非電源系の雄、ポケットメイトにも電子ゲームの影響が? 「トミー スタントサイクル」

 「ポケットメイト」と言えば、今なおネット上でも熱心な愛好家を持つ、非電源系の携帯ゲーム。

この種の非電源系ではタカラの「ポケットパンチ」やシュウクリエイションの「ポケッタブル」等と様々なメーカが類似品を発売していたが、何といっても元祖である「ポケットメイト」の知名度と愛顧のされ方は他のそれに対して一頭地ぬきんでており、現在でも復刻版が発売される事からも人気の高さが窺い知れる。

 もちろん80年代前半に小学生時代を過ごした我々世代も、「ポケットメイト」のお世話になっていないわけがないのだが、電子ゲームからファミコン全盛期を迎えていた我らの世代にあって、「ポケットメイト」はどうしても一世代前のおもちゃという印象は拭いがたく、70年代後半に「ポケットメイト」発売とともに小学生時代を過ごした先達方々とは思い入れに差が出てしまうのはやむを得ざる事ではないかと考える。

 しかし、「ポケットメイト」にしても、勃興期にあったアーケードゲームや電子ゲームの流行は無視できるものではなかったらしく、「ポケットベーダー」や「ポケットギャラクシアン」といったTVゲームキャラ流用タイトルも存在していた。

今回取り上げるのは、後に「テクノボーイ」シリーズの原型になったのではないかと思われる、完成度の高いポケットメイトの作品、「スタントサイクル」を取り上げたい。

ポケットメイトおなじみのパッケージ
 
 

 この作品は、ポケットメイトの中でも再後期に発売されたもので、すでに電子ゲームが主流となっている時期で、それらを横目に眺める中で生まれたタイトルである。

ポケットメイトらしくあくまで非電源の玩具なのだが、それでも仮想敵電子ゲームかと思われる程システムの完成度は高く、駄作の電子ゲームであれば凌駕するだけの面白さを誇っていた。
 

トミーの確かなぜんまい技術

 ゲームシステムとしては、ロックスイッチをかけたまま、ぜんまいを利用したタイマーを0まで巻き戻してスタート準備を行い、ロックスイッチを外すとゲームスタート。

 するとゲーム画面の中で背景がくるくると回り始め、スタントマンの乗ったバイクが走行を始める。画面上には様々な障害物が登場してくるので、ジャンプスイッチを下に押し下げてバイクのジャンプを促してクリアする。

ぜんまいを捲き戻してバイクをスタート地点にセット。
 
 

 肝は、ジャンプスイッチを押してもバイクはリニアには反応せず、若干のタイムラグを持って飛び上がるという事。うまくタイミングをコントロールしてジャンプしなければ、障害物に引っ掛かってゲームオーバーということになる。

ストップスイッチを外して走行スタート

ジャンプで障害物をかわせ!

 障害物にはバイクを止めるストッパーが配置されており、一度でも回避を失敗するとその時点でぜんまいの走行が止まり、背景絵の回転も止まる。

ゲーム停止時のタイマーが指し示している数字が自分のスコアであり、MAXで50点満点となる。

障害物に衝突すると、その時点でゲームオーバー。
 

 結局、背景絵は同じところをくるくると回っているだけで障害物の配置場所も変わらないし、慣れてしまえばカンストの50点でも易々と取れてしまうだけのイージーなゲーム性ではあるのだが、ぜんまいを用いて背景を動かし、バイクのジャンプを制御し、というトミーの技術の高さが伺い知れる作品であり、これが後の超絶ぜんまいゲーム、「テクノボーイ」シリーズに繋がったと思えばなかなか感慨深いものがある。
 

当時の状況

 自分はこのゲームを、「小学二年生」だか「三年生」だかの雑誌懸賞で見かけ、小さな画面だったが写真を見てほぼこのゲームのシステムを正しく理解し、「これは欲しい!」と思って懸賞はがきを応募した。

 結果はなんと、見事に当選。わくわくして包装をあけると、送られてきたのはなんと、「ごきぶりハンター」・・・。バネでボールを弾いて標的を倒す、「コンバットタンクゲーム」のリペイント版で、そんなの今更珍しくもなんともなく、がっかりした事を覚えている。

小学館が悪いのかというと断じてそんな事はない。なぜなら、懸賞のページにちゃんと、「プレゼントするゲームのタイトルは変更される事があります。ご了承ください。」と書いてあったのだから・・・。

 まあせいぜい数百円というポケットメイトのリーズナブルさ、後にこづかい使って「スタントサイクル」を自力で購入したので、まあ結果的には入手できたのだが、あらためてゲームをやってみて、「うむうむ自分の想像どおり、面白い面白い」とすっかりのお気に入りになった事を覚えている。
 
 しかし、どうもやりこみが過ぎてぜんまいが切れ、まったく動かなくなってしまった。そこで分解して中身を見てみたのだが、切れたぜんまいの修復が出来ないのはともかく、そのバイクのジャンプ機構が極めて複雑で、一度解体すると小学生レベルでは組み立て直せない程の緻密な構造になっていた。

 これは後に発売される同メーカーの「テクノボーイ」もまったく同じで、トミーがぜんまい玩具に関しては恐るべき技術を持ち合わせていたことが十分に理解できる。

現行保有のものは、ネットオークション落札物。本当に、ネットって、凄いねえ・・・。

 時期的に電子ゲームとも併売された、非電源系ゲームの雄、ポケットメイトの意地を見せ付けられた作品とも言える。

 もっとも、電子ゲームとポケットメイトでは価格帯が違いすぎたので、(電子ゲームはポケットメイトの5倍〜10倍の定価)両者は玩具売り場では仲良く共存していたし、ユーザーの食い合いが起きていた訳ではない。念のため。
 

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