電子ゲーム機を模した超絶技術ぜんまいゲーム 「トミー テクノボーイシリーズ」

 電子ゲーム機は、今で言えばだいだいTVゲームソフト一本の値段である。
ゲームウォッチ型の小型機で3000円〜5000円、FL管のような大型機で、5000円〜8000円といったところ。

 ちょうど今の、ニンテンドーDSやPSP等、携帯ゲームの値段が3000円〜5000円で、PS2やWiiのような大型ゲーム機のソフトの値段が5000円〜8000円であることと、ぴったり重なっている。

 しかし、今から20年以上前の話であるので、インフレの度合いを考えれば、今よりも電子ゲーム一本一本の値段は家計に対して比重が重たかったと思われる。

 それでも、誕生日やクリスマスにはそれなりに買ってもらえてはいたので、この点は親に感謝するしかないのだが、当時の子供の気持ちとしては、「もっと新しいゲーム機が欲しい」という欲求は、なかなか抑えられなかった。

 が、先にも書いたように、電子ゲーム機の値段は数千円が当たり前、小遣いを貯めて買おうにも、年単位はかかる逸物である。
それでは辛い。でも欲しい。という欲求を満たしたように、新しいゲーム機シリーズがトミーより発売された。その価格、1500円。なんと2000円を下回るのである。

 この値段なら、月500円の小遣いを三ヶ月貯めれば、入手できてしまうのだ。三ヶ月待たなくとも、なんかの弾みで親戚や祖母とかから臨時収入があれば、購入可能な値段である。

その名もテクノボーイシリーズ。

 ただ、一点問題があるとすれば、電子ゲームではなく、ぜんまい式だったというところか・・・・。

 ただし、単純なぜんまい玩具と侮る事なかれ。3D立体グラフィックシリーズなどで余すところなく技術力を発揮していたトミーが、できるだけ電子ゲーム機のゲーム性に近づけるべく、工夫に工夫をこらした逸品なのだ。
 

おもらい君

 表面の絵には、金貨を盗んだ後、綱渡りをして脱出しようとする泥棒の姿が。しかし、背負った袋が破れて、金貨が漏れ落ちている。
そこで、こ○きのおもらい君は立ち上がり、落ちてくる金貨を拾って日々の生活の足しにしようと頑張るのだ!!

って、今考えるとかなり危ない設定だなあ・・・・。

主人公のおもらい君  泥棒と、落下する金貨

 ぜんまいを巻いてゲームをスタートさせると、上から金貨が落ちてくる。プレイヤーはおもらい君を左右に動かして、うまく空き缶に中に金貨をおさめ、得点をゲットする。

 おもらい君はプラスチックパーツで体、両足がそれぞれ別々に分かれ、左右に移動するとスタコラスタコラ足をばたつかせる。
金貨を空き缶の中に収めると、体が振動で揺れるような動きをし、ぜんまい動力で動いているとは思えない芸の細かさを見せる。

 金貨はおもらい君の体に当ててもだめで、ちゃんと空き缶に狙いを定めないと、拾った事にならない。

 一応金貨の他に長靴などのガラクタが落ちてくるのだが、別にペナルティにもならなければ、得点にもならない。

必勝法

 金貨が落ちてくるシステムというのが、金貨の描かれた樹脂性のフィルムがくるくるスクロールしているだけなので、ある程度回転するともとの場所に戻ってくる。ということは、金貨の出現するパターンは決まっており、それを感知すれば高得点が狙える、という事。

 もっと簡単な方法は、ぜんまいが点数カウントを動かすために、金貨が落下する前にフィルムに小さな孔が開いており、その孔を目指してあらかじめおもらい君を移動させておけば、間違いなく金貨がゲットできる。

 ゲームウォッチパラシュートみたいなもんであるが、あちらが海に落下させてしまうと1ミスであるのに対し、こちらは制限時間内にいくつのコインが拾えるか、というタイムトライアルになっている。まあ、精一杯無駄なく拾うと、だいたい上限25点くらいになるのだが。

 これと全く同型のシステムを採用した絵違いバージョンで、「やしの実」というシリーズもあった。
ちなみに南国のやしの実取りの少年が、木から落下してくるやしの実を拾うというもので、ゲームシステムは全く「おもらい君」と同じである。
 

サファリドライブ

 サファリパークをドライブするゲーム。
サファリ内を徘徊する動物に衝突すると、車が移動できなくなるので、一旦セーフティゾーンに戻って体勢を立て直し、再びサファリに繰り出す。
 

パーク内を疾走するジープと動物 動物に衝突したら、セーフティゾーンに逃げ込む

 サファリパークをドライブ中は経時式で点数がカウントされるのだが、動物に車が衝突して動けないときと、セーフティゾーンに戻っている間は点数がカウントされない。その間もぜんまいはどんどん進んでいくのでタイムロスになる。

 動物はそれぞれ内輪と外輪の2枚の円盤に絵が描かれているだけなのだが、内輪と外輪で回転速度が違い、内側の円盤はより早く、外側の円盤はよりゆっくりと回転する。この速度差のために、結構動物をよけるのは難しい。

必勝法

 完全に動物に当たって車が停止するまで、若干タイムラグがあるので、強引にハンドルを切ってしまえばロック機構を外す事が出来る。この手でけっこう距離を稼げる。

 動物に車が当たったときやセーフティゾーンに車が逃れたときに、ちゃんと得点カウンターが停止するなど、なかなか芸がこまかい。

このゲームと全く同システムで、絵違いバージョンの「スペースクルーザー」が存在する。
 

忍者屋敷

 テクノボーイシリーズの最高傑作。ぜんまいを巻いてスタートさせると、城を守備する忍者二人が不規則に動き始めるので、それをかいくぐって奥に置かれた巻物を目指す。

巻物に到達すると1ポイント。ゲットしたらまたスタート位置に後退し、再び巻物を目指す。

 こうしてぜんまいの動いているうちに、何度往復して巻物を何回取れるか競うゲーム。敵の忍者に衝突すると、ぜんまいも一時的に止まるがそれ以降は全く前進できなくなるので、一度スタート地点に戻って態勢を立て直す必要がある。

巻物を目指す主人公と、それを妨害する忍者。二人目の坊主の動きが鋭すぎ。

目指す、左奥の巻物。敵忍者に捕まると前進不可なので、右端まで戻る必要あり

スタート地点に戻って行く分、タイムロスになるので、うまく忍者をかいくぐり、巻物にまで辿りつかなければいけない。

 まあ、とにかく敵忍者の動きがぜんまいで動いているとは思えないくらい絶妙でいやらしく、容易に巻物に到達できない。路上で停止することもできるので、一人目の忍者をかわしたあとで二人目の目の前でタイミングをはかる事もできる。

必勝法

 自分、このゲームへたくそなんだよなあ・・・・。最高点4点だもの。特に二人目の忍者の動きがいやらしく、すぐに捕まってしまう。コツとしては、二人目の目の前で停止してタイミングを計るより、一人目二人目まとめて一気に駆け抜けた方がいいような気が。

 あと、巻物取って点数カウントされたら、すぐに反転してスタート地点に戻り、タイムロスを少なくする事。けっこう、巻物に到達して点数カウントされたのに、まだ前進しようとして無駄に時間を過ごしてしまうケースが多い。

 ちなみに絵柄代わりで、「パックマン」があった。敵の忍者がオバケで、自分がパックマン、巻物はドット餌という構成になる。
ちなみに神明神社のお祭りで、夜店のおもちゃ屋から、この「パックマン」を親に買ってもらったのだが、ぜんまいが切れていて、まるでゲームにならなかった。しょうがないので試しに分解してみたら、超絶技巧に部品が配置されていて、到底小学生の技術では組み立てなおしが出来なかった。

トミーのFL管「パックマン」は無断でキャラを使用していたのではなく、ちゃんとライセンシーをナムコから取った正式品だったが、同じトミーでもテクノボーイはそうではないみたい。まあ、ゲームの完成度という点では、FL管・パックマンよりテクノボーイ”パックマンの方が出来は上かも知れない。

パックマン(2012.8.7)追記。

テクノボーイ”パックマン”入手。夜店の玩具屋からついに仇を取った。いや取ってないだろ(笑)。
ゲームシステムは先述のとおり、”忍者屋敷”とまったく同じ。状態は既に所有の”忍者屋敷”より遥かにいい(笑)。

    
 

スペースアタック(2012.4.24 追記)

 インベーダーもといベーダーマン(笑)を移動砲台で迎撃するゲーム。
砲台が一定速度で左右に移動するので、タイミングよくするミサイルを発射すると、ベーダーマンに向かって飛んで行き、ヒットすると爆発マークが現れる。敵は基本的に全く無抵抗なので(笑)、安心して砲撃ができるのだが、いかんせん左右への動きが速く、狙いをつけるのに苦労する。無能な味方は敵より厄介だという皮肉だろうか。
 

移動砲台とベーダーマン 撃破されたベーダーマンと、発射されたミサイル。

 特にスコアシステムは存在せず、ぜんまいのタイムが許す限り3機のベーダーを撃破できるかどうかが問われることになる。また、時間内に全匹撃破できたなら、手動で右のリセットスイッチを押して自らの手でベーダーマンを全匹復活させ(笑)、再度の撃破を目指すことになる。

 ミサイルは一発しか発射できないので、狙いを外すと次のミサイルがセットされるまでタイムラグが出来る。ぜんまい式のタイムアタックなので、これはロスタイムとなって成績を圧迫するしくみになっている。

必勝法

 発射するミサイルは単にベーダーマンに命中すればよいというものではなく、ベーダーマン中央部の十字型をした口の部分にヒットさせないと、撃破したことにならない。精度を高くして撃ち込まなければならないのだが、移動砲台のスピードが無駄に速く(笑)、狙い撃ちがかなり難しくなっている。ベーダーマンを狙って撃つという意識ではなく、リズムで発射するという意識の方が精度高くミサイルを射撃出来るかも知れない。

 こまかいぜんまい芸が持ち味のテクノボーイにしては、ゲーム性も動きもシンプルで、正直なところ、あまり面白くない、というのが感想。難易度はそこそこ高いのだが。

このゲームと全く同システムで、絵違いバージョンの「マリンボンバー」が存在する。
 

ボンブマン(2012.4.24 追記)

 忍者屋敷と同等か、とすら思わせられる傑作。爆弾魔ダイナマン(笑)の仕掛けた爆弾を、消火士であるボンブマンが放水して火を消すというゲーム。
ぜんまいを捲いてゲームをスタートさせると、ボンブマンが上下に動けるようになるので、発火した爆弾に座標を合わせて消火を実行する。消火成功で1得点。
 爆弾が鎮火したら一番下に戻ると、再度爆弾が発火するので、また鎮火に向かうわけである。後ろからは爆弾設置の張本人たるダイナマンがボンブマン目掛けて爆弾を投げつけて来るので、これに当たるとボンブマンは横転してしまい、消火活動が出来なくなる。
 その場合は、もう一度ボンブマンを一度下まで戻して体勢を復活させた上で、消火にチャレンジする事となる。
 

ダイナマンの爆弾攻撃をかわし、発火した導線を消火しろ! 消火がすんだら最下部まで戻って次に準備。

 ダイナマンの放ってくる爆弾攻撃にはリズムがあるので、うまく見切って上下動を行なう。忍者屋敷の忍者ほどいやらしい動きはしないので、かわすことはできると思う。
ぜんまいが切れるまでいくつの爆弾が消火できるか、すなわち何得点取れるかの競い合い。

爆弾攻撃をまともに喰らうと、写真のようにボンブマンが横転してしまう。速く最下部まで戻して、ボンブマンの体勢を整えよう。

必勝法

 まず。爆弾と消火ホースのY座標をちゃんと合わせること。上下に若干のずれがあると、火が消えない。また、消火ホースを爆弾に向けてから導線が消火されるまで、若干のタイムラグがある。この間にダイナマンに背後に迫られて爆弾攻撃を受けると、消火失敗で横転、タイムロスになる。
 正直、ダイナマンをかわして爆弾を狙うこと自体は難しくないのだが、消火中に攻撃されてぜんまいの持ち時計を失うというのがこのゲーム最大の難しさ。

 面白い。今やっても十分面白い。消火という確固たるタスク、それを妨害するお邪魔キャラ、ぜんまいで動くキャラの動きの細かさ、電子ゲームとそれほど遜色がない完成度。「忍者屋敷」と並ぶテクノボーイの傑作と言える。

このゲームと全く同システムで、絵違いバージョンの「吸血城」が存在する。
 

吸血城(2017.7.28 追記)

ボンブマンと同じシステムの絵柄変更版、「吸血城」を入手。ネットオークションで落札したが、しばらくすると、主人公の退魔師(探偵)が操作不能に。分解して修理しようとするが、小学生時代の、同じテクノボーイ「パックマン」で失敗した時のいやな思い出が蘇る。
しかし、30年以上の人生経験は無駄ではなかろう、と思い切り、ねじを外して修理を試みた。いやはや、中身は本当に凄い。よくぞここまでと、考え抜かれたぜんまい機構。
小学生時代と同じく、悪戦苦闘したが、色々弄ってるうちに、動作機構が分かり始め、ようやく、主人公を操作するギアの一つが緩んでいる事が分かり、そこを修正して動作可能とした。やはり、年の功は伊達ではなかった・・・。

  
 

テクノボーイシリーズ 一覧表

テクノボーイシリーズをここまで何機種か集めた上、ネット情報等も参考にすると、概ね全貌が見えてきた。現状判明しているタイトルを一覧表にすると、シリーズNo.順に以下のとおりになる。

1  マリンボンバー
2  スペースクルーザー
3  スペースアタック(マリンボンバーのキャラ変え)
4  サファリドライブ(スペースクルーザーのキャラ変え)
5  忍者屋敷
6  おもらい君
7  やしの実(おもらい君のキャラ変え:タイトルは推定)
8  パックマン(忍者屋敷のキャラ変え) 
9  ボンブマン
10 吸血城(ボンブマンのキャラ変え)

No.10以上のタイトルは判明していないので、恐らくこの10タイトルがテクノボーイシリーズの全機種ではなかろうか。
 

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