ゲーム史上に残る傑作 「任天堂 ゲーム&ウォッチ マンホール」自分が小学2年生後半くらいから、任天堂より爆発的ヒットとなる歴史的名作が発売された。それがゲーム&ウォッチシリーズである。ゲーム&ウォッチシリーズは、任天堂のCMも含めて「ゲームウォッチ」と呼称され、カード型でYシャツのポケットにも入るサイズ、電卓用のボタン型電池を使用し、液晶表示でゲーム機能と時計機能を併せ持つという、当時としては群を抜く斬新な企画のものだった。
最初は傑作「ジャッジ」、「ファイヤー」、もぐら叩き「バーミン」といったラインナップが発売され、またたくまに大ヒットとなって世間を席巻した。任天堂のCMでは、20代くらいの大人が、Yシャツの胸ポケットに入れてゲームウォッチを持ち歩き、仕事や勉強のちょっとした合間に息抜きでゲームを堪能する、という環境が想定されている。
しかし実際にゲームウォッチを購入したのは、どちらかといえばこの手のゲーム機を渇望していた小中学生のような低年齢層だと思われる。
自分も、いとこが「バーミン」を購入したのでそれをやらせてもらい、またいとこの家でその友人から「ジャッジ」をやらせてもらい、その面白さに衝撃を受けた思い出がある。当然自分も欲しくて欲しくて全く我慢が出来なくなり、母親に何度もねだったのだが、当時の金額で5000円くらい、現在でも十分ゲームソフト1本分はする値段の高さゆえ、なかなかOKがもらえなかった。
それでも自分の情熱は全く衰えることがなく、そうとうしつこくねだったものと思われる。ついに母親が根負けし、小学校3年生の春、妹が誰からか頂いた小学校入学祝いのお金の中から特別に5000円割いてもらい、ついにゲームウォッチを購入する事が出来た訳である。
母親からもらったお金を持って小躍りしながら近くの書店(模型やゲームも併設して売っていた。ちなみにクラスは違うが同級生の実家でもあった)に行き、ショーケースを前にしてどれを買うか、相当悩むことになる。
ちなみに当時は、「ジャッジ」、「ファイヤー」、「バーミン」といった第一次シリーズの発売が一段落し、目覚ましアラーム機能を追加した第二次シリーズが発売されたばかりだった。第二次シリーズは、シルバーを基調としていた以前のカラーリングとは異なり、新シリーズである事を誇示するようなゴールド色に変わっていた。「こ、これを買えばシルバー持ちの連中に差をつけることができる」と興奮したものだった。店頭に並んでいたゴールドシリーズは、「マンホール」と「ヘルメット」の2つ。「マンホール」は、穴が開きっぱなしのマンホール4つに対して無謀にも人がどんどん歩いてくるので、1個だけマンホールを持った主人公がせっせと通行人を安全に通すために4つのマンホール間を行き来するという内容、「ヘルメット」は工事現場から事務所までの間に頭上から工具や部材がバラバラと落下してくるので、それをかわしつつ現場と事務所を行き来する、という内容。
どちらも当時の自分にはすごく面白そうに写り、ショーケースの前で相当頭をかかえて悩んだ。
結果、自分が判断したのは、「操作キーが多いほうがやれることが多くて面白いんじゃないか」という身もふたもない結論で、選んだゲームは「マンホール」となった。今ではどちらも名作と言われているが、ゲームウォッチの歴史の中でも屈指の傑作として名高いのはこの「マンホール」の方で、それを選べたのは幸運だったかも知れない。
「うははは、これで自分もゴールドシリーズを入手した特権階級だ」と鼻高々であったのだが、御存知のとおり、「マンホール」は爆発的に売れたので、しばらくすると誰でも持ってるありがたみのないゲームと化してしまっていたのだった。
まあゲーム内容自体は非常に面白かったので、そんなに不満はなかったのだが。
ちなみに現在所有しているマンホールは、ヤフオクで買いなおしたもの。長らく大切に保管しておいたのだが、これも親に捨てられたので。
全体像。
マンホールの穴4つに対して蓋は僅かに1つ、主人公は4つの穴それぞれに瞬間的に移動できるものの、どんどん通行人が歩いてくる状況では混乱してどの人を最初に助けたらいいのか判断に迷ってしまう。
同時に2人がマンホールの穴上部に来ることはありえないので、優先順位を見切れば大丈夫なのだが、それがなかなか難しい。通行人は上段が左から、下段が右から登場。主人公は頭の上にマンホールを乗せて、通行人の交通をアシストする。ミスると、図のように水路にドボン、でワンミスになる。3ミスでゲームオーバー、200点等ボーナス点を通過すると、ミスが帳消しになる。
結局、マンホールじゃねえか
上記の画面のように、どんどん現れる現象を時間差で処理していくというゲームは、今でも普通に存在する。
例えば、ダンスダンスレボリューション、サンバDeアミーゴなどの音楽ゲーム。ドラムマニア等も含めていいが、あれは要するに、マンホールである。音楽に乗ってるかどうかが違うだけで、本質は何も変わらない。21世紀になってもその原型が未だに使われるというほど、このゲームは史上に残る傑作だと思う。
当時の状況
すでにシルバーシリーズのゲームウォッチで覇権を確立しつつあった任天堂ではあったが、ゴールドシリーズの「マンホール」を繰り出す事によってさらに弾みをつける事となる。電子ゲーム機市場でほぼ独走状態を実現するのだが、最高傑作は、この後のワイドスクリーンシリーズで発売された「オクトパス」だった。
自分はワイドスクリーンシリーズで買ったのは「パラシュート」であり、この時は最高傑作を見逃す、という失態を犯してしまった。「オクトパス」はその後いとこが買うのだが、最初の頃、いとこは虎の子の「オクトパス」を大事にして、なかなか自分にやらせてくれなかった。というわけで、自分はいとこのお母さん(自分にとっての叔母さん)に彼の所業を告げ口し、無理矢理やらせてもらうというきたなーい手段を使ったのであった。やな子供だね・・・。