第三回

  久々のガンダム特集であります。浪費の殿堂でも記載しましたが、わたくし、マスターグレードにてジムクウェルを購入いたしました。
  そこの組み立て説明書件設定資料集の文章を見て思ったのであります。ジムクゥエルとは一体何ぞや?  と。

  ジムクゥエル自体は、ティターンズのカラーリングも渋く、ジムの高級機バージョンとしてのデザインもなかなか唸らされるものがあり、嫌いな機体ではありません。
  しかし、マスターグレードの設定資料をみるにつけ、承服できかねる項目が幾つか目に付きましたため、ここで取り上げる事といたしました。

  ジムクゥエルは、U.C.0083のデラーズ紛争時に連邦軍のエース機体として存在したジムカスタムの後継機であり、従来のジムに比べてあらゆる機能が強化された機体でした。
  公国軍の残党狩りをするために設立された連邦軍のエリート部隊ティターンズには、このジムクゥエルが優先的に配備されたと言われています。しかし、所詮はジムのマイナーチェンジバージョンに過ぎず、性能的にも突出したものがありません。
  ティターンズに配備された数も少数に留まり、確たる戦果を上げる事は出来ませんでした。
  この時期の連邦の主力機といえば既にジム系の機体ではなく、アナハイムエレクトロニクスより供給されるハイザック、ガルバルディベータといった旧公国軍系の機体であり、ティターンズ内で実戦に参加するMSもほぼこれに準じていたのです。
  これはアースノイド至上主義を唱えるジャミトフ・ハイマン配下のティターンズ技術陣にとっては屈辱的な事態でありました。
そこで地球出身者で固めた連邦生え抜きの技術陣が一丸となって、威信をかけて開発したのがガンダムmk2だったのです。ガンダムmk2は、アナハイムによって主導権を握られたMS開発の潮流を今一度連邦軍内部に引き戻すための希望の星でありました。

  かかる気運を生み出した原因は、連邦純血機たるジムクゥエルの性能不足によるものであり、ガンダムmk2開発を発端に生まれてくるであろう旧公国軍系MSの排斥運動はアナハイムを憂慮させ、彼の組織をエゥーゴと接近させる遠因にもなりました。

  まあ、ジムクゥエルという機体が連邦とティターンズに与えた戦力的影響は少なかったと考えられます。そうでなければZガンダム冒頭のストーリー成立に、またもや問題を発生させてしまいますもんね。

  と・こ・ろ・が・ですね。マスターグレードのジムクゥエルの設定を見るにつけ、どうもそうではないらしいのです。

  ジムカスタム及びジムクゥエルはオーガスタ研究所で開発されたRX−78NT−1アレックスの後継機体であり、その完成度、戦闘能力は一級品だったと言われるのです。
  換装されてジム系の部品に変更されている頭部も、基本的にはガンダム系のセンサー類を引き継いでおり、性能的には精鋭機のガンダム達に何ら引けを取る事はないそうです。
  ただ、ジムカスタムの場合はまだましです。高い地点でバランスが取れてはいるものの、突出した部位がないと言われていますから。しかし、ジムクゥエルに至ってはそのジムカスタムを全面的に強化し、ティターンズのフラッグシップとして文句のない性能を達成していたと言われるのですから事は重大です。
  ティターンズには一個小隊を形成できるだけのジムクゥエルが配備され、コロニーで発生した過激派の暴動鎮圧や、30バンチ事件においても八面六臂の大活躍を繰り広げたそうです。
 
 

  じゃあ、はっきり言わせてもらうけどねぇ(堀紘一風)、エゥーゴに、時期主力MSであり軍事機密の塊であるガンダムmk2を強奪された時、ティターンズの主力部隊であるはずのジムクゥエルは一体どこで何をしていたの?  なんでティターンズの連中はハイザックやガルバルディベータなんぞの旧公国軍系の機体にばかり乗って、エゥーゴに攻めてきたの?
  単なる暴動じゃないんだよ。パワーバランスを一変させかねない軍事機密の漏洩なんだよ。二線級のハイザックやガルバルディなんぞではなく、連邦軍純血の新鋭機ジムクゥエルを投入して事態の収拾にあたるのがティターンズとしての矜持ってもんではないですか。

  もちろんZガンダム劇中にはジムクゥエルの影も形もあろうはずがなく、ティターンズは悪役然とした旧公国軍系のMSを執拗に使ってエゥーゴの敵役的イメージを固める事に余念がありません。

  ジムクゥエルが、マスターグレード解説書のように高性能機でティターンズ初期の活動に大活躍したなどという設定をすれば、またもやZのストーリーに齟齬をきたす事は明々白々ではありませんか。後づけの屁理屈はマスターグレード解説書の大得意とするところでありますが、矛盾だらけの0083を相手にしては、さしもの手腕も色褪せる模様です。
 

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