元素には,陽性・陰性という性質がありました。
陽性‥‥電子を放出して陽イオンになろうとする性質
陰性‥‥電子を取り入れて陰イオンになろうとする性質
でしたね。
陽性は,周期表の左下ほど強く(もっとも強いのは Fr ),
陰性は,18族を除いて,周期表の右上ほど強い(同じく F)
のでした。
異なる元素の原子が共有結合した場合,陰性の強い方の原子が,
共有電子対を自分の方に強く引きつける,という現象が起こります。
共有結合をしている原子が,共有電子対を引きつける強さを数値で表したもの
を電気陰性度といいます。
当然,元素の陰性が強いほど,電気陰性度は大きいわけです。
いくつかの元素について,その大きさの順を示しておきましょう。
F | O | N | Cl | Br | C | S | I | H | B | Be | Li |
4.0 | 3.5 | 3.0 | 3.0 | 2.8 | 2.5 | 2.5 | 2.5 | 2.1 | 2.0 | 1.5 | 1.0 |
例えば,塩化水素 HCl を考えましょう。
電気陰性度は,H 2.1,Cl 3.0 です。
Cl>H ですから,共有電子対は,Cl原子の方へ強く引きつけられます。
H :Cl
そうすると,Cl原子は電子密度が大きくなるので−の電気を帯び,
H原子は電子密度が小さくなるので,+の電気を帯びることになりますね。
ファンデルワールス力のところで考えたδ+とδ−は,
瞬間的に生じる電子の偏りによる,「瞬間的な+−」だったのですが
HClの場合の共有電子対の偏りは,瞬間的なものではなく,
「常にHは+,Clは−」の電気を帯びているのです。