まえがき


 巷に溢れるライテク論。MXにとりつかれたライダーならば、一度は某かの解説を手にとったことでしょう。そこにはそれまでの自分には思いもよらなかったロジックが展開され開眼したこともあるでしょう。

しかし。


 その後、行き詰まる度にライテク論をまたひも解いても、分かったようで分らない。肝心の核心と思われる部分は抽象的で、結局どうやったらいいのか分らない。そんな経験をお持ちの方が多いのではないでしょうか?

 当たり前に歩ける人に対し、歩いたことがない人が「どうやったら歩けるのか?」「歩くためにはどこにどう力を入れ、どうやって体重移動をするのか?」と尋ねてみても、期待するような答えは帰って来ないでしょう。その人は、どうやったら歩けるのか考える前に歩けた人なのだから。


 歩きの力学も実は相当に難解と思いますが、ライディングともなればそれはもう細部にわたって正確に説明するなど途方もなく困難なことだと思います。

 じゃあ巷のライテク論は結局役に立たないのか? 空想的な理想を描いたものか?
 それは違うでしょう。ライテク論の著者ともなれば最低でも国際A級。たとえ彼等のロジックに抽象的な部分があったり、力学的な矛盾あるいは他のライテク論との矛盾を含んでいたとしても、それは表現上の問題であって、彼等は核心部分を体得済みであり彼等本人にとっては自分のライテク論は確立されたものであるでしょう。


となると、(しばしば)彼等本人にしか理解できない言葉(ロジック)で書かれたライテク論を、私達がそれぞれこれまた自分に(だけ)理解できるライテク論に翻訳し自分の骨肉にすることができれば、謎であった核心部分のベールを1枚でも多く剥ぎ取れることでしょう。


 ライディングテクニックに正解などあるのか? あるいはたっくさんあるのか? 正解に近いライテク論を構築できたとして、それが速さにつながるのか?
 私のような凡人には分りません。でも、いつまでも同じところをどうどうめぐりするよりも、少しでも正解に近いと思える方向に進める方が楽しいとは思いませんか?
(^^)



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