メキシコ転戦中の三船雄姿

価値ある男1961メキシコ
 巻頭言。たいへん貴重なフィルムの上映に全国から映画ファンが集まり、収容人員310の大ホールはほぼ満員でござった。開場が上映15分前、ながいこと高齢者を並ばせるなど、フィルムセンターのお役所仕事が気になったが、プリントも良好。全盛期のミフネの演技は、さすがに見応えがあった。御大はやはりラテン系の顔であることを再確認、メキシコ人たちに混じって全然違和感がない。

製作、監督、脚本:イスマエルロドリゲス 脚本:V・オローナ 共演:コロンバ・ドミンゲス、F・シルベストレ、A・アギラール 


          ストーリーの紹介:

 アニマス・トルハーノ(三船敏郎)は貧しい農夫。働き者の女房(C・ドミンゲス)に子供の世話と畑を任せっきり、自分は酒と博打の日々を送る。祝祭で決められる地域の富裕な名士=マヨルドーモに選ばれるのがこの男の宿願。

 しかし神頼みがモットーで、女房の残した銀貨を片手に小博打にうつつを抜かす酒びたりの怠け者には、とうてい運は廻ってこなかった。女房の哀願に耳を貸し、珍しく製酒工場で働くアニマスだったが、工場主の息子が自分の娘に手を付けたのを見て、たちまち鍬を持ち出して大立ち回り。町の留置場に送られる。そこでも出獄する受刑者が磁石を拝んでいたら運が向いてきたというのに騙され、磁石と自分の毛布を交換。今まで拝んでいたマリア像を引き吊り降ろして、磁石を拝むアニマスであった。一方、アニマス一家はけなげに働いて金を稼ぐ。しかしその金も、出所したアニマスが持っていってしまう。
 たまに金を掴むことがあっても、その金は博打か、娼婦カテリーナに巻き上げられるかであった。遂に悪魔に魂を売ったと宣言して、怪しげな黒魔術の儀式を始めるアニマスだったが、結果は飼っていた鶏を騙し取られただけであった。女房の苦労は絶えない。

 アニマスの娘がつくった赤子を引き取りにやってきた工場主が、慰謝料を受け取れと言ってきた。一生かかっても拝めない大金である。その金でマヨルドーモになろうとするアニマス。司祭は肩書によってアニマスが成長するかどうか変化を見たいと、彼をマヨルドーモに選ぶ。
 祭りの日、着飾ったアニマス一家が誇らしく町を歩く。しかし金持ちに孫を売りつけて、マヨルドーモになったと人々は彼を嘲笑するのだった。ショックを受けるアニマス。そしてアニマスの金目当てに再び近づいてきたカテリーナをアニマスの女房が刺してしまう。アニマスはようやく自分の愚かさに気づいて、女房の代わりに警察に自首するのだった。


解説:

 この映画の主人公アニマス・トルハーノは、貧困・無知・飲酒・賭博・神頼み、そして楽天的な陽気さ・・・といったラテンアメリカ世界の典型的なキャラクターを体現した存在。
 それを日本人のミフネが演じるというのは、なんとも奇抜なアイデアだが、ミフネ御大は各地の映画祭で主演男優賞受賞の名演技でそれに答えている。
 他のキャラクターでは、アニマスの女房、その夫に献身的に仕える良妻賢母ぶりが日本の古い母親像に通じるものがあって興味深い。父権社会に見えて、じつは母系社会というこの世界の構造をかいま見せる。
 製酒工場の工場主が完全に白人だったりするが、やはり支配者階級は代々入植者の白人なのだろうか。メスカリ酒(?)の原始的な製造過程、最近はファーストフードでお馴染みになったタコスをしょっちゅう食べる現地風俗の描写もたいへん興味深い。
 愚かしくも哀しく美しい農夫を演じるミフネの演技は絶賛され、作品は米アカデミー外国作品賞にノミネートされた。ガブリエルフィゲロアのカメラによるモノクロ映像も特筆。脚本、製作、監督をイスマエルロドリゲスが担当しているが、開発途上国の映画と高をくくると、完成度の高さに驚かされる。

マヨルドーモとは?

 もしかしてMajordomoのことではないか?有名なMLサーバ。辞書を引くと管理人の意味らしいが・・・・・スペルがクレジットに表記されるのを見逃したので、確かなことはちょっと判らない。劇中では、ある祭りの期間に選ばれる土地の富裕者・名士の意味で使われている。
 ミフネ御大はそれに選ばれることに執念を燃やすが、なんだかメーリングリスト開設を図るウエブマスターみたいで笑えるなあ。

吹き替え?

 スペイン語のセリフを全部覚えたという話が追悼本に載っていたが、今回上映されたプリントはどうも吹き替えっぽい印象。あの特徴あるフンと鼻を鳴らす声なんかは、ミフネ本人のようだったが・・・・このあたり詳細不明??情報乞う。

原作小説

 ラテンアメリカ社会を風刺・活写した興味深い内容なので、ベストセラーになったという原作小説(R.Bリバス)を探したが、翻訳版が出版されているかどうかも不明。情報乞う。


         

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