大した事のない特集、第十一弾!!(00.12)
 

素人の自動車業界考


 RJCから発売されている「絶対に得するクルマ選び」2001年度版を買った。
 RJCに属する評論家複数名が対談形式で昨今発売されたクルマに対する評価をのべるというものだが、なかなか含蓄のあるコメントが多く、面白い。

 昨年度版よりも参加している評論家の数が少なく、さまざまな観点からの意見が見られなくなっているのは不満だが、三本氏、星島氏といった長老格は健在で、古参評論家ならではの金言直言が読めるのはいいことだと思う。

 今回、興味深かったのが、「GMがホンダのエンジンを買おうとしており、ホンダがそれに応えるために、正回転エンジンを作り始めた」というコメントだった。

 ホンダは従来は自社の規格で、他の自動車会社とは逆回転(左回転)のエンジンを作っていたのだが、エンジンビジネスを始めるために、他の会社でも適用できるような正回転(右回転)エンジンを作り出したのだそうだ。
 今後、ホンダの自動車はすべて正回転エンジンに置き換えられ、ホンダ独自の逆回転エンジンを採用したものは、今回フルモデルチェンジしたシビックが最後になるという。

 すでに、正回転エンジンを使用したホンダ車としてストリームが存在している。

 まあ、車の素人である自分に言わせれば、エンジンの回転なんてギアのかませ方を逆にするか、向きを変えりゃあいいんじゃねえか、とつい思ってしまうのだが、専門家に言わせれば、製造工程上何らかの不具合が生じるのだろう。
 
 エンジンビジネスというのは結構おいしい商売らしく、いくらGM配下とはいえ乗用車も商用車も売れてないいすゞが会社として食べていけるのは、ひとえに商品価値のあるエンジンを作り出してそれを販売しているからだという。

 同様に、エンジンの単体売りが実現すれば、ホンダは自動車を直接売ること以外に大きな利益源を確保する事ができるわけだ。

 評論家の徳大時有恒氏は、「ホンダは機械屋で、現代の自動車に必要な電装、電子技術を持っていない。トヨタは子会社の電気部品会社、デンソーにホンダとの取引きを打ち切らせ、囲い込みに入っている。日産も子会社のジャトコ等に同じ命令を下す可能性もあり、将来20年以内にホンダは車を単独で作ることが出来なくなる可能性がある。そうなれば、どこかに身売りをするしかないのではないか。」と語っている。

 しかし、ホンダがエンジン単体売りでの財源を確保できれば、また話は違ってくるだろう。ホンダのエンジンを欲しているGMは、各国の大メーカを傘下に収めている。ホンダのエンジンが流通するとなれば、ホンダエンジンを搭載したオペル、サーブ、スズキ、フィアット等が実現するだろう。果てはパワード・バイ・ホンダのアルファロメオ、ランチアまで考えられるかも知れない。
 欧米においても高名なホンダエンジンは引く手あまただろうし、商売のパイも大きく旨みがあるだろう。
 さらに電子、電装部品はそうやって友好関係を培った欧米のGM系メーカから仕入れればいいのだし、ホンダ独自で乗用車を売りつづけることも十分可能ではないのだろうか。
 

 誰が発言人かは知らないけれど、21世紀、自動車会社は年間400万台車両を売れる会社でないと生き延びれないそうだ。
 400万台を売る会社といえば、世界にも数えるほどしかない。
各国の大メーカ(オペル、サーブ、富士重工、スズキ、フィアット等)を傘下に収めるアメリカの帝王GM、
独フォードとマツダ等を傘下に持つ同じくアメリカの元祖安売り王フォード、
桁外れの利益率とキャッシュフローを誇り、日野とダイハツを傘下に持つ日本のトヨタ、
対等合併で400万台の大台を望み、三菱を支配下に置いて目標を達成したクライスラーメルセデス、
アウディを吸収し量産メーカーとして古くからの実績を持つドイツのフォルクスワーゲン、
日産を屈服させてようやく400万台クラブの仲間入りをしたフランスのルノー。

 たったこの六社だけである。
ちなみに、この六社以外で資本的に独立している会社は、日本のホンダ、ドイツのBMW、フランスのPSA(プジョー・シトロエン連合)だけ。

 世界には、もはや9社しか自動車会社は残っていないのだ。

 まあ、トヨタは21世紀でもまずつぶれることはないだろうけど、純然たる日本の自動車会社といえばトヨタ以外にはホンダしか残っていない現状なので、ホンダには是非ともエンジンビジネス等の手管を駆使して来世紀も生き残って欲しいものである。
 

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