練習方法その5


<how to 轍>たいそうなタイトルですな。(笑)

 

「IBは轍!」

私と同期、同年齢で、私より先にIBデビューしたライダーからもらった格言です。

最初は、「そうなのか、ん〜まあ確かに私は轍が大嫌いで、轍があれば遅くなる、転けるといった感じだったので、轍をうまく使える(せめて、苦にしなくなる)ようになりたいな」とは漠然と思っていました。

まあ、その程度の考えだったのですが、いつしか轍が結構好きになっていました。
(もちろんコーナーの轍で、かつ、きれいなやつに限りますし、まだ左コーナー限定です・・・--)

ブレーキターンをやめ、コーナーリングフォームの矯正に取り組み始めて以降のことです。

しかし、何か轍の特訓をしたのかというと、そういうわけではありません。

今思えば、左バンクを「ここはコーナーじゃない。直線だ」と言い聞かせる(言い聞かせられる)ようになり、するとなぜか、コーナーの進入で正体不明の「いい感じ」を感じられるようになったのがきっかけでしょうか。

そういうこともあり、轍に自信が持てるようになってきたのは、

「直線のイメージを持てるようになったこと」、

「轍は、轍に入る以前に、自分の技量に合った、適確なバンク角、適確な向き、適確なスピードを作り上げ、適確なタイミングでアクセルを開けられるようにお膳立てすることが大事で、それを実行できるようになってきたこと」

によるものだと思うようになっていました。



が、それだけでは自分の走りに説明がつかない部分が残るのです。


というのは、

コースには、「いったいどうやってこんな轍が出来たの?」

「で、どうやったら、入口から出口までその轍を全部使えるの???」

と言いたくなる轍があるのです。

目一杯アウトから進入してスムーズに(平行に)轍に沿わせようと思っても、轍自体がほとんど目一杯アウトから始まってて、それ以上アウトから入りようがない。(轍を外から乗り越えて来るというのなら別ですが)
 では、と、とりあえずできる限りのラインで入ってみても、轍が始まってからずいぶん奥の方でしか轍を使えず、極端に言うとフラットなところで90度向きを変えてようやく轍に沿わせてる感じにしかならず、いかにも不自然でちっとも速くなく、不安定。

かといって、

「自分の技量に合った、適確なバンク角、適確な向きを作って轍に入る」ことが出来ていないのかと、進入スピードをどんどん落としていったり、
あるいは、
気持ちに余裕を作るためにとりあえず手前を全く攻めないようにして、ず〜っと手前からその轍のコーナーのことだけを考えてみてもうまくいかない。

どんなにスピードを落としてみても、どんなに余裕を作ってみても、どうしても轍の前半にマシンを沿わせられない。

そんな状況が存在すると思います?



しかし、なぜかある程度轍を走れるようになって来て、何がポイントなのか分かってきました。

轍の前半を使えるか否かは、バイクを「瞬間的に」寝かせられるかどうかにかかっています。


「なんだ、めりはりつけてクイックに寝かせたらええのんかい!」

違うんです。



普通、バンキングとマシンの向きは連動していて、適確なバンク角を作ろうとすると、その間に嫌でもマシンの向きが変わります。向きの変わったマシンにとって、適切に当てられる轍は、轍自体の向きが既に結構変わっているコーナーの中盤付近ということになってしまいます。逆に言うと、その地点に到達するまではフラットな部分を走るしかないわけで、それは空白の時間と言え、アクセルを開けることなど出来ないし、その瞬間のスピードを高めていくことも出来ません。轍に合わせるまでのフラットな部分のグリップ限界に対応したトロトロとしたスピードで、ただ、轍に当たる(適切なバンク角になる)のを待っているだけのアンコントロールな時間です。


これは、実際にバイクがバンクしていくスピードがどうこうという話ではないと思われます。(それも多少はあるかもしれませんが)



「空白の時間が問題なら、それを見越して早めに寝かしはじめたらいいのでは?」
あるいは、
「コーナーの手前でわざと少しイン側に寄っておき、その上でアウトに向かって走りながらバンキングを始め、轍の始まりの部分で最適な向きとバンク角になるようにしたらいいのでは?」
というような考え方も通用しません。(いや、ある程度通用するかもしれません。しかし、その方法論では、最後には越えられない壁にぶち当るでしょう。相変わらず、フラットな部分を走行しながらバンキングしていく時間は存在するのですから)


また、「よしっ、寝かそう!」と思ってから実際にバイクが轍に当るまでの時間をなんとか短くしようと、クイックな動きを求めれば、どんどんボディアクションは大きくなっていき、大して効果のなりわりに(たぶん、考え方を変えない限り、ホントに効果はないと思います)、轍に当るまでの空白の時間がどんどん不安定になっていき、それではどんなに経験を積んでも一か八かの無茶苦茶な走りからは脱却できず、およそテクニックと呼べるような代物にはならないでしょう)


しかし、タイムラグのない寝かしができるようになれば、空白の時間の大半をゼロにすることができ、しかも、本人的には、何かとんでもない不合理なことを無理矢理やっているわけではなく、むしろ、「なぜうまくいくのか分らないのだけど、寝かしたいと思った次の瞬間にはもう寝てる(しかも不安定さはなく、当然変な緊張感もない)」といった感覚になってきます。
(もうちょっと正確に言うと、バイクもライダーもほとんど何の動きもないままに、突如コーナーリングのGに対応できるアンバランス状態を作れる)


これによって、轍が始まるポイントで、バイクの向きは轍と平行にも関わらず、轍の傾斜に応じたバンク角をいきなり形成出来ることになるわけです。
(もちろん、この表現には大袈裟なところがありますから、急角度で轍に突っ込む場合には、細心の注意が必要です。しかし、瞬間的に寝かすテクニックなしでは、この行為そのものがほとんど不可能でしょう)



で、なぜそんなことが可能になるかと言うと、「よしっ、寝かそう!」と思う以前に、とっくに寝かすための準備を整えていて、その状態から瞬間的に寝かす身体操作方法を使用するからです。

寝かすための準備とは、轍に当たった瞬間以降に有効な体勢作りです。(体重移動が必要かは不明)

そして瞬間的に寝かす操作とは、イン側半身の力を瞬間的に抜く技術と思われます。(具体的にどこの筋肉の力を抜くのか等、詳細は不明)

つまり、コーナーに向けて、かなり早い段階から何かしらの準備はするのだけど、寝かす瞬間は外見上何の操作もないので、まわりのライダーはもちろん、本人的にも、具体的に何をしているのかは分らず、「そういう操作方法が存在する」ということを強く認識しない限り、それを実行しているライダーの走りを注視しても、いつまでたっても、謎が解けないということになるわけです。



かなり意味不明な内容になったかと思います。

これは、人によっては(例えばJr.上がりの才能のある子等)、意識することなく当たり前にやっていることだと思います。

しかし一方で、

才能のない大人は、一生気付くことがない可能性が十分ある内容だと思います。

「当り前のことを」と思われる方は、無視して頂いて結構です。

「?」と思われる方は、少しづつでも探ってみたら、今までとは次元の違う楽しみを発見できる可能性があると思いますヨ。


できているか否かの指標は、

寝かす瞬間に「えいやっ!」という気合いと共に、一瞬体を浮かして体重移動をしているか否かです。

浮かしているとしたら「×」です。
その抜重時間がタイムラグになります。

浮かすことなく寝かす。

これを目指しましょう!



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