練習方法その6


<ステアリングダンパー効果>

ベストテク(ニューライディング?)でこう呼ばれる体の仕組みがあるそうです。

ここで述べることがそれに相当するのかどうかは、スクールを受けたことのない私がコメントできることではないのでしょう。

が、十中八九、当たっていると思っています。


「how to 轍」のコーナーで、コーナーリングでは「瞬時に寝かす技術」を身につけるべきだと述べました。

しかし、コーナーリング上達のためには、これだけではまだまだ不十分です。

瞬時に寝かす技術は、上手にバランスを崩す、能動的技術です。

ここで述べるステアリングダンパー効果は、バランスの乱れを自動修正する受動的技術です。
(実際には、積極的コントロールのためにも必要と言えると思いますが)

この2つが備わって、はじめてまともなコントロールができるようになるのだと思います。



以前このネタをつかみかけた時、「股関節を捻ることでエネルギーが溜まり、それが、外乱を自動修正してくれる」と述べました。

これはこれで、間違ってはいないと思います。

が、その後の修行(頭も含む)で、どうやら、捻るべき箇所は股関節だけでなく、それより下にもあるし、上にもあるということが分かってきました。

そして、その捻り方とは、関節毎に捻る方向を逆転させるというものです。


具体的に言うと、こうです。


バイクの向きを基準(ニュートラル)とすると、外側半身は、


骨盤はニュートラル

大腿骨はインを向く

脛はニュートラル

足はインを向く


そして、


背骨はニュートラル(頭も。ただし、頭の傾きは背骨の傾きと異なり、常に地球の重力方向を向くように立てる意識が有効な模様)

肩(肩甲骨)はインを向く

上腕はニュートラル

前腕はインを向く

手はニュートラル


間違っている部分もあるかもしれません。また、上記の表現では、特に上半身の捻り方のイメージがわかりにくいかと思います。そして、コーナーの前半と後半では向きが逆転するかもしれません。しかし、いずれにしてもその基本的な考え方は上記の通り、関節をまたぐ毎に骨を捻る方向が互い違いになるというものです。

(捻るというより、前後方向に関して関節の位置を互い違いにさせて、「たたむ」というイメージの方が適切かな?
膝は前に出すけど、腰は出さず、踵は後ろかつ上に引き付ける。
肩は前に出すけど、肘は出さず脇腹に引き付ける。
いずれも、外側半身のことです)


で、ともかく、それがどう役に立つのか?

このような互い違いの捻り方をすると、最小限の筋力で、各関節に一定のテンションを与えることができるのです。

そのテンションが、外乱に対する抗力(自動修正する力=ステアリングダンパー効果)を生み出すことは先のコーナーで述べた通りです。

最小限の筋力(もちろん意識的に力を入れている訳ではない。捻ることによって筋肉が伸ばされるから、バネのように反力が生じているだけ)であるが故に、力みのない自然な素早い対応が勝手に実行され、安定度が高い割りに疲労は少ないという好結果が得られます。

このネタは、体感できる状態になるまでの道程が非常に険しく、偶然体感できてもその再現方法(どうやって互い違いに捻る状態を作り上げるのか)がなかなか明らかにならないため、有効性が非常に分りにくいと思います。

が、実行出来たら、目が覚めるような安定感を感じ、どこまでも攻めてみたくなるような衝動にかられるでしょう。
(大袈裟か? ^^;)

もちろんこれを書いている私自信が、右コーナーでは未だこれを実践できていないわけです。

しかし、こういう身体操作方法が存在するということを認識していなければ、いつまでたっても、「外乱が来てからそれになんとかして対応する」という次元の低い走りから脱却することは出来ないでしょう。



ちなみに私は、

上半身と下半身の境目はどこか?

腰とはどこか?

なんば走りとは何か?

左コーナーでアクセルを開けると体に張りが生まれる気がするのはなぜか?

等の謎を、本と実践の両面から追求した結果、このコーナーの結論に到達しました。


現在の私の解釈では、

上半身とか下半身とかいう風に分けようということがそもそもナンセンス。

よって、なんば走りの解説そのものを絶対的なものとして盲目的に信じることもナンセンス。

です。


現在最も(盲目的に?)頼りにできる身体操作方法の理論を記述した本としては、

高岡英夫氏の「究極の身体」

をお勧めします。

この本では、魚体構造理論というのが展開されています。

平たく言うと、全身を鞭のようにしならせて使うというもの。

この理論でいくと、全身が波打つように動くわけですから、上半身はこう、下半身はその反対というような2つのパーツからなる動きになるわけがなく、

上の方はこうだけど、その下はその反対で、その下はそのまた反対で・・・

というような、動きが求められることになります。



さて、この方法論が実行出来ているかどうかの指標としては、

外側の脚が、上から下まで勝手にバイクに密着しているか?

バイクをバンクさせてる最中、何か抵抗を感じるか?

バイクがスライドしたりした時に、上半身を左右に揺すっていないか?

です。

例えば膝しか密着していないとすれば、膝から下が捻るべき方向に捩じれていないことになります。

バンクしてる最中に何の抵抗(エネルギーがたまる感覚)もないとすれば、各関節が捩じれないままに、体がバイクと同じ方向を向き、バイクと同じバンク角になっているということになります。(よくない完全リラックス状態)
(この場合、円旋回を延々続けるためだけの状態になっているので、まずはバイクを起こしていく段階でその方法論に悩むことになるでしょう。)

また、外乱に対していちいち上半身を揺すっているとすれば、「各関節にテンションがかかっていない」、「瞬時に寝かすための身体操作方法を実践できていない」ことの帳尻をなんとか(非常にレスポンスの悪い方法で)合わせているということを端的に証明していると言えます。



いずれにしても、あなたが天才でない限り、このような身体操作方法について学習することなしには、

越えられない壁にぶち当たるでしょう。


それでは、きっと、何の壁が存在しているのかすら知ることなく、上達の道を終えるのではないでしょうか?


せめて、どんな壁だったのかくらいは知ってMXライフを終えたいもんですね。



top