» 文研の名作ミステリー3 「黄色い部屋の秘密」 | date : 2009/05/21 | |
続けます「文研の名作ミステリー」書評シリーズ、第三巻は「黄色い部屋の秘密」。 ガストン・ルルー作、榊原晃三訳。イラストは浅賀行雄氏。 例によってあらすじは裏表紙から。 「犯人はどこからはいって、 どのようにしてにげたのか? 完全な密室の「黄色い部屋」で 令嬢が何者かにおそわれた! つづいておこる事件になぞはふかまる。 若い事件記者、ルルタビーユと パリ警視庁の探偵ラルサンの対決のうちに、 意外な事実がうかびあがってきた。 フランス推理小説を代表するルルーの傑作!!」 カー、クリスティと英米の黄金期本格に続いて、第三巻にはこの手の全集に定番の フランスの古典、「黄色い部屋の秘密」を持ってきた。 ガストン・ルルーといえば、本格ミステリとして語るに足る小説はこの一作しか 書いておらず、世間一般にはサスペンス、スリラー作家としての方が、むしろ 有名かも知れない。そちらの方の代表作、「オペラ座の怪人」は何度も舞台化や 映画化されている。 しかし、それでもミステリファンから本作が金字塔とされているのは、当時としては 非常に斬新だった密室トリックの妙にある。 今となっては別段珍しくもない類いのトリックではあるが、それら密室トリックの 総本家としての功績は、全く揺ぎないものがある。 本ジュブナイルでも、特徴的である肝のトリックは過不足なく説明され、当時の ファンを驚かせた真相はしっかりと書かれている。 加えて、異能の記者であるルルタビーユと、腕利き捜査官ラルサンとの推理合戦も つばぜり合い激しく、各々のキャラも原作どおりちゃんと立てられている。 エンディングがやや唐突で後に微妙な余韻を残してしまうものの、「黄色い部屋」の エッセンスや筋書き、登場人物のキャラ立てともにしっかりと残ったなかなかの 名訳だと思う。 但し、本作自体は古典に属する小説なので、ある程度ミステリを読みこなした経験の ある人には古臭すぎると感じるかもしれない。まあ、それは一般向けの文庫でも 同じことなのではあるが。 |
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posted at 2009/05/21 3:18:20
lastupdate at 2009/05/21 3:34:22 »category : 書評 【修正】 |
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