メガドライブ版アウトランの全コースレビューネット上検索しても意外とないのでやってみた。メガドライブ版は、「メガドライブでもここまで再現できるんだ!」
という驚きと喜びに満ちた移植だった。単に完全移植というよりも、そういった移植の方が自分などは強く印象に
残る。当時これをやり遂げたシムス開発陣には大いに賞賛を贈りたい。
まあ、セガサターンで完全移植を成し遂げたるつぼゲームズも凄いんだけど。その後のドリキャス版とかの
体たらくを見ると。
STAGE1 COCONUT BEACH(ココナッツビーチ)
ゲームスタート時必ず走ることになる開始面。海岸沿いに走る自車。見所はなんといっても路側の海。
メガドライブ版が登場したとき、「うわっ!海がちゃんとある!」と驚いた。
アウトランの移植作自体は他の機種にも出ていたが、圧倒的性能のアーケード版でこそ可能だった、
路側の海を再現した家庭用ゲーム機は全くなかったからである。メガドラと同世代のゲーム機、
PCエンジン版ですら不発。マーク3版で開発されていた「アウトラン3D」では路側の海は再現されていた
ようだが、あれは結局発売されなかったし・・・・。メガドライブ版ではめでたく海が入ることに。これでこそココナッツビーチである。
ウインドサーフィンを楽しむ人たちがオブジェクトのアクセントになっている。
ちなみに自車が海に突っ込むと、ちゃんと水しぶきが上がるというところもポイント高い。
難易度的にはスタート面らしく、終盤のS字カーブを除いてはイージーな道筋ばかり。
海岸線を疾走する快感を堪能できる。
STAGE2 WHEAT FIELD(フィート フィールド)
小麦畑。アーケード版では路側を埋め尽くす小麦の穂が圧巻だったが、メガドライブ版はそこまでの
迫力はない。ただそれを再現しようという努力はしていて、横長のオブジェクトを配置して小麦の穂を
表そうという製作者の意図は分かる。まあしかし、結構地味な面ではある。
難易度的には平行するクラウディマウンテンよりはカーブも緩やかで簡単なものの、道幅が狭いので、
アザーカーの数量次第ではクラウディマウンテンよりも厄介な展開になったりする。
STAGE2 CLOUDY MOUNTAIN(クラウディ マウンテン)
雲に覆われた山道。アーケードに比べてフレームレートが荒っぽいので、上空に流れている物体が
何が何だか分からないかも知れないが、ポーズをかけてゲームを止めてみると、ちゃんと空が雲に
覆われていることが分かる。
アーケード版の鬱屈した被さってくるような曇天の迫力は出ていないが、雲のオブジェクトによって
晴天が完全に覆い隠されているところは、メガドライブ版でもしっかり再現されている。
グラフィックの面白みとしては、お隣のフィートフィールドよりこちらのコースの方が上だろう。
難易度的には急カーブが多くむずかしめなのだが、後半にいくと道幅が広くなるので他車からの
退避はしやすい。
STAGE3 DESERT(デザート)
砂漠面。フィートフィールド面からしか選べないコース。路側を埋め尽くす砂丘はメガドライブ版
でもちゃんと再現してあるが、アーケード版の特徴であった、路側と路面の境目が分からなくなって
しまうような砂塵の表現はなされなかった。
一応メガドライブ版でも路面に砂だまりはばら撒かれており、それを踏むと一瞬ぱっと砂煙が上がる
ところまでは再現している。
砂丘の表現はまあまあ頑張っていると言えるが、砂塵が少なくなってしまったので地味な面になって
しまった。
路肩の障害物が少ないので、コースの難易度としては割と低め。
STAGE3 ALPS(アルプス)
おそらくアウトラン全コースの中でも屈指の人気を誇るであろう美しい面。
フィートフィールド、クラウディマウンテンのどちらからでも侵入できるというのもポイント高い。
路側の水辺、花畑ともにメガドライブ版でもしっかりと再現。アーケード版に比べりゃそりゃあ
質落ち感は大きいものの、十分に美しいと言い得る路肩の景色をちゃんと描ききっている。
後半の黄色とピンクの花壇が入り混じって出てくるところなどは、見事としか言いようがない。
コースの難易度としてはかなり急カーブが多く、また急カーブのあるところに絶妙な配置で風車とか
看板が路肩に出てくるので結構クラッシュしやすい。
STAGE3 WALLS(ウォールス)
これまたアウトラン全コース中の大きな見せ場の一つ。海外版ではSTAGE2に繰り上がっている
あたりがそのへんを象徴している。クラウディマウンテン面からしか行けないコース。
アーケード版では路側に迫る大きな岩壁がプレイヤーを圧迫したものだが、メガドライブ版も
一応それらしいオブジェクトをちゃんと配置はしている。
ただ、オブジェクトのサイズが小さい上にスプライト機能の限界でちらつき、また配置の絶対数も
まばら。アーケード版のようにとても威圧するような岩壁とはならず、単にでかい障害物と化して
いるだけのような気がしないでもない。
ただ、出来るだけ再現しようとした移植担当者の心意気は買う。
コース難度は高め。特にアザーカーとの兼ね合いが嫌らしく、他車に追い込まれて岩壁と接触という
ケースが結構あり。
アーケードのような岩壁の圧迫感は低いので、それが理由でミスするという事は少なそう。
STAGE4 WILDERNESS(ワイルダーネス)
荒野。デザート面からしか侵入できない。荒野らしく、あまり目立つオブジェクトは存在しない。
枯れ木とか、サボテンとか、そんな類。
アーケード版でもあまり特筆するようなコースではなかったが、メガドライブ版はオブジェクトが小型化
しているので、一層地味になっている。
あまり選択されないコースではないだろうか。
STAGE4だけあって、難易度だけは上がっているが、コース設計にそれほど嫌らしさは感じない。
STAGE4 OLD CAPITAL(オールド キャピタル)
旧市街。アルプス面とデザート面からのコースインが可能。
薄暮れ時の古い町並みを疾走。アーケードのようなセピア色の風情は再現できていないが、それでも
美しい、味わいのあるいい面だと思う。
オブジェクト的には特筆すべきものはないが、路側の建物、晩秋を思わせる葉の落ちた木立、
白黒の写真が載った看板など、構成されるものがよく考えられており、雰囲気的にもいかにも歴史の
ある旧い町並みを再現したかったという、製作者の意図はしっかり伝わってくる。
コース難度はかなり高く、気を抜くと路肩の建物にどっかん衝突という悲劇が待っている。急カーブの
路肩にある看板の配置も嫌らしい。
STAGE4 BIG GATE(ビッグ ゲート)
これまたアウトランを代表するコースの一つ。メガドライブ版のコースの中でも一、二を争うくらい
出来のいい面。
アルプスとウォールスから侵入できるが、アルプスから来る時はオールドキャピタルとこの面と、
どちらを選ぼうか迷ってしまう。
アーケード版の迫力にかなり近い勢いで大きなゲートが次々と連続し、その下をくぐる爽快感
といったらまさしく「これぞアウトランの醍醐味!」といった感じ。
メガドライブのアウトランは、このビッグゲート面を再現するために逆算された仕様なのでは
ないだろうかと思ってしまうくらい良いコース。
走行の難易度的にはかなり高め。ゲートを抜けた後の急カーブで、次の曲がる方向を示す
道路標識が障害物として一番の曲者だと思う。
STAGE4 SEASIDE TOWER(シーサイド タワー)
ココナッツビーチに続いてもう一つの海辺のコース。ウォールスのみからしか侵入できない。
シーサイドはともかく、どこがタワーなんだ、といった感じの構成。
ウォールスよりも小ぶりの岸壁が海岸線の反対側に立っている。海岸線はココナッツビーチよりも
路肩から遠く、水しぶきを上げようとするなら、かなり道路からはみ出なければならない。
他にはオブジェクトとして、水色のボートハウスが立ち並んでいる。まあココナッツビーチや
オールドキャピタルと同じ絵柄の色違いの使いまわしではあるのだが、コースの雰囲気が違うと同じ形の
オブジェクトでもずいぶんと印象が変わる。
難易度は、STAGE4にしては意外と低め。海辺では障害物が少ない上に路肩と障害物自体の距離も
結構離れている。カーブは厳しいが、エスケープゾーンが大きいために、あまり苦しい展開にはならない。
STAGE5 VINEYARD(バインヤード)
蔦類植物の生い茂る草原。最終STAGE5のうちの一つで、ワイルダーネスからしか侵入できない。
アーケード版のような蔦類植物が路側を埋め尽くす迫力は減退。一応それらしき物体は地表に生えて
いるのだがまあ地味。アーケード版でもそれほど目立った面ではなかったが、輪をかけてこぢんまり
としたコースになっている。
前の面を引きずって、荒野→草原という地味地味リレーも印象が薄いことの一因か。
砂漠→荒野→草原ときたら、地味地味地味のトリプルアタックである。
最終面らしくカーブもきつくコース難易度としては高めだが、STAGE5に共通して距離そのものは
一番短い。分岐が無い分ゴールが近いので、とにかくあきらめず走れば完走できるかも。
STAGE5 DEATH VALLEY(デス バレー)
死の谷。アメリカのデスバレー国立公園あたりがモデルか。オールドキャピタルとワイルダーネスから
侵入できる。しかしこれまた地味。
一応路側には、水牛あたりの生物の骨とか、石ころが散乱しているが、はなはだ地味。アーケード版でも
あまり華やかな面とは言えなかったが、メガドラ版だとそれに輪をかけている。
お隣のバインヤードと同じく、砂漠→荒野→死の谷とくれば、地味地味地味のジェットストリームアタックに
なってしまう。
STAGE5としては障害物が比較的少なくエスケープゾーンは広め。例によってコース自体は短いので、
なんとか完走したいところ。
STAGE5 STONE HILL(ストーン ヒル)
廃墟。オールドキャピタルとビッグゲートから侵入可能。ビッグゲートと並んで、大門のくぐれる面。
アーケードでは、半分壊れかかったようなゲートが次々と登場して、「おいおいこの下通るの危ねぇなあ」
と思わせてくれたものだが、メガドライブ版は壊れたゲートは登場せず、ゲートの数がまばらになること
によってそれを表現している。
路肩には、ゲート自体の無くなってしまった円柱も数多く並ぶ。
「ビッグゲートはくぐりたいけど、オールドキャピタルも走りたい!」というときに、ビッグゲートの代替面
扱いに出来るコース。ゲートがまばらなので、ちょっと迫力には欠けるけど。
逆にビッグゲートからの侵入だと、オブジェクト的な変化が薄いのでやや単調に感じるかも知れない。
ゲートの部分を抜けると、道路上には砂塵が多くなる。
メガドライブ版では、実はデザート面よりも砂塵の量では上回っているダスティなコースである。
路肩のオブジェクトが多くエスケープエリアが狭い。難易度はかなり高め。
STAGE5 DUAL WAY(デュアル ウェイ)
2車線路面。正確には、3車線×2の6車線なのだが。比較的地味な面の多いSTAGE5にしては、
一番華のある面。いや、文字通り花も咲いてるのだが。
ビッグゲートとシーサイドタワーから選択可能。同一方向を走る6車線が、途中から3車線3車線の
2併走道路に変わる。中央分離帯はツツジのような植物で一応区切られてはいるのだが、その植物が
生えていないところでは、相互乗り入れも可能。アザーカーに追い立てられたら、分離帯を乗り越えて
隣の車線に逃げることができる。
これは意外性があって面白い。今までドライブゲームであまりそういうコース設定は無かった。
赤い路肩で区切られた道の表現も華やかで、アップダウンも激しくSTAGE5ではNo.1のグラフィック
の美麗さを誇る面ではないだろうか。また、ちゃんと併走車線を再現したメガドライブと移植担当者にも
大いに拍手である。面の名前からして、デュアルウェイなのだから。
道幅広く一見難易度低そうに見えるが、ツツジや木々の配置が嫌らしく、結構てこずらされる。
STAGE5 LAKE SIDE(レイク サイド)
湖畔。湖畔とは言うものの、水辺を走ることは一回も無い不思議な面。
シーサイドタワーからしか侵入できない。路側にそびえる花の付いた木々が印象的だが、目立つ
オブジェクトといえばそれくらいしかなく、これまた地味な面である。
なんでSTAGE5ってこんなに地味な面ばっかりなんだろう。スタッフがネタ切れしたのか息切れ
したのか。この傾向は元々のアーケード版からしてそうなので、移植スタッフにはそれほど罪が
ないのだが。STAGE5らしく、コース難易度だけは高め。
全コース総ざらえ完了。
お勧めは、ビッグゲート、アルプス、オールドキャピタル、デュアルウェイといったあたり。
クラウディマウンテン、ウォールス、シーサイドタワー、ストーンヒルも悪くない。
ココナッツビーチもいい出来なのだが、これはスタート面なので選択の余地なく走ることになるので。
メガドライブ版は全体的に難易度低めなので、慣れてしまえば快適なドライブが楽しめるはず。
これはPCエンジン版にも、完全移植のセガサターン版にも無い美点だからして。