「天は人の上に人を造らず 人の下に人を造らず」と言えり。 されば天より人を生ずるには、 万人は万人みな同じ位にして、 生まれながら貴賤上下の差別なく、 万物の霊たる身と心との働きをもって 天地の間にあるよろずの物を資り、 もって衣食住の用を達し、 自由自在、互いに人の妨げをなさずして おのおの安楽に この世を渡らしめ給うの趣意なり。 されども今、 広くこの人間世界を見渡すに、 かしこき人あり、おろかなる人あり、 貧しきもあり、富めるもあり、 貴人もあり、下人もありて、 その有様雲と泥との相違あるに 似たるはなんぞや。 その次第はなはだ明らかなり。 「実語教」に、 「人学ばざれば智なし、 智なき者は愚人なり」とあり。 されば賢人と愚人との別は 学ぶと学ばざるとによりて できるものなり。
『学問のすゝめ』は、福沢諭吉が明治初期(1872〜1876年)に著した、日本人の意識改革と国家の独立を説いた啓蒙書です。人間平等や個人の自由、実学(実用的な学問)の重要性を説き、当時のベストセラーとなりました。