n potui' qui'n scri'berem
ad te' .
君に便りすることを、私はなおざりにはできなかった。
paulum a'fuit quin eum interficeret
.
一寸のところで彼を殺しそこなった。
facere no'n possum qui'n coti'die'
ad te' mittam littera's .
毎日君に手紙を書かないではいられない。
no'n dubitat ( no'n dubium est ) qui'n
venia's .
君が来ることを彼は疑わぬ(に疑いはない)。
nihil causae est qui'n aem .
私が行かぬ理由はない。
(2)
qui'n = qui' no'n (一般的な否定語を先行詞とする)
ne'mo' est tam stultus qui'n id faciat
.
それをしないような愚か者は誰もいない。
numquam me' vide'bat qui'n pecu'niam
a' me' peteret .
彼は私に会えば、必ず私から金を請求したものだ。