大忠臣蔵

NET放映1971.1.5〜12.28全52回

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 期待の松竹ホームドラマチャンネルにて、いよいよ放送開始。三船プロが総力を挙げた「大忠臣蔵」。

 映画、演劇で忠臣蔵はドル箱的存在。数々のオールスター映画が製作されてきたが、東宝は東宝、大映は大映の映画会社限定オールスターに過ぎなかった。東宝、東映、新東宝、日活、歌舞伎界と、あらゆる層からスターを募ったこのTV作品こそ、真のオールスター作品と言えるかもしれない。では第一回出演者からキャストを紹介しましょうか(放送が進むに従って、順次内容追加の予定)。

赤穂藩士・家族    
大石内蔵助 三船敏郎  この頃のミフネは男振が充実しています。シブイの一言です。東軍流居合を使う剣豪の大石という設定で、吉良の密偵は大根のように斬られる。
浅野内匠頭 尾上菊之助  この年の十一月にお竜さんこと藤純子(現富司純子)と婚約発表。任侠映画ファンは涙にむせんだ。貴公子然とした容姿はまず順当なキャスティングか。
堀部安兵衛 渡哲也  まだ日活が健在だった。第一回はこの人の殺陣から始まるが、刃物突きつけて「やめたほうがいいぞ」というところは、まるきり無頼シリーズの人斬り五郎である。ちょっと殺陣が拙い。江戸急進派の中心人物。
おこう 赤座美代子  安兵衛の妻。
大石りく 司葉子  東宝の上品なお姫さま。「或る剣豪の生涯」など映画での共演作も多い。
近松勘六 工藤堅太郎  吉田忠左衛門の甥。全財産を郎党に分配して、山科へ馳せ参じた熱血漢。
高田郡兵衛 田村高廣  策略家で冷徹な郡兵衛という設定。妹おその(真屋順子)を吉良の寝所に忍ばせる。硬骨漢だが、自らの策略に溺れて、結局妹夫婦を犠牲にしてしまう。同志への追求をかわすため、第22回で脱落。
島弥助 田村亮  田村三兄弟揃い踏みだが、田村亮さんは第20回だけで退場。郡兵衛の妹おそのをめとって幸福に暮らしていたが、その生活は郡兵衛の強引な術策の犠牲になる。
三村次郎左衛門 左右田一平  軽輩の武士でひとり残された愛児を親戚に預けて、同士に馳せ参じた。神崎与五郎の親友で元台所方。
神崎与五郎 中丸忠雄  第九回「大評定」で登場。拾ってくれた大石に横目として忠義を尽くしてきた。凄腕の隠密として大活躍。目の悪い愛人(小林千登勢)を気遣う優しい面も見せる。
原惣右衛門 香川良介  赤穂への急使第二便。千恵蔵プロで活躍した大ベテラン。
大石瀬左衛門 三上真一郎  同じく赤穂への急使第二便。東宝青春映画で活躍したあと、「仁義なき戦い」などで実録系ヤクザをこってりと演じた。
吉田忠左衛門 中村伸郎  出ました大学教授俳優。大石と同じ山鹿素行門下で浪士達の重鎮。ずいぶん知的な忠左衛門だ。
磯貝十郎左衛門 長谷川明男  TV時代劇のゲスト常連といっていいだろう。珍しくも赤穂浪士役という晴舞台。
矢頭右衛門七 田村正和  「新吾十番勝負」が1966年、この「大忠臣蔵」が1970年、大ブレイクの「眠狂四郎」が1972年で、いわばブレイク寸前といったところか。最近中年の味が出てきたと思ったら、もう六十近いのである。不思議な役者さんだ。
矢頭長助 加藤嘉  息子右衛門七と対立する父。#31で病没、あとを右衛門七に託す。
大石無人 辰巳柳太郎  異変を聞いて、まっさきに赤穂城下に馳せ参じる大石一族の重鎮(#8)。古武士の風格をもつ剣の達人。
大石三平 竜崎勝  無人の次男でこれも剣の達人。吉良方、上杉方からの破壊工作、大石暗殺計画に対抗して動く。
小野寺十内 伴淳三郎  この配役もしぶい。「飢餓海峡」のようなシリアス演技。
大高源五 御木本伸介  俳人にして、無敵の剣客という設定。#44で山田宗匠(岡田英次)門下に入門、討ち入りの時期を探る。
前原伊助 若林豪  #15で登場する。赤穂藩随一の槍の使い手。米屋を装って、吉良家内情を探る(#41)。
赤埴源蔵 フランキー堺  この方も名優という呼称がふさわしい。これ一本というと「幕末太陽伝」かな。
茅野和助 島田順司  ご存知沖田総司役者。竹林唯七とコンビで活躍することが多い。女商人のおたか(園千雅子)と恋仲。
竹林唯七 砂塚秀夫  幇間芸の第一人者。レコードも出している。熱海の色街で育ったという。TV時代劇では「俺はども安」で主演も務めたことがある。映画でもたしか主演作品あり。最近はTV埼玉のローカルCMで見かける。岡本喜八監督作品での好演が印象深い。
阿久里 佐久間良子  大作「風林火山」で由布姫を演じた。東映を代表する美人女優。
大野九郎兵衛 伊藤雄之助(!)  これはハマリ役か。かなり年輩の九郎兵衛という役作りだ。
堀部弥兵衛 有島一郎  気骨ある老人を演じて出色。
不破数右衛門 新克利  吉良のスパイを斬って刃傷事件の一因を作る。
岡野九十郎 中村嘉葎雄  飄々としたなかに時折鋭い才知を見せる。鮎川いずみ扮する大工の娘と恋仲になり、吉良家の絵図面もしっかりGET。
岡島八十右衛門 河原崎長一郎  内蔵助より命じられて残務整理を行う。この俳優さんも血筋か、マゲモノが似合う。#42で槍の名人俵星玄蕃(勝新太郎)に弟子入り。
岡野金右衛門 浜村純  九十郎の父。バイプレイヤーとして名物的存在であった。
片岡源五右衛門 江原真二郎  この役も順当なところか。江原真二郎はどちらかというと東映現代劇の印象が強い。
浅野大学 河原崎建三  死神こと河原崎建三はご舎弟大学様を演じる。小人物という役づくり。
奥田孫太夫 河野秋武  邦画全盛期の名バイプレイヤー。武名が高い年輩浪士を演じる。
萱野三平 石坂浩二  第25話「悲恋お軽三平 その一」第26話「〃その二」。最後は切腹して果てる。 
お軽 山本陽子  元赤穂城の腰元、三平と心中する。
勝田新左衛門 寺田農  江戸急進派のひとり。曲者役者が今回は直情径行の若武者を演じる。江戸から大石を説得に山科へやってくるが、逆に説得されて大石のもとに居着く。飲み屋の看板娘おしの(中野良子)と恋仲。
大石主税 長澄修  弱冠21才で大役主税を演じる長澄修は劇団四季の研究生。NHK大河ドラマ「樅の木は残った」にも出演している。
早水藤左衛門 和崎俊哉  赤穂への急使第一便。吉良領内で激高した領民に取り囲まれるが・・・演じる和崎俊哉サンは、ミラーマンなどで特撮ファンおなじみのアクターか。最近はOV版「魔界転生」柳生但馬守役でお見かけした。
寺坂吉右衛門 小林昭二  吉田忠左衛門組下の足軽で、唯一の生き残り。身分が低いことを考慮され、また大石から使命を託されたことで、独り泉岳寺から立ち去った。演じるは、「ウルトラマン」「怪奇大作戦」出演で知られる小林昭二。
富森助右衛門 石田太郎  母から渡された白無垢を着て戦った浪士。俳句にも優れ、号は春帆。演じる石田太郎は故小池朝雄に代わってコロンボの吹き替えで脚光。
間十次郎 蜷川幸雄  名演出家の若き日の意外な姿。ちょっと生硬な演技がご愛嬌。吉良上野介に一番槍をつけたことで知られる。
     
     
     
     
     
     
小山田庄左衛門 中山仁  江戸詰めだった浪士で、名うての遊び人。労咳を煩い、討ち入りを焦る。鳥居利右衛門の娘おせつ(梓英子)と恋に落ちて脱盟。父親一閑(河津清三郎)は切腹(史実では討ち入り成功後、息子が参加していなかったことを知り、落胆のあまり切腹)。
橋本平左衛門 大出俊  直情径行の若者で、哀れな遊女お初(二木てるみ)に入れあげてしまう。丸木七之介の罠に落ち脱盟を余儀なくされる。お初を斬り、切腹して果てる。名演技。
毛利小平太 高橋悦史  公金を横領したとの汚名を着て赤穂藩を脱藩、じつは隠密として各地の情勢を探っていた。討ち入りのための諜報活動に活躍したが、かつての許嫁・志乃(中村玉緒)の夫(林成年)を訳あって斬り、同志から脱落。最後の脱落者となる。いつもながら強引な設定だが、この討ち入り直前の不自然な脱落には実際謎が多い。
     
     
     
吉良・上杉関係    
吉良上野介 市川中車→
市川小太夫
 撮影中の六月に急死、代役に実弟の市川小太夫(#47より)。この演技は名演と名高いようだ。#47では市川小太夫が冒頭、亡兄に代わっての役の引継ぎを見事な口上で述べる。
千坂兵部 丹波哲郎  第六回「悲報赤穂へ」から登場。関西方面の再放送で見た記憶では、この物語のもう一方の主役といえる位置づけ。彼の目的はあくまでも上杉十五万石の守護。そのためには、時には大石とも手を組むこともある(#21「女間者」)。
大須賀治部右衛門 睦五郎  千坂兵部の片腕。性急なところをよく千坂にたしなめられる。
松原多仲 神田隆  吉良家用人。清水一学を呼び戻したり、上野介に奥女中を世話したり、仕事は庶務担当のようだ。
上杉綱憲 天田俊明  吉良の実子で上杉十五万石領主。
上杉吉憲 シャア=アズナブル(池田秀一)  綱憲の長男で上杉十五万石の若君。なぜか父親や祖父・上野介より千坂兵部(丹波哲郎)と昵懇の仲で、米沢藩取り潰しの陰謀に怒り、米沢から急遽江戸入りする。
清水一学 天知茂  第六回から登場。吉良領内で激高した領民に取り囲まれた早水を助ける。二天一流の奥義を究めた剣客。
 硬骨漢で吉良家をいちど浪人するが、そのとき赤穂浪人達の世話になり、堀部弥兵衛の媒酌で吉良家国家老の娘おせい(長谷川峯子)と婚姻。安兵衛とは親友同志となるが、一学が吉良家に再就職してふたりは敵味方に・・・それからも立場を超えて、赤穂浪士の窮地をたびたび救う。
小林平八郎 芦田伸介  史上名高い吉良家の忠臣。上野介の哀願に負け、上杉から吉良家に出向するという設定。
鳥居利右衛門 大友柳太朗  林崎流居合の達人で、綱憲が上杉を継いだときに吉良家からついてきた用人。愛娘(梓英子)のために主君に不利益な紹介状を書き、死に場所を求めて本所松坂町の吉良邸警護を志願する。
     
     
     
     
公儀    
柳沢吉保 神山繁  これも順当なキャスティングか。権力者を憎々しく演じている。腰元にストリップを演じさせて愉しむなど悪趣味助平な面も見せる(笑)。この期に米沢藩も騒動に巻き込み、一挙に取り潰しを図る。
柳生備前守俊方 仲谷昇  こんなキャラクターが出てくると、いよいよ子連れ狼とのバッティングが気になる(笑)。貴公子然とした柳生総帥。
お蘭 上月晃  お約束の女武芸者。大石に惚れるが、千坂兵部にも懸想しているようだ。気の多い女柳生である。しかし上役の加倉井林蔵には頭が上がらないようだ。
加倉井林蔵 高松英郎  公儀隠密取締。柳生の忍術使い。お蘭の上司。非情冷酷ひとすじかと思いきや、天野屋利兵衛の孫への拷問を押しとどめるなど、一個の武士として気骨・品格のあるところも見せる。
丸木七之介 千波丈太郎  林蔵配下、刺客群の指揮など現場の責任者で#21より登場。部下の失敗を一度は許すなど、なかなか器量のあるところも見せる(#30)。
     
兎助 露口茂  シブイ役作りで密偵を演じる。お蘭に岡惚れしている。→16話、任務失敗のお蘭を庇って、加倉井林蔵(高松英郎)に斬られる。
与助 上野山功一  密偵。露口茂の後任のようだ。もみあげを頬かむりで隠すなどして暗躍。
     
     
綱吉 高橋昌也  五代将軍。
松平紀伊守 佐藤慶  京都所司代。内蔵助の動向を探る。柳生の画策に怒り、もう協力はせぬと言い放つ(#35)。
建部政宇 加藤武  伏見奉行。吉良上野介の縁者であり、柳沢からの指令で大石を見張る。
町人・第三者    
夕霧 池内淳子  伏見撞木町の揚屋での大石のお相手。気のせいか化粧のりが悪い。新東宝の大部屋から昼メロで一発あてて、瞬く間にスターダムにのし上がった強運の演技派女優。糠味噌くさい役柄から悪女までなんでもござれ。
奈良屋茂左衛門 三島雅夫  この名優がこの時点で健在であったのは嬉しい。顔見せ。
天野屋利兵衛 中村翫右衛門  商売抜きで大石に協力する商人。町方の厳しい拷問に耐え抜く気骨を見せる(#37)。
和尚 小杉勇  伝説的な戦前の大俳優。大石に参禅を勧める(#32)。
松吉 堺正章  泥棒。忍び道具と武器の運搬に一役買うことになる。
畳職人 コント55号  コメディーリリーフ。しかしこの頃はスゴイ売れっ子だったはずだが・・・良くスケジュールが空いたもんだ。
脇坂淡路守 中村錦之助  やっぱり出てきましたか、このあたりの配役かと思ったが。刃傷事件の際には、紋服に血が付いたといいがかりをつけ流血負傷の吉良を打擲するなどやりたい放題。まだこの頃は芸名が萬屋になっていない。
兼康祐元 曾我廼屋明蝶  「本郷も兼康までは江戸のうち」とうたわれた有名な小間物屋。赤い歯磨き粉と堀部安兵衛の揮毫したひらかなずくめの看板が評判となり、非常に繁盛したという。祐元はその歯磨きを発明した町医者だが、劇中では危険なスパイ行為のため命を落とす。
 安兵衛の書いた看板は、泉岳寺に現存するらしい。
立花左近 先代松本幸四郎  大石が偽名を使った当の本人。腹芸で大石の人物を見抜き、わざと見逃す。これもゲスト大物の役どころだ。先代幸四郎は岡本喜八監督「侍」では、ミフネ御大となんと親子役で共演している。
俵星玄蕃 勝新太郎  #42で登場、武家社会を嫌うアウトロー風味たっぷりの玄蕃。千坂に大石暗殺を依頼されるが、大石の人物に魅せられ侍を捨てる。
多門伝八郎 中村竹弥  刃傷の浅野内匠頭を取り調べる(#5)。顔見せ程度。
堀内源太左衛門 平田昭彦  安兵衛の剣の師匠。討ち入りまえの安兵衛と磯貝に、野太刀造りなる新兵器をプレゼント。使い方を実演してみせたうえに、かげながら浪士たちへの助勢を買って出る(#50)。東宝系の俳優は中丸忠雄といい、優遇されているようだ。
久兵衛 桂小金治  討ち入り前線基地となる蕎麦屋主人。腕はいいがへそ曲がりの頑固者。浪士たちの意気に感じてこの仕事を引き受ける(#41)。
お紋 京塚昌子  久兵衛の女房、頑固者の久兵衛も頭があがらない。肝っ玉かあさん。
細井広沢 原保美  堀部安兵衛の友人で柳沢家に仕える儒者。
四方庵山田宗偏(ヘンは当て字) 岡田英次  吉良上野介と昵懇の茶人。
千代 十朱幸代  山田の養女でじつは吉良上野介の実子。大高源五(御木本伸介)と恋仲になり、茶会の日取りを知らせる。
堀内伝右衛門 志村喬  細川家で義士の世話係りを務めた武士。実直な持ち味が生きる。
公弁法親王 東千代之介  後西天皇第六皇子にして、上野寛永寺と日光輪王寺の門跡を兼ねる。綱吉に義士たちの処刑を助言する。
     
     
     
     
     
     
     
     
語り 小山田宗徳  プリズナーbUの吹き替えで有名。

 キャストよりもスタッフよりも、特筆したいのは音楽担当の富田勲氏。全盛期の氏の素晴らしい音楽が全編に流れる。サントラ盤など出てくれると嬉しいのだが・・・テーマ曲は大傑作。ミフネ御大の姿も凛々しく、これは来年の大河ドラマが逆立ちしても敵わないかな?

 第一回から製塩の秘法を巡る柳沢吉保ー吉良上野介ラインと赤穂の軋轢を描いて、最近の忠臣蔵トレンドである製塩因果説を強調している。かなり近代的な話になっているのは、このTVドラマあたりからかもしれない。不破数右衛門の出奔も製塩法を探る隠密を斬ったためということになっている。頭を低くして製塩法を伺いに来た吉良の使者を、大野九郎兵衛が独断で門前払いしてしまい、結果吉良の怒りを買うという描写も面白い。頑迷なふたりの老人がことの起こりというのは、お茶の間の不興を買うかもしれないが。

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