超警告。CLANNADの隠しシナリオをクリアしていない人は
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このお話は、史上希にみるすさまじいまでのネタバレ前提で書いてあります。

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「なにかすごい久し振りな気がする……」
「作者が忙しいからな。もう少し経てば少し楽になるらしいが」」









































































































  

  


「おとーさん、今日は暇?」
 来年の春には大学二年生になる汐がそう訊いてきたのは、12月24日のクリスマスイブの朝、朝食を終えたときのことだった。
「暇って言えば暇だが……」
 特に予定は無いのでそう答えると、汐は良かったとばかりに小さく息をついて、
「良かった。それじゃ、一緒に行きたいところがあるんだけど……いい?」
「クリスマス公演か?」
「そっちは『行きたい』じゃなくて『連れて行く』だから」
「だよな」
 些か物騒なフレーズであったが、まぁいいだろう。汐が引退したとは言え、渚が作り、一度中断しながらも受け継がれてきた演劇部だ。
 それに、今の演劇部部長は俺の知り合いでもある。興味がない訳がない。
「で、何処に行きたいんだ?」
「あ、うん……」
 そこにきて、汐はちょっとだけ言葉を濁した。そして少し照れた様子で、
「えっとね……海」
「……海?」



『そして、渚に還る』



 やっぱりというか何というか、近場とは言え冬の海には人が少なかった。
 もっとも今日はクリスマスイブとあって、カップルらしき男女が、砂浜のあちこちに、ある程度の距離を置いて点在している。
 無いとは思うが、俺達もその中の一組に見えてしまうのだろうか。そんなことを気にしてしまう俺であった。
「んー……」
 そんな俺の懸念を余所に、汐は潮風を楽しんでいる。
 当たり前の話だが、海辺には遮蔽物が少ないので風が強い。
 故に俺も汐もしっかりと防寒対策を施していたが、それでもちょっと寒い俺に対して、汐は何処吹く風といった様相であった。
「やっぱ、海はいいよね」
「ん……まぁ、そうだな」
 空気も水も澄んでいたので、見渡す限りの遠くまで綺麗な空の蒼と海の碧が続いている。
「よっと――」
 器用にも片足立ちで靴と靴下を脱ぎ、汐が海に足を浸した。
「うわ、やっぱり冷たい……」
 嬉しそうに、汐。
「そりゃ、そうだろう」
 そんな汐を眺めつつ、俺。流石に一緒になって海に足を踏み入れるつもりはない。それをやると、間違いなく年の差カップルと間違われてしまうだろう。
「でも、楽しそうだな」
「うん、だって――」
 目を細めて、汐は言う。
「……汐は、渚に還るからね」
 それは、随分と懐かしい言葉だった。
「覚えて、いたのか」
「そりゃもちろん」
 海の水を軽く蹴って、汐。
 汐が幼いとき、海辺で自分の名前の由来を知ったことがある。
 そのときの汐は海に駆け込んだのだが、今の汐も同じ気持ちでいたようであった。
「だから今日、此処に来たの。お誕生日おめでとう、お母さん。そしてただいま……って。――まぁ、前にもやったけどね」
 ……なるほど、な。
「いいんじゃないか? 何度やったとしても、渚は暖かく迎えてくれるよ」
 それだけは、確信を持って言えることだった。
「うん、そうだね」
 汐が大学生になってからするようになった、うなじ付近をリボンでまとめた長い髪が、そのリボン毎風に揺れる。
「さ、そろそろ戻ろう、おとーさん。演劇部のクリスマス公演に遅れたら悪いし」
「ああ、そうだな」
 元々海に入るつもりだったのだろう。汐はコートからハンドタオルを引っ張り出すと、再び片足立ちになって、濡れた足を丁寧に拭く。
「そういえば、去年まではこんなことをしている暇はなかったな」
 汐は公演で、そして俺はそれの観劇の準備で色々忙しかったのだが、それはもう、遠い話になっていた。
「いままではしたくても出来なかったからね。でも遅刻したら申し訳ないでしょ?」
 夕方には、クリスマス公演が始まる。まだ時間に余裕はあるが、早めに準備しておいても損はあるまい。
「あー、どんな演目なんだろう。今から楽しみっ。おとーさんは?」
「そりゃ楽しみっていえば楽しみだが……お前、OBだからって乱入するなよ?」
「しないわよ。もう任せて大丈夫だって思ったから、引退したんだし」
「じゃあ、駄目だと思ったらどうしてたんだ?」
「んー……、大学生やりながら闇の演劇部部長を名乗るとか?」
「――いや、それは駄目……いや、留年しながらって訳でもないから、いいのか?」
 そんなことを話しながら、海に背を向ける。
 そのときだ。
 ――朋也くん、しおちゃん、ありがとうです。
 ふとそんな声が聞こえた気がして、俺は振り返る。汐もそうだったのか、同じく振り返っていた。
「なぁ、汐。いま――」
「ストップ、その先は胸にしまっておきましょ。……お互いに、ね」
 随分と大人っぽくなった笑みを浮かべて、汐はそう言う。
「そうだな。そうするか」
 俺達は再び、海辺を眺める。
 そこは先ほどと変わらない冬の海であったが、渚に押し寄せる波はどこか優く、吹き寄せる風は少しだけ暖かいように感じられたのであった。



Fin.




あとがきはこちら










































「えへへ……毎年誕生日を祝ってもらえて嬉しいです」
「そりゃお母さんの誕生日だもん。全力でお祝いしなきゃ、ね」











































あとがき



 お久しぶりの○十七歳外伝、十九歳のクリスマス編でした。
 クリスマスの物語はよく書きますが、CLANNADの場合渚の誕生日と一緒になるところが、書いていて難しくもあり、楽しいところでもありますね。
 さて次回は……かーなーりー未定です;



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